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武道大会3
「さて、始まりました! 上級生による武道大会! 今回大会のMCを務めます、くノ一教室のユキでーす! 宜しくお願いします!」
可愛らしい後輩の元気いっぱいな実況で、いよいよ大会の幕が上がる。
「注目のBブロックの第一試合! 一番最初の戦いは、五年生の不破雷蔵選手対、我がくノ一教室が誇る憧れのお姉様! 苗字名前選手です!」
「きゃーーー! 名前先輩がんばってー!!!」
校庭の一角から弾けるような黄色い歓声が一斉に上がり、思わずクスッと照れくさい笑みがこぼれる。
(……ん?)
応援に応えようとした瞬間、観客席のどこかから刺さるような熱い嫉妬の視線を感じた。目を向けると、そこには優雅なポーズを崩しつつもこちらをギロリと睨む滝夜叉丸の姿。
(あの子、いつもくノ一教室の生徒たちを意識しているのにまったく相手にされていないからって……余計に嫉妬しているのかしら)
やれやれと心の中で苦笑を漏らし、視線を正面へと戻す。
「両者、前へ!」
審判の声に従い、私と雷蔵は校庭の中央へと歩み出た。
「名前先輩、大人気ですね。」
『後輩たちが勝手に盛り上がっているだけよ。』
「ははっ。でも、相手が先輩だろうと勝ちを譲るわけにはいきません。」
『雷蔵、言うわね。……もちろん、それは私も同じ。』
向かい合わせになり、静かに言葉を交わす。普段は優しく思慮深い雷蔵の瞳の奧に、忍びとしての真剣な光が宿っているのが分かった。
今回の試合の審判を務めるのは、厳しい眼差しで中央に立つ木下鉄丸先生だ。
「今回の勝敗はどちらかが参ったと言うまでだ。また、様々な武器武具の使用は可能だが、持ち込めるのは一種類のみとする。」
「「分かりました」」
「うむ。ならば両者、構え!」
木下先生の厳格な声が校庭に響き渡る。私たちは互いに距離を取り、己の武器へと手を伸ばした。
雷蔵が手に取った獲物を見て、思わず口元がかすかに緩む。
『ほお、印地ね。』
「そういう先輩は苦無ですか。」
『これが一番使い慣れているからね。』
「僕も、一番手に馴染んでいるものを選びました。」
網に包んだ石を投げつける投石術――印地。温厚そうに見えて、遠距離から的確に相手の動きを制限し、頭脳戦に持ち込もうという雷蔵らしい選抜だ。
対する私は、一対の苦無を逆手に握り直す。シンプルだからこそ、間合いの詰め方と速さがすべてを左右する刃。
「――始め!!!」
木下先生の手が勢いよく振り下ろされた。
合図と同時に地面を力強く蹴り、一気に距離を詰める。
印地は別名「投石紐」とも呼ばれる。石を遠くへ力強く飛ばすための道具であり、本質的に接近戦には不向きな武具だ。
現在の五年生たちの得意武器を思い返せば、寸鉄など、そのほとんどが近接戦闘に特化したものばかり。その中で雷蔵だけが、自ら射程距離を伸ばせる遠距離用の武器を得意とし、己の技として磨き上げている。
間合いを支配し、冷静に戦局を見極めようとする姿勢は、いかにも慎重で思慮深い雷蔵らしい選択と言えた。
雷蔵が投石してきた。
石を素早くしならせ、正確な軌道で投石を繰り出してきた。狙い澄まされた一撃が足元を掠め、カツンと乾いた音を立てて土を穿つ。それを寸前で跳び越え、体勢を崩すことなく滑らかに着地した。
『雷蔵、石を投げるだけで終わる気?』
「まだまだ、これからです!」
『へぇ、普段の迷い癖が嘘みたいね。』
「打っている最中に迷っている暇はありませんから!」
『印地だけで、私に勝てると思っているの?』
空中を裂いて迫る石の数には当然限りがある。だが、すべて打たせて消耗を待つのは愚策だ。こちらの体力と注意力が徐々に削られていくだけで、のちの試合に響いてしまう。
早めに決着をつけるべく、飛来する石を苦無の身で次々と払い落としながら、足早に雷蔵の懐深くへと潜り込む。
しかし――雷蔵もただ無策で迫られていたわけではない。私の接近を読んでいたのか、その場ですっと身を翻すと、石の入った印地をそのまま鈍器のように振りかぶって牽制してきた。
(――甘い)
それすらも織り込み済みだ。
振り下ろされた印地を左腕の甲当てでガツンと受け止め、その衝撃を利用して体勢を滑らかに旋回させる。がら空きになった雷蔵の足元へ向け、右手の苦無で下衣の裾を鋭く切り裂いた。
「えっ、うわっ!?」
切られた場所から、隠し持っていた石がゴロゴロと地面へ転がり落ちる。どれだけ上手く下衣の隙間に隠していようと、軸足の置き方や身体の傾きを見れば、どこに重みを載せているかなど一目瞭然だ。
打たせる石さえ失わせれば、勝負の天秤はこちらへ一気に傾く。打つものを無くした時、果たして印地という道具をどう扱うのか。
切られた裾と落ちた石に一瞬意識が逸れた――その僅かな隙を見逃さず、踏み込んで苦無の刃先を雷蔵の胸元へ突きつける。
ピタリ、と雷蔵の動きが止まった。
胸元に触れる冷たい金属の感触に命の危険を察したのか、その額からつーっと冷や汗が垂れ落ちる。
『印地はあくまでも遠距離用の武具。懐に入られたら最後、忍務ならその場で死を意味するわ……雷蔵、まだ続ける?』
「くっ………参りました。」
「それまで! 勝者、苗字!」
木下先生の力強い声が校庭に響き渡ると同時に、観客席を囲む下級生やくのたま達から「キャーッ!」「名前先輩かっこいいー!」と大きな歓声と拍手が沸き起こった。決着がついたことで苦無を素早く納める。
『雷蔵、最初の足元の牽制は見事だったわ。接近戦での引き出しを増やせば、もっと恐ろしい打ち手になるわね。』
「……ありがとうございます、名前先輩。完敗です。急所に突きつけられた一瞬、本当に息が止まるかと思いました。」
雷蔵は苦笑しながらも清々しい表情で礼を言い、頭を下げる。
「でも名前先輩、あれはずるいですよ。下衣を切って隠し石を叩き落とすなんて。」
『フフ、あれも立派な戦術の一部よ。戦場で敵がこちらの狙い通りに動いてくれるとは限らないでしょ?』
「全く……ぐうの音も出ません。でも、僕が印地を叩きつけた時、よく咄嗟に左腕で受け止められましたね。結構な衝撃だったはずですけど。」
『腕当てを仕込んでいたから平気よ。それに、雷蔵の動きのクセは頭に入っていたからね。』
「……脱帽です。本当に先輩には敵いませんね。」
とりあえず初戦は無事に突破。
勝ち名乗りを上げる私の姿に、Bブロックで控える文次郎や仙蔵、小平太たちがニヤリと不敵な笑みを浮かべて視線を送ってくるのが見えた。
座り込む雷蔵の手を掴み、そのままぐいっと引き上げて立たせる。
周囲では他の戦いが白熱しており、観客席からの大きな歓声や黄色い声援が入り乱れていた。
今回は上級生の参加人数が多いこともあり、校庭を二つのエリアに分けて同時に試合を進めている。
場所を移動しながら状況を確認すると、私たちのBブロックはあと三試合残っている状態だった。ただ、こちらの初戦が早く終わったこともあり、次に備えて一度トーナメント表を確認しに行くことにする。
木枠に貼り出された最新の対戦状況を見上げると、隣に立つ雷蔵が「えっ……」と息を呑んだ。
「名前先輩……これ、見てください……!」
雷蔵が驚愕の表情で指さす先、トーナメント表の山を見ると――
「三郎が負けた……」
雷蔵が口を開く。
『えっ、三郎が……?』
「はい……」
三郎の敗退に、私も驚きを隠しきれなかった。
鉢屋三郎といえば、変装の技術においては六年生すら上回るほどの手練れだ。学園内でも「実力なら五年生の中で頭一つ抜けている」と評される彼が、まさか初戦で姿を消すことになるとは。
「あの三郎を破るなんて、一体誰が……」
雷蔵も信じられないといった様子で、青ざめた顔のままトーナメント表の文字を食い入るように見つめている。
私は息を呑みながら、三郎の対戦枠の隣に書かれた勝者の名へと視線を走らせた。
『相手は……』
「次の相手は私とだ! 名前!」
『うわっ! 小平太!?』
背後から強い衝撃とともにガバッと豪快に抱きつかれ、思わず声を上げてしまった。
すっかり忘れていたけれど、この暴君の存在を忘れるなんて不覚もいいところだ。改めてトーナメント表に目をやると、彼の名前は私のすぐ近くの枠にドンと鎮座していた。
『…そこまで見てなかった……はぁ。』
「名前先輩……僕、応援してますから。」
次の対戦相手の判明に、私は思わずその場に崩れ落ちそうになりながら溜息を吐き出した。
よりによって最悪の引きだ。学園一の体力バカであり、人間離れした腕力を誇るあの七松小平太と当たるなんて。
ガックリと肩を落とす私を見て、隣の雷蔵が心底同情しきった眼差しで背中をポンポンと慰めてくれる。
「いけいけどんどーん! どうした名前! さっきの切れ味抜群な戦いぶり、実に見事だったぞ! 次の試合が楽しみでたまらん!」
私の落ち込みぶりなど意にも介さず、小平太はガハハと豪快に笑いながら私の肩をバシバシと叩く。一撃一撃が重い。
五年生の頭脳派である雷蔵、そして圧倒的な実力を持つ三郎をも叩き伏せた体力バカの小平太。
次戦は一筋縄ではいかない激戦になりそうだ。
「さて、始まりました! 上級生による武道大会! 今回大会のMCを務めます、くノ一教室のユキでーす! 宜しくお願いします!」
可愛らしい後輩の元気いっぱいな実況で、いよいよ大会の幕が上がる。
「注目のBブロックの第一試合! 一番最初の戦いは、五年生の不破雷蔵選手対、我がくノ一教室が誇る憧れのお姉様! 苗字名前選手です!」
「きゃーーー! 名前先輩がんばってー!!!」
校庭の一角から弾けるような黄色い歓声が一斉に上がり、思わずクスッと照れくさい笑みがこぼれる。
(……ん?)
応援に応えようとした瞬間、観客席のどこかから刺さるような熱い嫉妬の視線を感じた。目を向けると、そこには優雅なポーズを崩しつつもこちらをギロリと睨む滝夜叉丸の姿。
(あの子、いつもくノ一教室の生徒たちを意識しているのにまったく相手にされていないからって……余計に嫉妬しているのかしら)
やれやれと心の中で苦笑を漏らし、視線を正面へと戻す。
「両者、前へ!」
審判の声に従い、私と雷蔵は校庭の中央へと歩み出た。
「名前先輩、大人気ですね。」
『後輩たちが勝手に盛り上がっているだけよ。』
「ははっ。でも、相手が先輩だろうと勝ちを譲るわけにはいきません。」
『雷蔵、言うわね。……もちろん、それは私も同じ。』
向かい合わせになり、静かに言葉を交わす。普段は優しく思慮深い雷蔵の瞳の奧に、忍びとしての真剣な光が宿っているのが分かった。
今回の試合の審判を務めるのは、厳しい眼差しで中央に立つ木下鉄丸先生だ。
「今回の勝敗はどちらかが参ったと言うまでだ。また、様々な武器武具の使用は可能だが、持ち込めるのは一種類のみとする。」
「「分かりました」」
「うむ。ならば両者、構え!」
木下先生の厳格な声が校庭に響き渡る。私たちは互いに距離を取り、己の武器へと手を伸ばした。
雷蔵が手に取った獲物を見て、思わず口元がかすかに緩む。
『ほお、印地ね。』
「そういう先輩は苦無ですか。」
『これが一番使い慣れているからね。』
「僕も、一番手に馴染んでいるものを選びました。」
網に包んだ石を投げつける投石術――印地。温厚そうに見えて、遠距離から的確に相手の動きを制限し、頭脳戦に持ち込もうという雷蔵らしい選抜だ。
対する私は、一対の苦無を逆手に握り直す。シンプルだからこそ、間合いの詰め方と速さがすべてを左右する刃。
「――始め!!!」
木下先生の手が勢いよく振り下ろされた。
合図と同時に地面を力強く蹴り、一気に距離を詰める。
印地は別名「投石紐」とも呼ばれる。石を遠くへ力強く飛ばすための道具であり、本質的に接近戦には不向きな武具だ。
現在の五年生たちの得意武器を思い返せば、寸鉄など、そのほとんどが近接戦闘に特化したものばかり。その中で雷蔵だけが、自ら射程距離を伸ばせる遠距離用の武器を得意とし、己の技として磨き上げている。
間合いを支配し、冷静に戦局を見極めようとする姿勢は、いかにも慎重で思慮深い雷蔵らしい選択と言えた。
雷蔵が投石してきた。
石を素早くしならせ、正確な軌道で投石を繰り出してきた。狙い澄まされた一撃が足元を掠め、カツンと乾いた音を立てて土を穿つ。それを寸前で跳び越え、体勢を崩すことなく滑らかに着地した。
『雷蔵、石を投げるだけで終わる気?』
「まだまだ、これからです!」
『へぇ、普段の迷い癖が嘘みたいね。』
「打っている最中に迷っている暇はありませんから!」
『印地だけで、私に勝てると思っているの?』
空中を裂いて迫る石の数には当然限りがある。だが、すべて打たせて消耗を待つのは愚策だ。こちらの体力と注意力が徐々に削られていくだけで、のちの試合に響いてしまう。
早めに決着をつけるべく、飛来する石を苦無の身で次々と払い落としながら、足早に雷蔵の懐深くへと潜り込む。
しかし――雷蔵もただ無策で迫られていたわけではない。私の接近を読んでいたのか、その場ですっと身を翻すと、石の入った印地をそのまま鈍器のように振りかぶって牽制してきた。
(――甘い)
それすらも織り込み済みだ。
振り下ろされた印地を左腕の甲当てでガツンと受け止め、その衝撃を利用して体勢を滑らかに旋回させる。がら空きになった雷蔵の足元へ向け、右手の苦無で下衣の裾を鋭く切り裂いた。
「えっ、うわっ!?」
切られた場所から、隠し持っていた石がゴロゴロと地面へ転がり落ちる。どれだけ上手く下衣の隙間に隠していようと、軸足の置き方や身体の傾きを見れば、どこに重みを載せているかなど一目瞭然だ。
打たせる石さえ失わせれば、勝負の天秤はこちらへ一気に傾く。打つものを無くした時、果たして印地という道具をどう扱うのか。
切られた裾と落ちた石に一瞬意識が逸れた――その僅かな隙を見逃さず、踏み込んで苦無の刃先を雷蔵の胸元へ突きつける。
ピタリ、と雷蔵の動きが止まった。
胸元に触れる冷たい金属の感触に命の危険を察したのか、その額からつーっと冷や汗が垂れ落ちる。
『印地はあくまでも遠距離用の武具。懐に入られたら最後、忍務ならその場で死を意味するわ……雷蔵、まだ続ける?』
「くっ………参りました。」
「それまで! 勝者、苗字!」
木下先生の力強い声が校庭に響き渡ると同時に、観客席を囲む下級生やくのたま達から「キャーッ!」「名前先輩かっこいいー!」と大きな歓声と拍手が沸き起こった。決着がついたことで苦無を素早く納める。
『雷蔵、最初の足元の牽制は見事だったわ。接近戦での引き出しを増やせば、もっと恐ろしい打ち手になるわね。』
「……ありがとうございます、名前先輩。完敗です。急所に突きつけられた一瞬、本当に息が止まるかと思いました。」
雷蔵は苦笑しながらも清々しい表情で礼を言い、頭を下げる。
「でも名前先輩、あれはずるいですよ。下衣を切って隠し石を叩き落とすなんて。」
『フフ、あれも立派な戦術の一部よ。戦場で敵がこちらの狙い通りに動いてくれるとは限らないでしょ?』
「全く……ぐうの音も出ません。でも、僕が印地を叩きつけた時、よく咄嗟に左腕で受け止められましたね。結構な衝撃だったはずですけど。」
『腕当てを仕込んでいたから平気よ。それに、雷蔵の動きのクセは頭に入っていたからね。』
「……脱帽です。本当に先輩には敵いませんね。」
とりあえず初戦は無事に突破。
勝ち名乗りを上げる私の姿に、Bブロックで控える文次郎や仙蔵、小平太たちがニヤリと不敵な笑みを浮かべて視線を送ってくるのが見えた。
座り込む雷蔵の手を掴み、そのままぐいっと引き上げて立たせる。
周囲では他の戦いが白熱しており、観客席からの大きな歓声や黄色い声援が入り乱れていた。
今回は上級生の参加人数が多いこともあり、校庭を二つのエリアに分けて同時に試合を進めている。
場所を移動しながら状況を確認すると、私たちのBブロックはあと三試合残っている状態だった。ただ、こちらの初戦が早く終わったこともあり、次に備えて一度トーナメント表を確認しに行くことにする。
木枠に貼り出された最新の対戦状況を見上げると、隣に立つ雷蔵が「えっ……」と息を呑んだ。
「名前先輩……これ、見てください……!」
雷蔵が驚愕の表情で指さす先、トーナメント表の山を見ると――
「三郎が負けた……」
雷蔵が口を開く。
『えっ、三郎が……?』
「はい……」
三郎の敗退に、私も驚きを隠しきれなかった。
鉢屋三郎といえば、変装の技術においては六年生すら上回るほどの手練れだ。学園内でも「実力なら五年生の中で頭一つ抜けている」と評される彼が、まさか初戦で姿を消すことになるとは。
「あの三郎を破るなんて、一体誰が……」
雷蔵も信じられないといった様子で、青ざめた顔のままトーナメント表の文字を食い入るように見つめている。
私は息を呑みながら、三郎の対戦枠の隣に書かれた勝者の名へと視線を走らせた。
『相手は……』
「次の相手は私とだ! 名前!」
『うわっ! 小平太!?』
背後から強い衝撃とともにガバッと豪快に抱きつかれ、思わず声を上げてしまった。
すっかり忘れていたけれど、この暴君の存在を忘れるなんて不覚もいいところだ。改めてトーナメント表に目をやると、彼の名前は私のすぐ近くの枠にドンと鎮座していた。
『…そこまで見てなかった……はぁ。』
「名前先輩……僕、応援してますから。」
次の対戦相手の判明に、私は思わずその場に崩れ落ちそうになりながら溜息を吐き出した。
よりによって最悪の引きだ。学園一の体力バカであり、人間離れした腕力を誇るあの七松小平太と当たるなんて。
ガックリと肩を落とす私を見て、隣の雷蔵が心底同情しきった眼差しで背中をポンポンと慰めてくれる。
「いけいけどんどーん! どうした名前! さっきの切れ味抜群な戦いぶり、実に見事だったぞ! 次の試合が楽しみでたまらん!」
私の落ち込みぶりなど意にも介さず、小平太はガハハと豪快に笑いながら私の肩をバシバシと叩く。一撃一撃が重い。
五年生の頭脳派である雷蔵、そして圧倒的な実力を持つ三郎をも叩き伏せた体力バカの小平太。
次戦は一筋縄ではいかない激戦になりそうだ。