長編
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衝撃
「お前、喧嘩売ってるか?」
「お前こそ売ってるだろうが!」
『二人共静かにしてね。実習中よ。』
野外実習で今まさに犬猿の二人の間に挟まれている。
いずれはこうなるだろうと思っていたが展開が早すぎる。この間の実習もだけどこの二人喧嘩するのが飽きないものなのか。逆に喧嘩しない方が珍しいか。
でも小声で喧嘩するのは状況を考えてるのか考えてないのやらどっちだろう。
因みに今は子の刻で、城の近くの森で息を潜めて潜伏中である。
『喧嘩する程仲が良いって言うけど。』
「「こいつとは仲良くねぇ!」」
『はもってるわ。』
二人して息の合った言葉に思わずクスクスと笑ってしまう。その様子にうっとなる二人だがようやく喧嘩が終息した。
『満足した?ほら城の連中が動き出したわ。』
今夜は新月だ。月夜が隠れ、辺りがより闇夜に染まる。
二人を横目に本日の実習課題である城に忍び込み、密書を頂くという内容に取り掛かる。
手筈通りそれぞれが動き出す。
今回は文次郎が陽動、私と留三郎が城内に侵入し得ている情報を元に密書を頂く役割だ。
囮役でもあるのに文次郎が少し嬉しそうだったのは城の兵と戦える事が理由だろう。
その逆に留三郎は悔しがるだろうと思っていたが反応を見るとそうでもない。
『留三郎、良かったの?』
「何がだ?」
『いや、囮役は良かったかなって。』
「別にそれは望んでない。」
『そう…』
「俺がしっかり囮になるからお前らはさっさと密書を取ってこい。」
「お前はいちいちうるせぇんだよ。」
「なんだと!」
『文次郎!』
「…なんだ。」
『死なないでよ。』
実習に慣れてるとは云え今は城内だ。しかも私達は敵と思われいつ兵に討たれるなど分からない。
「……ふっ、お前らもな。」
「油断するなよ。」
「馬ー鹿。」
袋槍を取り付けた棒を持ち城内の敷地へ歩んでいく文次郎の後ろ姿を最後に留三郎と城内に向かう。
名前と城内に侵入する。
罠が作動しないように避け、足音を立てずに入り込むが名前は慣れた手付きで易々と罠を回避する。
目的の場所まで天井裏を伝うがその下にいる連中には悟られていない様子。足早に進めるとある所で名前の動きが止まる。
「どうした。」
『……いや。』
城内では矢羽根でやり取りするが明らかに名前の様子が変わった。前を向いており表情は見えないが闇の中に氷のような殺気が空気を走る。
天井下では男がいるのか下卑た笑い声が響き渡り、天井裏の穴から覗き込む。そこには丸々と肥えた人物と恰幅の良い男がいる。話を盗み聞きすると悪代官のような金儲けの話をしている。
しがない話を聞いてもしょうがないが実習前の情報ではこの城はタチの悪い輩が出入りしているとも噂されていた。まさか此奴この城の用心棒か。腕には何かが彫られている。中々見かける事がないような絵柄だ。
目を凝らして見るとそれが何か分かった瞬間、怒りが激しい波のように全身に広がり身の毛が逆立つ。
カタッ
「何奴!」
その時音を鳴らしてしまい、連中に気づかれた。
護衛が湧いて出てきたが天井に槍を突き刺される前に天井裏から逃走する。俺の後ろには名前が着いて来ているが目が見開いており、その瞳は怒りに染まっている。
全速力で城内の外へ飛び出て屋根をつたい、文次郎との合流を急ぐ。
「気付かれた!どうする!」
『敵を撒く。留三郎は先に文次郎と合流して学園へ。』
「お前もだろ!」
『いい。先に行って。』
「そんな事できるわけ『先に行け』
低く強圧的な声に急いでいる筈の足が止まる。
後ろを振り向き名前と向かい合うと、その表情は冷酷無情な顔をしており瞳に冷たい憎しみの青い生気が燃えている。あまりの衝撃に言葉を紡ぐ事さえ忘れる。
何故だ。何がお前に起こったんだ。
お前は一体何を見たんだ。
『実習の責任は私が持つ。』
忍ばせていた苦無を取り出し、俺とは逆方向に足を進める名前。その後ろ姿はいつもの凛とした佇まいとは違い怒り殺気哀愁が混在している不安定な姿だ。
腰まである黒い艶のある髪は、風に靡かせ闇夜でも分かる。
やめろ行くな!頼むから!
喉から出かかっているのに名前の雰囲気に呑まれる。今ここで行かせてしまったら学園に二度と戻らない気がする。それでも彼女の足を止める事が出来ない。
そんな自身の身体を無理矢理動かし、止めるように名前に抱き付く。
それでも名前の表情は動かない。
感情を殺した能面のように表情を変えない名前に本当に俺だけでは止める事が出来ないと思い知らされる。
「………頼むから……行くな……」
『留三郎。行って。』
トンっと押され離される。
後ろに下がった時はすでに名前の姿はなかった。
「お前、喧嘩売ってるか?」
「お前こそ売ってるだろうが!」
『二人共静かにしてね。実習中よ。』
野外実習で今まさに犬猿の二人の間に挟まれている。
いずれはこうなるだろうと思っていたが展開が早すぎる。この間の実習もだけどこの二人喧嘩するのが飽きないものなのか。逆に喧嘩しない方が珍しいか。
でも小声で喧嘩するのは状況を考えてるのか考えてないのやらどっちだろう。
因みに今は子の刻で、城の近くの森で息を潜めて潜伏中である。
『喧嘩する程仲が良いって言うけど。』
「「こいつとは仲良くねぇ!」」
『はもってるわ。』
二人して息の合った言葉に思わずクスクスと笑ってしまう。その様子にうっとなる二人だがようやく喧嘩が終息した。
『満足した?ほら城の連中が動き出したわ。』
今夜は新月だ。月夜が隠れ、辺りがより闇夜に染まる。
二人を横目に本日の実習課題である城に忍び込み、密書を頂くという内容に取り掛かる。
手筈通りそれぞれが動き出す。
今回は文次郎が陽動、私と留三郎が城内に侵入し得ている情報を元に密書を頂く役割だ。
囮役でもあるのに文次郎が少し嬉しそうだったのは城の兵と戦える事が理由だろう。
その逆に留三郎は悔しがるだろうと思っていたが反応を見るとそうでもない。
『留三郎、良かったの?』
「何がだ?」
『いや、囮役は良かったかなって。』
「別にそれは望んでない。」
『そう…』
「俺がしっかり囮になるからお前らはさっさと密書を取ってこい。」
「お前はいちいちうるせぇんだよ。」
「なんだと!」
『文次郎!』
「…なんだ。」
『死なないでよ。』
実習に慣れてるとは云え今は城内だ。しかも私達は敵と思われいつ兵に討たれるなど分からない。
「……ふっ、お前らもな。」
「油断するなよ。」
「馬ー鹿。」
袋槍を取り付けた棒を持ち城内の敷地へ歩んでいく文次郎の後ろ姿を最後に留三郎と城内に向かう。
名前と城内に侵入する。
罠が作動しないように避け、足音を立てずに入り込むが名前は慣れた手付きで易々と罠を回避する。
目的の場所まで天井裏を伝うがその下にいる連中には悟られていない様子。足早に進めるとある所で名前の動きが止まる。
「どうした。」
『……いや。』
城内では矢羽根でやり取りするが明らかに名前の様子が変わった。前を向いており表情は見えないが闇の中に氷のような殺気が空気を走る。
天井下では男がいるのか下卑た笑い声が響き渡り、天井裏の穴から覗き込む。そこには丸々と肥えた人物と恰幅の良い男がいる。話を盗み聞きすると悪代官のような金儲けの話をしている。
しがない話を聞いてもしょうがないが実習前の情報ではこの城はタチの悪い輩が出入りしているとも噂されていた。まさか此奴この城の用心棒か。腕には何かが彫られている。中々見かける事がないような絵柄だ。
目を凝らして見るとそれが何か分かった瞬間、怒りが激しい波のように全身に広がり身の毛が逆立つ。
カタッ
「何奴!」
その時音を鳴らしてしまい、連中に気づかれた。
護衛が湧いて出てきたが天井に槍を突き刺される前に天井裏から逃走する。俺の後ろには名前が着いて来ているが目が見開いており、その瞳は怒りに染まっている。
全速力で城内の外へ飛び出て屋根をつたい、文次郎との合流を急ぐ。
「気付かれた!どうする!」
『敵を撒く。留三郎は先に文次郎と合流して学園へ。』
「お前もだろ!」
『いい。先に行って。』
「そんな事できるわけ『先に行け』
低く強圧的な声に急いでいる筈の足が止まる。
後ろを振り向き名前と向かい合うと、その表情は冷酷無情な顔をしており瞳に冷たい憎しみの青い生気が燃えている。あまりの衝撃に言葉を紡ぐ事さえ忘れる。
何故だ。何がお前に起こったんだ。
お前は一体何を見たんだ。
『実習の責任は私が持つ。』
忍ばせていた苦無を取り出し、俺とは逆方向に足を進める名前。その後ろ姿はいつもの凛とした佇まいとは違い怒り殺気哀愁が混在している不安定な姿だ。
腰まである黒い艶のある髪は、風に靡かせ闇夜でも分かる。
やめろ行くな!頼むから!
喉から出かかっているのに名前の雰囲気に呑まれる。今ここで行かせてしまったら学園に二度と戻らない気がする。それでも彼女の足を止める事が出来ない。
そんな自身の身体を無理矢理動かし、止めるように名前に抱き付く。
それでも名前の表情は動かない。
感情を殺した能面のように表情を変えない名前に本当に俺だけでは止める事が出来ないと思い知らされる。
「………頼むから……行くな……」
『留三郎。行って。』
トンっと押され離される。
後ろに下がった時はすでに名前の姿はなかった。