長編
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完遂
「えぇぃ!何故、賊一匹が捕まらんのだ!」
「それが、我々では手に負えません!」
「言い訳するな!早く引っ捕らえろ!」
「はっ!」
城内に賊が入った。この間のくのいちか。しかし城の警備がこのような騒ぎで取り乱されても構わん。奴の目的なら真っ直ぐ儂を狙う筈だ。
城内の兵が湧いて出てくる。刀や槍を持って襲い掛かってくるがこのくらいどうって事ない。
怯える目、奮闘している目、目が泳いでいる者など兵との距離を図る。
力強く床を蹴り、兵の一人との間合いを一気に詰める。わざと妙な軌道で刀を振るい、そちらに注意を惹き付ける。そして、刀の軌道に目が釣られている隙に、左手に持っていた苦無で兵の脇を切り裂く。
「臆するな!やれ!」
『お前達にやられる訳にはいかないのよ。』
血で染まった刀を振り払うとひっと周囲から怯える声が聞こえる。
まだまだ奴までの距離は遠い。しかしこの兵を全て相手していたら奴を逃してしまうかもしれない。早く此処をどうにかしないと。
焦ってしまっては駄目だ。冷静に正確にだ。
「がっ!」
「ぐはっ!」
「なんだ!」
「賊がもう一匹!がはっ!」
刀を構え再び兵を相手にしようとすると前面の兵が後ろから叫び倒れていく。私以外の賊とはこいつらも付いていないものだとその様子を目を凝らして見ていると宙を舞っている見覚えのある武器に表情が緩む。
その人物はあっという間に敵を倒すと近づき口布を外す。
「名前、無事か。」
『留三郎。何で此処に……』
「学園長から聞いた。」
『……野暮な事するのね。』
「お前を一人で行かせたくなかった。」
『私を止める?』
「いいや。それはしない。」
『?……っははは!』
てっきり止められるかと思ったと目を丸くすると笑いが出る。奥からは城兵達の声が聞こえてくる。
『……引き返せないわよ。いいの?』
「勿論だ。」
『頼りになるわ。』
「名前……」
『何?………んっ』
顔を留三郎に向けると留三郎が顔を寄せ付け、唇が重なる。
足元には敵兵が気絶しているとは言え、場違いな場所で留三郎の熱い唇が感じられる。その瞬間に言葉を交わす事では決して伝わらない何かがあった。
名残惜しく、留三郎の唇が離れると留三郎の熱い視線が重なり合う。
「絶対に死ぬな。……生きて戻れ。」
『…死なないわ。』
明かりの消えた室内の闇に紛れ再び口布を当て、気配が迫ってくる方向へ向き直すと同時に敵兵が再び入り込んでくる。
『取り敢えず此処をどうにかしてからね。』
「背後は任せろ。」
『ふっ、前は任せて。』
留三郎に背を預ける。心強い。留三郎の覚悟の顔付き。この優しい人をこんな所で失う訳にはいかない。それぞれの武器を持つ手に力が入り敵を二人で迎え討つ。
「奴は殺したのか!?」
「ま、まだ兵からの情報がありません!」
「なっ!ふざけるなぁぁ!」
怒りで投げ飛ばした盃が宙を舞う。男が怒り狂っている様子に近くの兵が恐怖に怯える。
自身の身を守る為、叫び暴れる事しかできないなんて肝が小さくて馬鹿な男。これだけの怯えようだ。武人の心得もとうに無くし、さぞ恨みを買っていたのだろう。周りを兵で固めている様子を見れば一目瞭然だ。
男を囲っている兵の背後に物音立てず降り立つと同時に峰打ちで気絶させる。
兵がバタバタと倒れる中、中央にはあの男がへたりと腰を抜かしている。
『こんばんは……』
「ひっ!……貴様……」
『……久しぶりでもないわね。』
「や、奴だ!奴が出たぞ!!!」
『他の兵ならもう居ない。』
「た、頼む!わ、儂を助けてくれ!」
その様子に男は後退りしながら命を乞う。
「な、頼む!」
『……貴様は今まで命乞いしてきた人々を見逃したか?』
「あっ、あっ、」
『殺してきただろう?』
「あぁ〜〜!」
『だから……救えんよ。』
「っ〜〜頼むぅ!何でもやろう!!!」
その言葉に眉を顰め、殺意が胸を吹き抜ける。
『……私が望むものは、貴様の死だ。』
「そ、そんな!」
男が近くに倒れた兵の刀を手繰り寄せる行動が視界の隅に入る。その瞬間、男に少しの余裕を感じた。丸分かりだ。
男は持った刀で斬りかかってくるがその刀を受け止め力任せに斬り飛ばす。力に負けた男の刀は空気を裂くように近くの柱に突き刺さる。男の呼吸は乱れ、先程より顔は青白く染まっている。
『貴様が非情で良かった……』
「頼むぅ!命だけは!」
その情け無い姿に微笑みを浮かべ、刀を振り上げる。
『死ね』
斬撃が有無を言わさず男の首をはねていた。一瞬の時を経て、空気が流動し音が届く。床に転がる命の灯火を消した相手の首を見下ろしながら最期の言葉を投げ掛ける。
『あの世で詫びてこい』
「えぇぃ!何故、賊一匹が捕まらんのだ!」
「それが、我々では手に負えません!」
「言い訳するな!早く引っ捕らえろ!」
「はっ!」
城内に賊が入った。この間のくのいちか。しかし城の警備がこのような騒ぎで取り乱されても構わん。奴の目的なら真っ直ぐ儂を狙う筈だ。
城内の兵が湧いて出てくる。刀や槍を持って襲い掛かってくるがこのくらいどうって事ない。
怯える目、奮闘している目、目が泳いでいる者など兵との距離を図る。
力強く床を蹴り、兵の一人との間合いを一気に詰める。わざと妙な軌道で刀を振るい、そちらに注意を惹き付ける。そして、刀の軌道に目が釣られている隙に、左手に持っていた苦無で兵の脇を切り裂く。
「臆するな!やれ!」
『お前達にやられる訳にはいかないのよ。』
血で染まった刀を振り払うとひっと周囲から怯える声が聞こえる。
まだまだ奴までの距離は遠い。しかしこの兵を全て相手していたら奴を逃してしまうかもしれない。早く此処をどうにかしないと。
焦ってしまっては駄目だ。冷静に正確にだ。
「がっ!」
「ぐはっ!」
「なんだ!」
「賊がもう一匹!がはっ!」
刀を構え再び兵を相手にしようとすると前面の兵が後ろから叫び倒れていく。私以外の賊とはこいつらも付いていないものだとその様子を目を凝らして見ていると宙を舞っている見覚えのある武器に表情が緩む。
その人物はあっという間に敵を倒すと近づき口布を外す。
「名前、無事か。」
『留三郎。何で此処に……』
「学園長から聞いた。」
『……野暮な事するのね。』
「お前を一人で行かせたくなかった。」
『私を止める?』
「いいや。それはしない。」
『?……っははは!』
てっきり止められるかと思ったと目を丸くすると笑いが出る。奥からは城兵達の声が聞こえてくる。
『……引き返せないわよ。いいの?』
「勿論だ。」
『頼りになるわ。』
「名前……」
『何?………んっ』
顔を留三郎に向けると留三郎が顔を寄せ付け、唇が重なる。
足元には敵兵が気絶しているとは言え、場違いな場所で留三郎の熱い唇が感じられる。その瞬間に言葉を交わす事では決して伝わらない何かがあった。
名残惜しく、留三郎の唇が離れると留三郎の熱い視線が重なり合う。
「絶対に死ぬな。……生きて戻れ。」
『…死なないわ。』
明かりの消えた室内の闇に紛れ再び口布を当て、気配が迫ってくる方向へ向き直すと同時に敵兵が再び入り込んでくる。
『取り敢えず此処をどうにかしてからね。』
「背後は任せろ。」
『ふっ、前は任せて。』
留三郎に背を預ける。心強い。留三郎の覚悟の顔付き。この優しい人をこんな所で失う訳にはいかない。それぞれの武器を持つ手に力が入り敵を二人で迎え討つ。
「奴は殺したのか!?」
「ま、まだ兵からの情報がありません!」
「なっ!ふざけるなぁぁ!」
怒りで投げ飛ばした盃が宙を舞う。男が怒り狂っている様子に近くの兵が恐怖に怯える。
自身の身を守る為、叫び暴れる事しかできないなんて肝が小さくて馬鹿な男。これだけの怯えようだ。武人の心得もとうに無くし、さぞ恨みを買っていたのだろう。周りを兵で固めている様子を見れば一目瞭然だ。
男を囲っている兵の背後に物音立てず降り立つと同時に峰打ちで気絶させる。
兵がバタバタと倒れる中、中央にはあの男がへたりと腰を抜かしている。
『こんばんは……』
「ひっ!……貴様……」
『……久しぶりでもないわね。』
「や、奴だ!奴が出たぞ!!!」
『他の兵ならもう居ない。』
「た、頼む!わ、儂を助けてくれ!」
その様子に男は後退りしながら命を乞う。
「な、頼む!」
『……貴様は今まで命乞いしてきた人々を見逃したか?』
「あっ、あっ、」
『殺してきただろう?』
「あぁ〜〜!」
『だから……救えんよ。』
「っ〜〜頼むぅ!何でもやろう!!!」
その言葉に眉を顰め、殺意が胸を吹き抜ける。
『……私が望むものは、貴様の死だ。』
「そ、そんな!」
男が近くに倒れた兵の刀を手繰り寄せる行動が視界の隅に入る。その瞬間、男に少しの余裕を感じた。丸分かりだ。
男は持った刀で斬りかかってくるがその刀を受け止め力任せに斬り飛ばす。力に負けた男の刀は空気を裂くように近くの柱に突き刺さる。男の呼吸は乱れ、先程より顔は青白く染まっている。
『貴様が非情で良かった……』
「頼むぅ!命だけは!」
その情け無い姿に微笑みを浮かべ、刀を振り上げる。
『死ね』
斬撃が有無を言わさず男の首をはねていた。一瞬の時を経て、空気が流動し音が届く。床に転がる命の灯火を消した相手の首を見下ろしながら最期の言葉を投げ掛ける。
『あの世で詫びてこい』