雨宿りDIARY Ⅱ
2198円の解毒
2026/09/28 19:40エッセイ
最近、ネックレスを買った。
三日月のモチーフに一粒のクリスタルが添えられた、シンプルで繊細なデザインのものだ。
税込み2198円。
安物である。
好きなブランドもあるけど、基本的にデザインが気に入るものだったら値段はあまり気にしないタイプだ。特にアクセサリーとなるとそれが顕著になる。
実はネックレスを自分で買ったのはこれが初めてである。
40年以上生きてきて、初体験をしてしまったのだ。
買った時も、身に着けた時もすごくドキドキした。 本当に買っていいのか、自分に似合うのか、身に着けて変だって笑われないか……そんな不安と共に選んだアクセサリーだった。
私がこれまでアクセサリーを買ったり、身に着けなかったのは理由がある。
子供の頃から「お前には似合わない」と母親から言われ続けてきたから。
所謂、私の母親は(父親も)毒親で、私を否定する言葉をいやというほど浴びせてきた。時には躾と称して、または理不尽に暴力を振るわれた。長じてからは金銭搾取もあった(この件に関してはまた別の記事に書くつもり)。
恐ろしいことに毎日否定され続けると、本当はそんなことはないのに「自分はだめなんだ」と思い込んでしまう。
母親からの心無い言葉にすっかり洗脳されてしまっていた私は、妹が自由に着飾るのを尻目に羨ましく思いながら、綺麗なアクセサリーは私が身に着けるものではないと思っていた。
私の外見的に「バチバチにピアス開いてそう」とよく言われるけれど、お察しの通り、一個も開いていない。これから開けようかなと思っているけれど、ピアスを開けたら開けたで、目敏く母親に見つかって「いい歳した大人が……」と言われるのは目に見えている。そしてネックレスを身に着けてたりしていたら馬鹿にされるのも想定済みである。そんなのオモチャじゃんって(母親は1万円くらいのアクセサリーでもオモチャと言って馬鹿にする人です)。
だからあんまり実家に帰りたくないけど、行かなければ行かないで「いつ来るの?」攻撃が頻繁にあるので、年に2回は実家に帰っていたりする。
結婚したら実家に帰って来いコールがなくなるのではないかとそこはかとなく期待しているけれど、どうだろう。まあ結婚するかどうかもまだ全然判らないけど。今のところ実家に帰る楽しみは姪っ子の存在くらいだ。姪っ子ちゃんは無条件に可愛いのです。
話を元に戻そう。
着飾ることにどこか罪悪感や居心地の悪さを感じていたけれど、買ったネックレスは私を馬鹿にするでもなく、自然と馴染んだ。何だかやっと「普通の大人」になれた気がして嬉しくて、出掛ける用事がなくてもネックレスを着けっぱなしにしている。
アクセサリーを身に着けることで少しだけ母親から浴びせられた毒が薄まった気がする。私にとってアクセサリーはお守りであり、結界だ。もうこれ以上、母親からの毒に染まらない。大袈裟ではなく、そんなふうに感じるのだ。
今日も私の首元で小さな三日月が煌めいている。