雨宿りDIARY Ⅱ
虎鶫社発行「夜鳥の怪vol.02」寄稿作品「不変容」冒頭サンプル
2026/04/14 14:41お知らせ
【文学フリマ東京42】
🗓5/4(月) 12:00〜開催
📍東京ビッグサイト 南3-4ホール
✅ブース: き-87〜88
小説、漫画、批評、実話怪談、レポ…何でもありの総合エンタメホラー雑誌「夜鳥の怪Vol.02」頒布
上記のホラー雑誌に人魚伝説をベースにした「不変容」を青蓮名義で寄稿してます。宜しければお手に取ってみてください。
以下、冒頭サンプルです。

白いバスタブの底に座り込む。
淡い電灯の光を受けて鱗が真珠色に輝く。
あなたは包丁の柄を強く握り締めて振り被ると下腹をめがけて勢い良く振り下ろした。
(壱)
この辺は変わらないね――あなたは呟きながら四方に視線を配ると隣を歩む幼馴染が曖昧な返事を寄越す。
墓参りの帰りだった。展墓したのは幼馴染の妹である真美の墓である。丁度今日が彼女の命日なのだった。運良く仕事の休みが重なったあなたは電車を乗り継いで故郷に舞い戻った。地方都市から片道三時間の列車の旅は職場と自宅を往復するだけの日々に僅かながら彩(いろどり)を添えた。見慣れた灰色のビル群が乱立する景色から山や海が見える拓けた眺望へと移り変わってゆく様は幾ばくかの郷愁を呼び起こした。
吐く息が白い。底冷えする寒さに耳が痛くなる。頭上には雪雲が重く垂れ込み、今にも白い欠片を落としてきそうだった。凍結した道を滑らないように慎重な足取りであなたは進む。左手には雪原が広がり――恐らく休耕地だろう――、その反対側は鬱蒼と茂る雑木林があり『国有地』と辛うじて読める看板が立っていた。視軸を遠くに投げれば曇天の下に霞む山の稜線。然程標高が高くない、小山といえる小規模な山は三つ連なってこちら側へと長く伸びて迫っていた。真冬とだけあって山頂は白く染まり麓(ふもと)へと続く山腹はくすんだ色彩を纏い、その暗色が鄙(ひな)びた景色に拍車をかけていた。十八歳の頃――二十二年前も同じ景色をあなたは見ていたが、懐かしいという感慨はあまりなかった。あるのはただ冷えた母親との確執の記憶。過干渉とネグレクトの両極端をいく母親からあなたは逃げるように故郷を後にしていた。町を出て行ったその日だけがあなたの中に確かな碑(いしぶみ)として残っている。
「この後、どうするの。実家に顔出すの」
幼馴染――蘇芳は少しだけ歩調を緩めてあなたに訊ねた。
🗓5/4(月) 12:00〜開催
📍東京ビッグサイト 南3-4ホール
✅ブース: き-87〜88
小説、漫画、批評、実話怪談、レポ…何でもありの総合エンタメホラー雑誌「夜鳥の怪Vol.02」頒布
上記のホラー雑誌に人魚伝説をベースにした「不変容」を青蓮名義で寄稿してます。宜しければお手に取ってみてください。
以下、冒頭サンプルです。

白いバスタブの底に座り込む。
淡い電灯の光を受けて鱗が真珠色に輝く。
あなたは包丁の柄を強く握り締めて振り被ると下腹をめがけて勢い良く振り下ろした。
(壱)
この辺は変わらないね――あなたは呟きながら四方に視線を配ると隣を歩む幼馴染が曖昧な返事を寄越す。
墓参りの帰りだった。展墓したのは幼馴染の妹である真美の墓である。丁度今日が彼女の命日なのだった。運良く仕事の休みが重なったあなたは電車を乗り継いで故郷に舞い戻った。地方都市から片道三時間の列車の旅は職場と自宅を往復するだけの日々に僅かながら彩(いろどり)を添えた。見慣れた灰色のビル群が乱立する景色から山や海が見える拓けた眺望へと移り変わってゆく様は幾ばくかの郷愁を呼び起こした。
吐く息が白い。底冷えする寒さに耳が痛くなる。頭上には雪雲が重く垂れ込み、今にも白い欠片を落としてきそうだった。凍結した道を滑らないように慎重な足取りであなたは進む。左手には雪原が広がり――恐らく休耕地だろう――、その反対側は鬱蒼と茂る雑木林があり『国有地』と辛うじて読める看板が立っていた。視軸を遠くに投げれば曇天の下に霞む山の稜線。然程標高が高くない、小山といえる小規模な山は三つ連なってこちら側へと長く伸びて迫っていた。真冬とだけあって山頂は白く染まり麓(ふもと)へと続く山腹はくすんだ色彩を纏い、その暗色が鄙(ひな)びた景色に拍車をかけていた。十八歳の頃――二十二年前も同じ景色をあなたは見ていたが、懐かしいという感慨はあまりなかった。あるのはただ冷えた母親との確執の記憶。過干渉とネグレクトの両極端をいく母親からあなたは逃げるように故郷を後にしていた。町を出て行ったその日だけがあなたの中に確かな碑(いしぶみ)として残っている。
「この後、どうするの。実家に顔出すの」
幼馴染――蘇芳は少しだけ歩調を緩めてあなたに訊ねた。