読書記録
月射病/ジョルジュ・シムノン
2025/08/29 17:18海外文学

月射病/ジョルジュ・シムノン/東宣出版
1930年代、フランスの植民地であったガボンが舞台。伯父の口利きでガボンにある会社に就職したティマールはホテルのオーナーである人妻のアデルと関係を持つ。ホテルで無為に過ごしているうちに現地人が殺される事件が発生。どうやらアデルが関わっているらしいと知ったティマールは彼女への猜疑と執着、嫉妬を深めていく。
本作は実際にアフリカに訪れたシムノンの体験が大きく影響しているらしい。白人と黒人の生活水準の落差の大きさや、白人なら黒いものでも白と言い切って罷り通る世界が過去にあったかと思うと胸が痛む。
結局、殺人事件の犯人はアデルだったが、警察署長も総督も判事も町の住人も、真犯人を知っていながら黒人に罪をなすり付け、ティマールが真実を叫んでも誰も耳を貸さない様はグロテスクそのもの。だが、こういう事態は今でも、どこにでも見られる光景だと思う。
どこへ行ってもティマールは白人のお坊ちゃんの「よそ者」で、蚊帳の外なのは訳者あとがきにあったようにカミュの「異邦人」を彷彿とさせる。
真実を否定されたのがきっかけに発狂してしまう姿は哀れ。
