読書記録
領土/諏訪哲史
2025/08/09 18:15日本文学

領土/諏訪哲史/新潮社
「シャトー・ドゥ・ノワゼにて」「尿意」「市民薄暮」「真珠譚」「百貨店残影」「聖家族学園」「甘露経」「湖中天」「中央駅地底街」「先カンブリア」10編収録。
ページが進むにつれて詩のような形式になっていくのが面白い。著者はこれは詩ではなく小説であると言い切っている。では小説が小説たらしめているものは何なのか?という疑問が浮かびあがってくるが、著者は言語芸術に特別なルールはなく、ノー・ルールの余白を包摂すべき芸術こそ小説でなければならないと言う。言語芸術はもっともっと自由で良いという著者の考えには目からウロコが落ちた。
作品の内容は幻想的で神秘的。夢の中で夢を見ているような淡いイメージは失われてしまった風景を眺めるような心持ちだ。もう二度とそこには辿り着けないという郷愁。繰り返し登場する「尿意」「母」「眠り」というモチーフも面白く、精神分析的に考えて見るとまた違った意味が浮かびあがってきそうだ。
