読書記録
死の同心円/ジャック・ロンドン
2025/07/21 16:26海外文学

死の同心円/ジャック・ロンドン/国書刊行会
バベルの図書館シリーズ5冊目。
表題作他「マプヒの家」「生命の掟」「恥っかき」「影と光」を収録。
ジャック・ロンドンは初めて読んだけれど、ボルヘスによるとこの作家はかなり波乱万丈な生涯を送ったらしい。アラスカで黄金を探索し、失業者軍団の闘士となり、太平洋を横断して日本近海でアザラシ猟を試み、社会主義に転向し、やがて執筆活動で得た資産で豪華船を持つにいたったそうな。冒険小説ばりの人生である。
「マプヒの家」は 大洋の島の住民と近代からの航海者の交易、彼らを襲うハリケーンの脅威を描いた作品でハリケーンの描写が凄まじい。「生命の掟」は雪の中で回想し、死にゆく男を描いたもの。「恥っかき」はオチも秀逸な作品で、拷問から逃れるために一計を案じた男の話。表題作の「死の同心円」はテロリストから殺害予告が届くという、薄気味悪い話でこれはプロレタリアートに属する作品とのこと。ラストを飾る「影と光」は髪と目の色以外はそっくりな男2人が競うようにして生き、一方は影を、もう一方は光を 科学技術で操ることによって姿を消すという実験を行う話。結末は悲劇的だが、最後の文章がとても良い。
「もはや化学研究などどうでもよくなった。わが家では科学の話題はタブーである。私はふたたび薔薇に戻った。自然の色で充分だと思っている。」
