読書記録

さまよえる影/パスカル・キニャール

2025/06/13 14:47
海外文学
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さまよえる影/パスカル・キニャール/青土社

55章から成る断章。格言めいたものや思考の断片、小説のようなものが散りばめられた本作を読むと著者の博覧強記ぶりが良く判る。
自分自身とは決して切り離すことのできない影、その暗がり、闇に潜み、揺曳するものについてキニャールが書いたそれは私達が普段忘れ、無意識的に見ようとしないものだ。キニャールはかそけき声に耳を欹てて捉えることが難しい深淵を言葉で浮き彫りにしようとする。
「われわれの肉体を包んでいる影は、われわれの出自の場面にかかわるものであるがゆえに、どれもけっして視像とはならぬ場面の影だ。
われわれは、自分が存在する以前に、誰が自分をつくり、何が自分をつくり、どうしてそうなったのか、その声を聞いたわけでも、その姿を見たわけでもない。人は、自分が存在する前には存在してないということを忘れているというわけだ。
だが、われわれは嘘をついている。自分が大気に属する前に、太陽の輝きに目が開かれる以前に、闇のなかで何かが聞こえたといつも信じているのだ。
われわれは闇の中で形作られたものだ。闇のなかで受け身に。われわれは、まぶたのない影の耳の果実だ。」(第二章 17p)

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