読書記録

別荘/ホセ・ドノソ

2025/06/09 16:04
海外文学
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別荘/ホセ・ドノソ/現代企画室

557ページに及ぶ大作。
ひと夏を僻地にある別荘で過ごすベントゥーラ一族。大人達だけでピクニックへ出かける前日から物語が始まる。
50人以上の登場人物が入り乱れる本作は使用人も含めて一族内の権力争いを描いており、非常にスリリング。渦巻く愛憎、張り巡らされた陰謀、やがて訪れる混乱と狂乱、そして殺戮。ベントゥーラ一族は内部から瓦解していく。
金で財産を成した一族と別荘がある土地に住んでいる原住民との対比も搾取と差別を描いており、どんなふうに人々の間に差別が生まれてくるのかが良く分かる。
富と権力がある大人達は現実を直視しようとせず、ピクニックへ出かけていた間に別荘と子供達に何が起こったのか分かろうともしない姿は解説にあったように無能な政府を象徴しており、大人達に置き去りにされた子供達はどうにかして生き抜こうと足掻き、権力・階級闘争を繰り広げる様はそのまま権力者に踏み躙られて喘ぐ民衆の姿だ。
作中に暫し登場する子供達が興じる笑劇「公爵夫人は5時に出発した」も展開される物語と重なり合い、「別荘」に奥行を与えている。「公爵夫人は5時に出発した」を笑劇として楽しめるのはやはり同じ特権階級にいる者だけなのだろうと思うとベントゥーラ一族の特異性に何かおぞましいものを感じてしまう。
ウェンセスラオの「野蛮とは権力を盾にして無実を主張することだ」この糾弾は痛烈な批判と皮肉の響きをもって突き刺さる。
この物語を書き上げるのにドノソは5年の歳月を費やしたそうだが、これだけの物語を書き上げられる知的体力に脱帽。凄い物語だった。

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