読書記録
悪い娘の悪戯/マリオ・バルガス=リョサ
2025/06/02 19:43海外文学

悪い娘の悪戯/マリオ・バルガス=リョサ/作品社
ティーンエイジャーの頃に出会った少女リリー(ニーニャ・マラ)に恋をしたリカルド。子供の頃からパリに住みたいと願っていた彼は希望通りに祖国ペルーからパリへ移り住む。そこで図らずも再会したニーニャ・マラに人生の大半を翻弄され続けることになる。
貧しい暮らしは真っ平だと身分を偽ってまで上流社会の仲間り入りを果たしたニーニャ・マラに良いように利用され続けるリカルドは、傍から見ていると本人が暫し自身に言い聞かせているように愚かに映るが、どんなに冷たくあしらわれ続けても彼女を愛する姿には感動すら覚える。ニーニャ・マラが精神的にも肉体的にもぼろぼろになった時の彼の献身的な様子は聖人そのもの。
読み進めながら、今度こそリカルドは報われて欲しいと願うが、その期待はあっさり裏切られる。どうしてこんなに酷い女性を一途に愛し続けることができるのか不思議に思うが、俗に言うところの「恋は盲目」、自分になびかないからこそますます欲しくなる、ということなのだろう。理屈が全く通用しない感情に基づく世界を描いた本作はそういう意味で非常にスリリングだ。
ニーニャ・マラもリカルドから求められ続けることでしか愛されている実感が持てず、どうやって人を愛したら良いのか分からない、そんな不器用な人だったのかもしれない。そう考えると彼女を少しだけ哀れにも思う。
最期にリカルドに遺産を譲り渡そうとした彼女の意志は彼女なり最大の愛情表現であり、誠意だったのかもしれない。
紆余曲折、波乱万丈に満ちた2人の愛の物語は最後だけは静謐な穏やかさに満たされていたと思いたい。
