読書記録

ロリア侯爵夫人の失踪/ホセ・ドノソ

2025/05/28 20:45
海外文学
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ロリア侯爵夫人の失踪/ホセ・ドノソ/水声社

1920年代のマドリードが舞台。ニカラグアから嫁いできた美貌のブランカが5ヶ月という短い結婚生活の後、未亡人となり、使用人や画家、知人や友人と様々な情事を重ねていく官能小説。
パラリフィアのきらいがある夫であったパキートと最後の一線まで辿り着かなったブランカが、それを求めるように身近な男と身を重ねていく様は彼女自身それとは知らず、自己破壊願望があるように感じられた。それを象徴するように画家のアルチバルドが飼っていた犬・ルナに自室を酷く荒らされ、肉体すら痛めつけられながらもルナを傍らに置いていた。
「境界なき土地」でも犬が登場したが、ドノソの作品に登場する犬は何か不吉なもの、獰猛な破壊者としての顔があるように思う。
美貌も地位も富すらも手に入れたブランカが欲していたのは愛などという生ぬるい陳腐なものでなくて、酷く激烈な、それこそ世界がひっくり返るようなものだったのではないだろうか。
ラスト彼女が失踪してしまうのはとても暗示的だ。銃声が響いた後、ブランカが死んだのかどうかすら知れないが、私は彼女自身が望んでいたものを手に入れたのだと思う。
美貌の未亡人、失踪する――そんな文言とも共にまさに悲劇のヒロインとして一族に語り継がれるのだ。

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