読書記録
死刑宣告/萩原恭次郎
2025/05/27 15:23日本文学

死刑宣告/萩原恭次郎/長隆舎
詩というと「静寂」「静謐」といったイメージや雰囲気を思い浮かべるが、萩原恭次郎の詩はそれらを覆すような圧倒的な轟音として響いてくる。とにかく音に溢れているのだ。作品の中に擬音語が頻繁に登場するのもあるが、視覚的な効果も多分にある。文字を上下逆さまに配置したり、フォントの文字サイズの変更や「●」の多様、紙面デザインがとにかく面白い。
「死刑宣告」は今から丁度100年前の1925年に刊行された。時代背景を考えると第一次世界大戦後の大不況がありながらも大正デモクラシーや職業婦人の増加、女性の断髪と洋装、ラジオ放送の開始など新しくも大きな変化があった。それに呼応するかのように「死刑宣告」もアバンギャルドかつ実験的な作りになっている。
作品は戦争の傷痕と貧困、新しいテクノロジーとしての機械や車、機関車といったものが登場し、イタリアで勃興した未来派を思わせる表現もある。
言葉はそれが持つ意味からは逃れられないが、文字の配列の工夫やオブジェの写真などを挟み込むことによって言葉本来の意味を無効にし、新たな意味を付与しようとする意図は古い時代(大正)の終わりと新しい時代(昭和)の始まりの暗喩のようにも思える。
全体的に暗鬱で退廃的な雰囲気があるが、どこかあっけらかんとして突き抜けている部分も感じられて不思議な手触りを感じさせる。
「〇●」の「ゼニヲ/モツテヰナイモノハ/ニンゲンデ/ナインダ」は資本主義社会の暗黒面を言い表しているようでどきりとする。
