読書記録
スペイン幻想小説傑作集
2025/05/26 15:18海外文学

スペイン幻想小説傑作集/東谷穎人 編/白水uブックス
19世紀から20世紀にかけて活躍したスペインの作家達による幻想小説の短編集。
魔女あり、悪魔あり、不思議な人形に義足、お守り、不気味な女から自分自身の葬儀を見物する男、友人による冥府から手紙、光が全く失われた世界……。
19世紀の作品は魔女や悪魔といったキリスト教(カトリック教会)を色濃く反映した作品が印象に残るが、20世紀になると人の心理や精神面に根ざした恐怖話や不思議な話が目に付き、時代の移り変わりが見えるよう。
ホセ・デ・エスプロンセダの「義足」は星新一的なユーモアがある作品で、童話の「赤い靴」を思わせる。
クラリンの「ぼくの葬儀」はタイトルから連想できるように、自分自身の葬儀を眺める男の話で参列者の態度を見ると死後に自分の葬儀に参加できないことはある意味幸せなことなのではないかと思ってしまう。知らぬが仏とはまさにこのこと。
アルフォンソ・ロドリゲス・カステラオの「ガラスの眼」は死後骸骨となって墓地にいる仲間(勿論死者の骸骨だ)と色々な話をしている男の話で妙に生き生きとしてる感じが面白い。
14作品ある中で一番面白かったのは一切の光がなくなった世界を描いたベンセスラオ・フェルナンデス・フローレンスの「暗闇」。黙示録的なパニック小説とでもいうべきか。太陽はある、火は燃える、明かりはつく、だけれど光だけがない。暗闇に包まれた世界はどんなに恐ろしいのか読んでいてひしひしと伝わってくる。ラストの救いのない感じも秀逸。
バラエティに富んだ1冊。とても楽しく読んだ。
