読書記録

愛その他の悪霊について/ガルシア=マルケス

2025/05/24 21:32
海外文学
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愛その他の悪霊について/ガルシア=マルケス/新潮社

18世紀半ばのスペイン王国領だったコロンビアの城壁に囲まれた町が舞台。狂犬病に感染することを極度に恐れ、また不名誉とされていた時代、侯爵家の娘シエルバ・マリアが狂犬病に侵されている犬に噛まれたことから物語が始まる。
結局、マリアは狂犬病に感染はしていなかったのだがその奇異な立ち振る舞いから悪魔憑きとされて修道院へ入れられてしまう。
キリスト教が世の中を支配し、異端審問が行われていた当時、奴隷制度や黒人差別が当たり前のように横行する中で悪魔憑きとされているマリアの存在はその時代の歪みとして表現されているのだろう。宗教的抑圧、人種的抑圧、女性であることの抑圧。その時代の歪みと病理を一身に背負ったマリアは宛ら殉教者のようだ。そしてそんな彼女を救い出すべく働きかけるカエターノ神父は病んだ世界に差し込む一条の光だが、しかしその光明も潰えてしまう。
またこの物語は結ばれない愛の物語でもある。マリアの両親の不仲も含めて愛とは脆弱で時に酷くエゴイスティックで悪魔のように醜悪であることを書き表している。
マリアは最後まで報われずに亡くなるが「彼女が寝台の上で、光り輝く目をして、生まれたばかりのような肌のまま、愛のために死んでいる」という一文を見ると死によって救われたのかもしれない。
全体的に暗く陰鬱な物語だが、大変面白く読んだ。マルケスにしては読みやすい部類の本だと思う。

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