読書記録

このページを読む者に永遠の呪いあれ/マヌエル・プイグ

2025/05/24 14:12
海外文学
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このページを読む者に永遠の呪いあれ/マヌエル・プイグ/現代企画室

かつてアルゼンチンで組合活動の指導者として活躍したが、官憲に捕らえられて拷問にかけられたあと人権擁護局の手でニューヨークに身柄を移された74歳の老人ラミーレスとその付添人として働いてるアメリカ人のローレンス・ジョン(ラリイ)の2人だけの会話だけで物語が展開されていく。
病気のためにラミーレスの発言は夢や白昼夢、妄想が入り交じり、またラリイも彼の発言に基づいて発話しているために、どこからどこまでが真実で現実であり、どこからどこまでが嘘と虚構であるのかが判らない。
虚実渾然となった会話劇を読んでいると「私」というものは入れ子構造となって造られているように感じる。 連続/不連続の「私」が「私」の中に幾つもあり、思考、記憶、感情、そして外部からの情報が渾然一体となって「私」の中に折りたたまれている。そこには事実も虚偽も含まれる。
マヌエル・プイグのこの小説はその折りたたまれている「私」をずるずると引き摺り出して見せている気がする。恰もあるべき場所に収まっている内臓を取り出すように。
現実と事実、意図的な嘘、思い違いや勘違い、実はこれらのものは私達の脳は厳密に区別ができない。全てが事実の手応えとしてある。それは悪夢を見ている間、それを夢とは認識できずに恐怖を感じているのと同じだ。
信頼できない語り手による物語のラストは衝撃的。
ラミーレスが語り、またラリイから聞きたがっていた家族や配偶者、恋人の話を思うと彼が抱いていた憧れと理想が透けて見えて切なくなる。

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