読書記録
夜、すべての血は黒い/ダヴィド・ディオップ
2025/04/28 14:12海外文学

夜、すべての血は黒い/ダヴィド・ディオップ/早川書房
いっときの狂気は、弾丸の真実を忘れさせてくれる。戦争においていっときの狂気は、勇気に似ている――セネガルの農村の青年アルファが第1次大戦中フランスに動員され塹壕戦を戦う。親友が目の前で苦しみながら死んだことを契機にアルファは覚醒し自分なりの考えを紡ぎ始める。
描かれているのは戦争が孕む残虐性と人が人らしさを失っていく過程だが、しかしア皮肉なことにルファは戦争によって村の古い因習から解放され、自由を得ていく。
人類の歴史を振り返ってみた時、進歩と破壊は常に表裏一体だった。新しい技術はより生活を便利にするが弊害も齎す。そういった、何かを得るには何かを失うというドラマがアルファの中で展開されていくのが本作の主題だが、独特な語り口もあり、非常にダイナミックでパワフルな物語として読み手に響く。ラストは衝撃的。表側が裏側にひっくり返るような、また冒頭から読み直したくなる。