読書記録

現代の地獄への旅/ディーノ・ブッツァーティ

2025/03/22 04:07
海外文学
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現代の地獄への旅/ディーノ・ブッツァーティ/東宣出版

イタリアの作家であるブッツァーティの中・後期の作品を15編集めた短編集。
「卵」「甘美な夜」「目には目を」「十八番ホール」「自然の魔力」「老人狩り」「キルケー」「難問」「公園での自殺」「ヴェネツィア・ビエンナーレの夜の戦い」「庭の瘤」「神出鬼没」「二人の運転手」「現代の地獄の旅」を収録。
どの話も日常が舞台でありながら、ふとした瞬間に非現実世界に裏返ってしまう奇妙さと恐ろしさがある。けれどもブッツァーティにかかればそんな悲劇も喜劇的に見えてしまうから不思議だ。行きすぎた不幸は笑いとなる――それは決して滑稽ゆえのおかしさではなく、ある種の残酷さに根ざした笑いである。ここまできたらもう笑うしかない、そんな心境に近い。
本作に収められた作品は幻想色が強いのも特徴的。
「甘美な夜」は夜の庭で繰り広げられる昆虫や夜行性動物たちの静かな殺戮の世界を描いたもので、視点の目新しさが楽しい。
月が落下してくる「自然の魔力」は恐ろしい破壊的な物語だが、煌々と輝く月が落ちてくるイメージはどこかロマンチックでもある。
表題作の「現代の地獄への旅」はタイトルそのままのテーマで、現世こそ地獄そのものであるというメッセージはありきたりではあるものの、ブッツァーティが描くと凄みのある説得力として響いてくる。
地獄は目の前にあった。
私たちはこの世に生まれ出た時「一切の希望を捨てよ」と母なる門を潜り抜けてきたのだ。

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