読書記録

悪い時/ガブリエル・ガルシア=マルケス

2026/05/22 08:03
海外文学
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悪い時/ガブリエル・ガルシア=マルケス

表題作他8編集録の中短編集。
「悪い時」は町の住民を手当たり次第に中傷するビラをめぐって、人々の緊張が高まってゆく様子を描いた作品。自らの権力によって町を掌握しようとする町長、町のモラル向上に腐心しながらも暴力からは目を背ける司祭、職務を放棄して酒と女に溺れる判事、私服を肥やす成金、醜聞に怯える名門一族……複雑に絡んだ人間関係と衝突し合う権力の上に描き出される町の風景は生々しいまでに殺伐としている。
結局、誰が中傷ビラを撒いているかまでは明確には明かされないのだが町にやってきたサーカス団の一員である女占い師が「町の人みんな、でも、誰でもないのです」と占いの結果を明示するシーンがとても印象的。改めて中傷ビラのような、匿名性があり、強力な影響力があるものの存在について考えずにはいられない。現代において、特にネット空間においてその存在は無視できない。何か恐ろしい爆弾なようにも感じられる。
ビラによる中傷は、スクレで実際に起こった出来事であり、それが原因で殺人事件まで起こったというのだから驚いてしまう。
また8編の短編では退役軍人で恩給待ち続ける「大佐に手紙は来ない」がとても良かった。

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