読書記録

小説/野崎まど(ネタバレ注意)

2025/01/29 18:07
日本文学
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小説/野崎まど/KADOKAWA

人からのお勧めで読みました。五歳で読んだ「走れメロス」を切っ掛けに、小説を読むことに人生を捧げる主人公・内海集司。12歳の頃、生涯の友・外崎真と出会い、小説家が住む「モジャ屋敷」に2人で出入りするようになる。「モジャ屋敷」には膨大な蔵書があり、内海と外崎はそこで好きなだけ本を読むことができた。小説家の髭先生は2人の小説世界をさらに豊かにしていく。しかし、正体がよく知れない小説家と「モジャ屋敷」には秘密があった――。
本書は「なぜ小説を読むのか」をテーマにした作品であり、もっといえば「なぜ人は嘘(フィクション)を必要とするのか」という深遠な命題のアンサーでもある。
「宇宙は拡散して散逸する。けれどそれとは逆の“集合化して秩序化する”そんな流れがあるように見える。」
「生命は内外を区別する境界を有し、外界から多くの物質を取り込みながら、今日まで続いてきた。」
「人間が一番欲しいのは心の中のもの。」
「嘘は人の内側にあるもの。内側にしかないもの。」
「意味とは外から見えないもの。内包された性質。」
科学研究者、博物館の館長、税務会計士、警察官、小説家、それぞれの立場での体験や思考がより合わさり「小説」を読むことの意味を明らかにしていく過程は数学の証明問題のようだ。
小説を読んで楽しいと思うことは提示されたフィクションから何かしらの意味を読み取り、自己に還元されるからに他ならない。
小説を読むことで自分の内面が増幅され、豊かになっていく。広がりながら集合していく。小説を読むことの営みは宇宙誕生のそれと等しい。
小説はただ読むだけで良い――生涯をかけてそれを見事に証明してみせた外崎の内海への篤い友情はどんな星よりも美しく、燦然と輝いている。

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