Amazonで注文してた本が届きました。


暗黒のメルヘン/澁澤龍彦 編

旧版も持っているのですが、取り出せないところにあるので(積読の箱をどかさないと取れない😂)写真は新装版だけ。
解説が大好きな高原英理なのも嬉しいです。

収録作はこちら。

龍潭譚/泉鏡花
桜の森の満開の下/坂口安吾
山桜/石川淳
押絵と旅する男/江戸川乱歩
瓶詰の地獄/夢野久作
白蟻/小栗虫太郎
零人/大坪砂男
猫の泉/日影丈吉
深淵/埴谷雄高
摩天楼/島尾敏雄
詩人の生涯/安部公房
仲間/三島由紀夫
人魚紀聞/椿實
マドンナの真珠/澁澤龍彦
恋人同士/倉橋由美子
ウコンレオラ/山本修雄

20年くらい前に読んだきりなので内容覚えてない作品もあるけれど、ラインナップ見てると流石は澁澤龍彦、という感じ。
乱歩は探偵小説(推理小説というより探偵小説といった方がしっくりくる)が有名だけど、個人的には幻想怪奇小説の方が好きだったりします。エロティシズムとグロテスクの絢爛豪華な地獄を書くのが上手いし、凄い。久作もそうだし、初期の谷崎潤一郎もそう。
鏡花は「鏡花世界」というワードがあるほど独自の世界観を描いている作家で、売れなかったり人気が落ちてしまった時期もあったみたいだけど、芥川龍之介や柳田國男なんかが鏡花の作品を読んで「仲間がいる」と思ったらしいし、多くの作家に影響を与えて今でも鏡花文学が読まれてるのは凄いな、と。明治に書かれた作品が令和の現代でも読まれてるって本当に凄いと思う。

鏡花が師匠の尾崎紅葉とバトった逸話が好きです。
師匠の「私をとるか、女をとるか」っていう台詞だけみるとなんかあやしい感じに見えるけど(笑)、鏡花が結婚を望んでいた相手が所謂芸者さんで、当時はそういう職業は下に見られていたから大事な愛弟子をそんな相手と一緒にさせるわけにはいかないと紅葉は善意で反対してたんですよね。でも鏡花は反対を押し切って彼女と結婚しちゃうっていう。
このエピソードは「婦系図」でも書かれていて、この話では病床にあった師匠が最後折れて結婚を許してます。
あと面識もなかった夏目漱石にお金を借りたっていうエピソードも好きです。鏡花さん、なかなかやるな。
ちゃんとお金を貸してあげる漱石も凄いけど。
鏡花は潔癖症で、谷崎潤一郎と鍋を一緒に食べときに「ここからここまでが私の陣地です」といいながら食べていたらしい。谷崎は肉にあまり火を通さずにばくばく食べてるけど、鏡花はしっかり火を通さないと手を付けないとか、熱燗も沸騰するくらい熱くして飲んでいたとか、そんな話も微笑ましい。

若い頃の写真を見ると優男ふうの美男子。
上品な顔立ちで、この人絶対モテただろうな〜と思ってしまう。幼い頃に母親と死に別れたので、ちょっとマザコン入ってたのかなとも思うけど。

泉鏡花は読み慣れないとちょっととっつきにくさはあるけど、慣れると文章のリズムが凄く良くて音読したくなります。私もそんなにたくさん読んではないけど。

私が泉鏡花を読んだきっかけが、国語の授業で「好きな作家について調べて小論文としてまとめる」が始まり。
丁度その頃、京極夏彦が「嗤う伊右衛門」で泉鏡花賞を受賞してて、泉鏡花って誰やねん？と気になったので選んでみたんだけど、18歳の小娘には鏡花文学は難しかった😇😇😇(教師にも難しいでしょって言われた😂)
短編の「外科室」は1週間経っても読み切れないし、登場人物が誰と話してるのかもよく分からない。でも作品はある程度読まないと小論文も書きようがないので挫折しながら何度も読み返しました。
鏡花について書かれた研究本とかも読みながら作品を幾つか読んで、授業中には書き終えなかったから冬休み中に家でMarilyn MansonのCDを延々と聴きながら仕上げた思い出。原稿用紙で80か100枚くらい書いたのかな。
当時いた図書室の司書さんに出来栄えを褒められて、書いたものをくれと言われたので差し上げました。
(ちなみに親友はカフカについて書いてて、当時カフカなんて読んでなかったから判らなかったけど、カフカもかなり手強い作家だと思う)

鏡花の作品で好きなもの。
・外科室
・春昼・春昼後刻
・絵本の春
・義血侠血
・高野聖
・天守物語
・草迷宮
・龍潭譚
・化鳥

鏡花初心者さんなら短編の「外科室」と「春昼・春昼後刻」(これは連作中編)がおすすめかな。
「絵本の春」「化鳥」は絵本でも出ています。(絵本の春は帯の文章が澁澤龍彦)

三島由紀夫と澁澤龍彦の対談の中で鏡花について語ってるのがあるんだけど、その中に出てきた「酸漿」という作品を読みたくてずっと探してます。これは全集とかじゃないと読めないのかな。

幻想文学の祖、泉鏡花。
妖しくも美しい世界へようこそ行ってらっしゃいませ。