雨宿りdiary
【コラロ◆ネップリ配信】終焉、その先へ【1/21まで】
2025/01/14 19:13お知らせ

セブンイレブン様にてネットプリント配信致します。
予約番号 44781467
A4サイズ 白黒 12ページ 120円
印刷時は右とじを選択してください
期限 1 /21 23:59まで
ローくんが幽霊コラさんと出会う話。コラさんがローくんを助けた理由について色々妄想してみました。また原作の1081話についても少し触れてます。
配信終了後、サイトにて全文公開いたします。
【以下、冒頭サンプルです】
……懐かしい声がする。低くて優しい声。その声に触れると胸の裡が温かくなる。小さな灯りが灯るような。……ロー……ロー、聴こえてるか?……目を醒ましてくれ……なァ、ロー……、判ってるよ、コラさん……でもまだそうやってアンタの声を聴いていたいんだ……目を開けるのが酷く億劫で……、コラさん……おれの名前……もっと……、
「――ロー、ここで眠ったら駄目だ。目を醒ますんだ」
水底から響いてくるような声音が不意に鮮明な形を得て鼓膜を揺らし、暗がりに沈んでいたローの意識を引き上げる。起きてくれと肩を揺さぶられてローはむずがる幼子のように眉根を寄せ、目蓋を微かに慄(ふる)わせてゆっくりと瞳を開いた。醒めきらない目で視線を彷徨わせる。ぼやけた視界に光が鋭く射し込み、その眩しさに瞳を瞬かせると焦点が合った。良く知ったハート柄が目に飛び込んで一気に覚醒する。
「コラさん……!」
ローが弾かれたように勢い良く立ち上がると真正面にいた大男は些か驚いた顔色を浮かべながらも、ほっと胸を撫で下ろした。
「目ェ醒めたみてェだな」
良かったぜ――へらりと眉尻を下げて笑う顔はローの記憶の中にある十三年前と同じだった。できることならもう一度逢いたいと切望していた愛しい人の姿を信じられない思いで見詰めて堪らずにその大きな躰に抱き着いた。被っていた白い帽子が脱げて足元に落ちる。 うぉっ⁉――勢い良く抱きつかれてコラソンはバランスを崩し、床に尻もちを着く。
「コラさん……っ」
懐かしい匂い。懐かしい体温。懐かしい声。ローはハート柄のシャツを握り込んで厚い胸板に顔を埋(うず)めて戦慄く唇を噛み締めた。そうでもしなければ勝手に涙が出てしまう。
「暫く会わねェうちに甘えん坊になっちまったか?」
コラソンは眦を和らげて愛し子の背をあやすように慰撫する。ロー顔見せて――穏やかに言うと濡れた金色の双眸がコラソンを捉えた。
「デカくなったなァ」
両の手で精悍に引き締まった頬に触れながら「昔はおれの掌に乗るくれェ小さかったのによォ」一丁前に髭まで生やしちまってと何か眩しいものを見るように柘榴色の瞳を眇める。
「流石にそこまで豆じゃねェよ」
ローはふっと笑う。大人びた笑い方――年相応のそれに彼もそんなふうに笑うようになったのかとコラソンは感慨深く思いながらぽんと黒い頭を撫でた。
「そうかァ? でもお前が立派に育って安心したよ。珀鉛病もすっかり良くなったみてェだしな」
「ああ。全てはコラさんのお陰だ。コラさんがあの時、」
それ以上は言いっこなしだ――コラソンは長い人差し指を立てるとローの唇に軽く押し当てて言葉を塞ぐ。それから、こうしちゃおれねェとローの腕を引いて立ち上がる。
「ロー、今すぐこの列車から降りるんだ」
「は、」
そう言われて初めてローは自分が置かれている状況に意識を向けた。コラソンが言う通り、ローは列車に乗っていた。一体どこへ向かっているのか定かではない。暖色系の電灯の下、規則的に並んだボックス席に他に乗客はなく、酷く静かだった。少しの揺れも感じないので列車が停止しているように感じられた。ローは帽子を拾い上げると車内を見回し、窓の外に視線を転じる。窓外は黒々とした闇が広がるばかりで、何も見通せなかった。窓硝子は電灯と闇とを映して鏡となってローの姿を浮かび上がらせる。と、ローは虚を突かれたように瞠目した。背後を振り返る。
「コラさん、アンタ――」
アルルカンは困ったように力無く笑って「まァそういうこった」肩を竦めて見せた。窓硝子にはコラソンの姿は映っていなかった。確かに彼はローのすぐ傍にいるのに、だ。ローだけが独り取り残されたように暗闇の鏡に虚像を映していた。
「お前も早いとここの列車を降りねェとおれみてェになっちまう。この列車にお前が乗るのは早すぎる」
だから早く降車するんだとコラソンはローの腕を掴んで乗降口へと向かおうとする。が、ローはその場から動こうとしなかった。逞しい腕に縋る。
「厭だ。せっかくコラさんに会えたのに」
ずっと会いたかったのだ。それこそ夢に見るくらいに。彼の夢を見て目醒める度に寂寥感に打ちのめされた。夢が幸福であればあるほど迎える朝は残酷さ極めた。人間は目醒めるために夢を見ると言うが、それならばいっそ夢を見ないまでに深く眠るか、眠らずにいるしかなかった。
ローは顔を歪めて唇を硬く引き結ぶ。恰も泣き出す寸前の子供のような態度を目の当たりにしてコラソンは「あー、判ったよ」コイフの上からガシガシと頭を掻いて溜息を吐いた。
「お前をこのまま乗せていくわけには行かねェけど、ちっとだけなら一緒にいても構わねェよ。ちっとだけな」
本当にちっとだけだからなと念を押しつつ、つくづく自分はローに甘いと思う。己に呆れながら、しかし悄然と項垂れている姿を見てしまっては毅然とした態度を取ることはできなかった。またローを泣かせてしまう――そんな罪悪感に混じって大人になった彼ともう少し言葉を交わしたい気持ちもあった。
コラソンはローを席に座らせると自身も真向かいに腰を下ろす。ローは行儀良く帽子を膝の上に置き、言うべき言葉を探すように視線を落として惑わせる。伝えたいことはたくさんあるのに想いばかりが先走ってしまい、言葉が胸に閊(つか)えて出てこない。と、コラソンは薄く笑って「ローが今までどんなふうに生きて何をしてきたのか、おれは全部知ってるよ」張り詰めた沈黙をほどくように優しく告げる。
「ローがオペオペの実の能力を使って珀鉛病を治したことも、町で初めて出会った仲間の怪我を治癒したことも、海へ出る切っ掛けも。それからドフィのことも」
ごめんなロー――コラソンは心底申し訳なさそうに眉を曇らせる。
「おれはお前に自由に生きて欲しかったのに結果的に全部背負わせちまった。あの時、おれが引き金を引けていたら――躊躇うことなくドフィを撃っていたなら、ローが危険な目に遭うこともなかったんだ。それにお前との約束も破っちまったし、」
隣町で落ち合おう――果たせないと判っていて約束を交わした。最期には海兵であったことは明かしたが、ずっとローには嘘ばかり吐いていたのだ。そうすることが最善と信じてのことだが、今思い返してみれば我ながら酷いと思う。
「なァ、おれのこと嫌いになった……?」
コラソンはおずおずといった風情ですっかり逞しい青年へと成長したローの顔色を窺う。するとかつての愛し子はおかしそうに噴き出した。
「え、おれ何か変なこと言ったか⁉」
「アンタ、この期に及んでおれが恨み言を言うとでも思ったのか?」
「いや、だってよォ、あんな別れ方したし、おれはお前が嫌ってた海兵だったろ。嫌わない方がおかしいって言うか、」
「世界一愛してるコラさんを嫌うわけねェだろ。コラさんはずっとおれのために優しい嘘を吐いてくれてた。ちゃんと判ってるよ、全部」
嘘を吐き通すことで真実にしようとしていたことを今は知っている。それがどんなに難しいことであるかも。ローは生真面目な表情を作って真正面に座る最愛の人に真摯な眼差しを向ける。
「ドレスローザでセンゴクと会った。その時に言われたよ。受けた愛に理由をつけるなと。センゴクの言うことは理解できるし、尤もだと思う。だけど、おれはやっぱり知りたい。――なァ、コラさん。どうしておれを助けたんだ?」
