戀―REN―
2021年に発行したSSの再録集です。当時お手に取ってくださった皆様、ありがとうございました!尚、各作品の解説は本に収録した自作解題の「戀愛事典」になります。ネタバレ、妄想語りも含みます。
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目次
観覧車―人工楽園―
デートの定番、観覧車。国太で観覧車に乗る作品は他にも書きましたが、観覧車ってサブタイトルにあるように二人だけの楽園、ユートピアだと思うんです。夜景を眼下に見るとその時だけ、天辺に到達した僅かな時間の間だけ、世界が自分達だけのものになるような錯覚。でも小さな箱は地上へ戻らなければならない。閉じた世界は綻びてそこから追放されてしまう。楽園を追われたアダムとイヴのように。太宰さんは二人だけのユートピアを失われることを残念がっていますが、国木田君は反対で閉じられた世界(観覧車)はディストピアだと感じている。読んでくださった方は、どちらの考えに近いでしょうか。私はディストピアのように思っていますが。続きを読む
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睡れぬ夜は声を抱いて
リクエストを頂いて「よし! できた!」と思って良くお題を見たら、盛大に勘違いしていることが発覚。せっかく書いたので消すのも勿体なくてTwitterに掲載したのでした(私のバカ)。とはいえ、実は結構気に入っていたりします。酔いに任せて(箍が外れて)路上で太宰さんにキスしてしまう国木田君。そのことが忘れられなくて、気が付いたら太宰さんも国木田君を好きだと自覚する……そんな話ですが、人を好きになる瞬間って、物語で書くと劇的な何かがあって……みたいになりがちなのですが(私の場合)本当はもっと漠然とした、捉えどころのないような何かが大きく作用しているように思っていて。そういう感じの話を目指したつもりだったのですが、結果、全然そうなっていなかった。これについてはまた挑戦したいです。続きを読む
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耳は貝殻の名残
収録作品の中で一番古い作品。書いたのは2018年。当時書いたものは残ってなかったので新たに書き直しをしました。ですが内容は一緒です。膝枕して貰う国木田君が書きたかった。耳掃除って気持ちが良いですよね。私もやりすぎていつも血が出ます(でも辞められない)。人の身体の造りを見てふと思ったことも題材にして入れています。三半規管、外耳の造形、心音。国木田君の中にある海は初夏の爽やかな海のように想像しました。太宰さんは静かな月夜の海。夜光虫が波打ち際で青白く煌めくような。この二人は夏のデートで海にもいくのかな。昼間の海は何だか似合わないように思いますが……(笑)海といえば個人的に寒い季節の、物寂しい海が好きです。誰もいない、何もない、海が。
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背中
国木田君の背中について。作中で語っていることが全てですが、国木田君の性感帯って絶対背中にあると信じて疑いません(え)。あと背筋凄そう。国木田独歩(二十二歳・独身、武装探偵社調査員。恋人あり)は脱いでも凄いんです、ええ。続きを読む
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残香―金木犀―
ネップリ配信時には未収録だった本作は、太宰さんがポートマフィアの首領で国木田君が探偵社の社長のパラレルです。この類の二次創作はきっと素敵なものが沢山あると思うのですが、私も書いちゃいました。そのうちもっと話を膨らませて長めの話で書きたいなと思っていたのですが、上手く話を考えられず……特に太宰さんがポートマフィアに戻った理由もなんだろうなとずっと考えていたのですが(恐らく探偵社の、ひいては国木田君の命がかかっていたと思われる)悩むだけで先に進まなかったので、一先ずこちらに収録しました。こういう、赦されざる関係性にとても萌えます。また愛し合うのも殺し合うのも、その想いの熱量は等しいように思えます。太宰さんは国木田君に殺されることを望んでいるふうですが、きっと国木田君は太宰さんを殺せない。何としてでも別の手段を見つけて回避しようとするだろうな、と。設定的にはとても気に入っているので何時かきちんと長編で書き上げたいです。作中にある「待つ身が辛いか、待たせる身が辛いか」の一文は有名な太宰治の言葉から(『走れメロス』を執筆するに至った発端の言葉だそう)。サブタイトルの金木犀は、丁度執筆していた時に咲いていたので作品にも絡めてみました。金木犀は良い香りで好きです。秋になると花はまだかなとそわそわしちゃいます。この作品のテーマ曲はlynch.の『TRIGGER』『ENVY』だなあと勝手に認定しております。続きを読む
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10.1gの愛
学ストネタ。学ストって結構謎な設定ですよね?(私が良く知らないだけだったらすみません)。私が書く学ストの太宰さんは国木田先生大好きっ子で、好きだという感情をあまり(というか殆ど)隠してないです。国木田先生は立場的にもっと冷静に、一歩引くような感じでいたいのですが、でも太宰さんに強請られると折れちゃうし、つい甘やかしてしまう、そんな関係で書いています。学ストは平和で好きです。作中で国木田先生が言っている「妙な茸」。……どんな茸だったのかはご想像にお任せ致しますが、きっと先生が野獣になるようなヤバい茸だったと推測しております。続きを読む
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沈「 」黙
タイトルはDIR EN GREYの『秒「 」深』をもじりました。「沈黙が会話する」というのをイメージに託しました。なのでここでは二人は会話していません。個人的にはちょっと実験的な作品です。昼間からうずまきでナチュラルにいちゃついてる二人。周りの人達は一体何を見せられているんでしょうか……。私はめっちゃ見たいけどね!
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アダムの林檎
『沈「 」黙』の続編。その日の夜のお話。失うことを恐れている太宰さんがテーマ。このテーマも繰り返し書いていますが、やっぱり織田作をああいった形で失ったのは友人として凄く辛いことだったと思うんですよね。手に入れたものはいずれ失うと頭では理解していても。だから国木田君に「何も欲しくなかった」と太宰さんは言うのですが、でもそれでも好きな人ができて、しかも手が届いてしまった。国木田君も明確な理由が解らないならがらも(何故か私の中で太宰さんは国木田君に織田作のことを話せないという設定が出来上がっています)太宰さんが喪失の予感に怯えているのを感じ取っている。そんな彼に「大丈夫だ」と言ってあげるのは簡単だけれども、でもそれだけではきっと太宰さんの苦しみを取り除いてあげることは難しいことを国木田君も理解しているので、何があっても、どんな時でも、彼の隣に、傍に居続けて態度で示すんだろうな、と思います。続きを読む
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優しい暗闇
自分で書いておいてなんですが、これ、場面設定が謎すぎるんですよね……太宰さんが目隠しされている……。え、何、そういうプレイですか?(やめなさい)この作品の主題は暗闇は何か恐ろしいもの、禍々しいもの、というイメージから、タイトルが示している通り、優しいものへの反転です。国木田君の手にかかればどんなに濃い暗闇も優しくて温かいものになるのではないかな、と。逆もまた然り。安息と安寧の暗闇。それは忘れてしまった胎内の記憶にとても似ているのかもしれません。
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君との終わりはきっと、美しい
こちらは一転、何事にも終わりがあることに安堵さえ覚えている、ちょっと前向きな太宰さんのお話(とはいっても、別にいつも後ろ向きな訳ではないけれど)。書いた当時はとうに桜の季節が終わっていて書こうかどうしようか少し迷っていたのを覚えています。これまでも散々言っていますが、太宰さんと国木田君って月と太陽なんですよね~(私の個人的な概念と解釈)。夜の公園でブランコに乗る二十二歳の成人男性二人。想像するとちょっと面白い。国木田君は子供の頃、どんな遊びが好きだったのかなあと妄想するのも楽しい。砂場遊びとか……? 太宰さんは勝手にブランコ遊びが好きだと設定してしまいましたが、実際にはどうだったんでしょうかね。結構子供の頃から危ない(命にかかわるような)遊びが好きだったりして。話は戻りますが、個人的にもあらゆることに終りがあることは良いことだなあと思っています。楽しい時間や幸せな時間が終わってしまうのは少し寂しいですが。でも終わりがあるから、あらゆることの意味や価値がとてもかけがえなく、強く輝くように思うのです。だから終わりはきっと、美しい。
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