400字小説

Kiss,Kiss,Kiss(コラロ)

 厚い胸板に耳を押し当てる。鼓膜を揺らす穏やかな心音は強く優しい響きを孕んでいた。自然と瞼が重たくなる。ローの頭上から小さな笑みが降ってきて「今日は甘えんぼさんだなァ」大きな手が頭を撫でる。その心地良さに躰から力が抜ける。
 いつもなら「子供扱いするな」「こちらとら三十億の賞金首の大海賊だぞ」と気色ばむローであったが今日は違った。年上の恋人にどこまでも甘やかされたくて仕方がなかった。自分でも珍しいと思う。ロシナンテは朗らかに笑いながら「いつもキャプテンとして頑張ってるもんなァ」お疲れと犬猫にするように両の手でわしゃわしゃと頭を撫でた。
「コラさん、それじゃ足りねェよ」
「もっと撫でて欲しいのか?」
 白い歯を見せてニッと嗤うとローは判ってるくせにと口角を下げる。――こういうところもローは可愛いんだよなァ。ロシナンテは頬を緩めながら顔を近付ける。
「ほんとに毎日お疲れ様、キャプテン」
 労わるようにキスをした。 
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