400字小説

Sleeping Beauty Ⅱ(みつ→くり)

 ふと目を醒ますと目の前にあどけない寝顔があった。出した憶えのない毛布が掛けられていることに気付く。きっと伽羅ちゃんがしてくれたのだろう。そんな彼は寒そうに身を縮こませて小さな寝息を立てていた。僕は起き上がって彼に毛布を譲った。と、伽羅ちゃんが僅かに身動ぎする。
「どんな夢を見ているのかなあ」
 僕のことだったら良いのに、なんてつい思ってしまう。
 そっと髪に触れてみる。少し癖のあるそれは柔らかい。もっと彼に触れてみたい。できればその心にも。
 薄く開いた唇に指先を触れながらいつか耳にした異国の御伽話を思い出す。呪いによって眠り続けるお姫様に王子様が口付けると目を醒まし、結ばれる幸せな話を。もし僕が彼に口付けたら――顔を寄せて寸前のところで踏み止まる。
「伽羅ちゃん、好きだよ」
 いつかちゃんと伝えたい。ずっと前から好きで愛していたことを。
「それまで僕の傍にいてね」
 そう呟くと可愛い寝顔が微かに微笑んだ気がした。
3/23ページ
スキ