400字小説

Sleeping Beauty(みつ←くり)

 居室に戻ると珍しく光忠が畳の上で転寝うたたねしていた。長身を丸めて健やかな寝息を立てている彼を見ていると起こすのも憚れた。押し入れから薄手の毛布を取り出して掛けてやる。と、僅かに光忠が身動ぎする。
 普段じっくり見ることのない白いかんばせを眺める。伏せられた睫毛が意外と長いことに気付く。
 長く伸ばした前髪から覗く眼帯にそっと指を触れる。この下がどうなっているのかまだ見たことがない。夜眠っている時も外そうとしないのだから余程人目に晒したくないのだろう。いつか、この眼帯に隠されている秘密に触れたく思う。
「好きだ」
 本人に聞こえないのを良いことに口に出して言ってみる。
 俺は光忠が好きだ。いつからなんてもう憶えていない。もうずっと前から誰にも明かせない秘密として抱えている。きっとこの先も恋情を呑み込んだまま素知らぬ顔で彼の傍にいるのだろう。それで良い。
 だけど今は。今だけは無防備に眠る美しい人を独占したい。
「光忠、好きだ」
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