400字小説

陽だまりと静寂(みつくり)

 伽羅ちゃん、と秘密を打ち明けるように囁くと甘えるみたいに鼻先を擦り合わせてくる。こういう時の光忠はまるで犬みたいだと思う。大きな黒い犬。
 布団からはみ出ないように躰を寄せる。一つの夜具に収まるのは窮屈だが、案外この距離感は気に入っていた。温かくて気持ちが良いのだ。まるで陽だまりの中にいるみたいに。俺がそう言えば「伽羅ちゃんの傍はとても静かな感じがする」一緒にいるとほっと落ち着くのだと光忠は笑った。
「あんたの周りはいつも騒がしいからな」
 光忠を慕う刀は多い。普段から分け隔てなく皆に親切で物腰も柔らかいので付き合い易いのだろう。俺とは大違いだ。
「賑やかなのは嫌いじゃないし、皆と一緒に過ごすのも好きだけど、たまに静かな場所で落ち着きたいなって思うことがあるよ。そんな時は君の傍にいたくなる」
 勿論、どんな時でも近くにいたいけれどねと恋刀は告げる。俺もだと素直に言えない代わりに微笑する唇へそっと口付けた。
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