400字小説

血と鋼鐵(刀剣乱舞カプなし)

 太刀を振るう時、酷く躰が熱くなる。敵を斬り捨て、その首を刎ねる瞬間最も血が滾った。仮令人の身を得ようとも、やはり己は武器である刀なのだと思う。
 斬る、刎ねる、薙ぎ払う。
 考えなくとも躰が動く。
 戦で闘うことが本分で本性。
 確かに自分はそのように造られたのだと自覚する。
 青銅の燭台ごと斬り捨てたのは伊達じゃない。
 敵の斬撃が頬に触れて鋭い痛みを感じた。少し遅れて血が流れる。躰が傷付いて初めて鋼鐵とは違うこの肉体の脆さに戦慄する。
 流れ出る温い血を拭う。拭いきれなかった血が口の中に入って金気臭い味が広がる。
 ――この真っ赤な人間の血にも鉄が混じっている。
 そんな単純な事実に今更気付いて自嘲する。
 刀である自分も、人の形をしている自分も、等しく同じ。ただ見た目が違うだけ。
 太刀を握り直す。
 大丈夫、刃毀れしていない。
 まだ闘える。 
「やられっぱなしじゃあ格好がつかないよね」
 そう、僕は。
「長船派の祖、光忠が一振………参る!」
3/18ページ
スキ