400字小説

出会い、別れ、そして、(一次創作)

 出会わなければ良かったと思う人はきっといない。どんなに最悪な出会いでも私を形作るという点では有益である。何よりも人との出会いにおいて最も重要なのは、いつかその人と別れてしまう時がやってきても、出会わなかったよりずっと良いということだ。誰かとの離別は耐え難い痛みとなって心を苛むだろう。だがその痛みこそが愛の深さであり、大切であった人の存在の証なのだ。私自身が誰かの喪失の痛みになれば幸いである。
 喪ってから気が付くのは愚かだと言うが、しかし喪わないと判らないこともままあるものだ。それで良いと私は思う。出会って別れて喪って、そしてまた誰かと、何かと出会う。「さよならだけが人生だ」とは上手いこと言ったもので、生きていく中で出会うよりも何かと別れることの方が多いかもしれない。だが私は敢えて言いたい。「こんにちは」と握手するのもまた人生だと。
 できうる限り多くの人に、貴方に、こんにちはと笑って出会いたい。 
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