400字小説
鋼鐵の音(みつくり)
僕達の此処の音は――光忠は右手の人差し指でとん、と大倶利伽羅の胸を指す。丁度心臓の真上。
「刀匠達が繰り返し鋼鐵を打って刀を鍛錬した音のように聞こえる」
何度も火に入れ、水に潜らせて不純物を削ぎ落とし、打ち叩いてはその純度を高めていく。やがて生まれ出づるのは鋭利な光を弾く、強く美しい刀。人を殺める道具として、または神事の道具として、数々の時代を渡り歩いた美術品として在り続ける。
「伽羅ちゃんの鋼鐵 は強くて優しい音がするよ」
そう言って微笑む光忠の胸に大倶利伽羅は手を触れ、耳を押し当てる。
「光忠の音は心地が良い」
とくとくと穏やかに響く音は耳朶に優しく、大倶利伽羅の躰に良く馴染んでいてずっと聴いていたくなる。
――この音が。
大倶利伽羅は薄く瞼を伏せて耳を攲 てる。
激しく乱れる瞬間を知っている。自分以外誰も知らぬその音を思って躰の深部が慄 えた。
「もっとあんたの音が聴きたい」
囁く唇に光忠は淡く口付けて応えた。
僕達の此処の音は――光忠は右手の人差し指でとん、と大倶利伽羅の胸を指す。丁度心臓の真上。
「刀匠達が繰り返し鋼鐵を打って刀を鍛錬した音のように聞こえる」
何度も火に入れ、水に潜らせて不純物を削ぎ落とし、打ち叩いてはその純度を高めていく。やがて生まれ出づるのは鋭利な光を弾く、強く美しい刀。人を殺める道具として、または神事の道具として、数々の時代を渡り歩いた美術品として在り続ける。
「伽羅ちゃんの
そう言って微笑む光忠の胸に大倶利伽羅は手を触れ、耳を押し当てる。
「光忠の音は心地が良い」
とくとくと穏やかに響く音は耳朶に優しく、大倶利伽羅の躰に良く馴染んでいてずっと聴いていたくなる。
――この音が。
大倶利伽羅は薄く瞼を伏せて耳を
激しく乱れる瞬間を知っている。自分以外誰も知らぬその音を思って躰の深部が
「もっとあんたの音が聴きたい」
囁く唇に光忠は淡く口付けて応えた。