400字小説
慈雨(みつくり)
「あれは伽羅ちゃんだと思うんだよね」
「何の話だ」
平坦な声で大倶利伽羅が応じると光忠は「夢の話だよ」淡く微笑する。
「夢の中で僕は火に焼かれてとても苦しい思いをしているんだけど、突然僕の名前を呼ぶ声が聞こえるんだ。そして次の瞬間、雷鳴が轟いて雨が降ってくる」
恰も焔に包まれた光忠を救い出すようにして天から雨が降り注ぎ燃え広がる火を鎮めるのだ。
「何故俺だと思う?」
「龍だよ。龍は雨を呼ぶ。それに倶利伽羅龍は慈悲深い不動明王の化身だ。だからきっと伽羅ちゃんが僕の窮地を救ってくれたんだろうなって」
どうもありがとうと光忠は大倶利伽羅に笑顔を向けた。
「別に俺は何もしてない関係ない。単なる夢の話だろう」
無愛想な顔色で告げながら内心では言いようのない喜びを感じていた。仮令夢であっても戀する彼を救うことができた。あの時は駆けつけることすら叶わなかったから。
「今夜は良く眠れそうだよ」
それから光忠は焔の悪夢を見ない。
「あれは伽羅ちゃんだと思うんだよね」
「何の話だ」
平坦な声で大倶利伽羅が応じると光忠は「夢の話だよ」淡く微笑する。
「夢の中で僕は火に焼かれてとても苦しい思いをしているんだけど、突然僕の名前を呼ぶ声が聞こえるんだ。そして次の瞬間、雷鳴が轟いて雨が降ってくる」
恰も焔に包まれた光忠を救い出すようにして天から雨が降り注ぎ燃え広がる火を鎮めるのだ。
「何故俺だと思う?」
「龍だよ。龍は雨を呼ぶ。それに倶利伽羅龍は慈悲深い不動明王の化身だ。だからきっと伽羅ちゃんが僕の窮地を救ってくれたんだろうなって」
どうもありがとうと光忠は大倶利伽羅に笑顔を向けた。
「別に俺は何もしてない関係ない。単なる夢の話だろう」
無愛想な顔色で告げながら内心では言いようのない喜びを感じていた。仮令夢であっても戀する彼を救うことができた。あの時は駆けつけることすら叶わなかったから。
「今夜は良く眠れそうだよ」
それから光忠は焔の悪夢を見ない。