1話
夢小説設定
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懐かしい夢を見た。
目尻が濡れている気がして、指で拭うとしっとりしていた。朧気な夢の記憶は瞬きするうちに溶けて消えてしまう。じんわりと胸の奥が痛むのは久しぶりに朧との記憶を夢で見たからだ。
こういう時は無理に思い出さないに限る。どうせ、夢のことなんてすぐに忘れてしまうのだから。
窓を開け、少しひんやりした秋の朝の空気を胸いっぱいに吸う。目の前の木に茂る黄色い葉が揺れる。暑いより寒い方が好きな葵にとって、秋の来訪は喜ばしいことだった。
読書の秋、食欲の秋。色々な秋はあれど、このふたつは外せない。今日は本屋に寄って、茶屋に行こう。頭の中で、季節限定の文字が踊るケーキのポスターを思い出しながら準備をしていた時、メールを受信した用の着信音が鳴った。
「朝から誰……」
そうは言いつつも、葵がメールを受け取るのは信女か異三郎かの二人くらいしかいない。受信したメールの送付先を確認すると、予想通り信女の名前があった。
『緊急事態』
その言葉とともに、現在位置だろう場所が記載してあった。葵は予定していたものを全て後回しにし、急いで信女の元へ向かった。
「今日から秋の新作が先行で味わえるわ」
指定された場所に着くなり言われた言葉に、葵はすっ転びそうになった。
新作が、ということはアレだろう。信女の好きなドーナツのことだ。想像していた緊急事態とは違ったことに、安堵すればいいのか、怒ればいいのか葵には分からなかった。
「それを買ってくればいいのね」
「少し違うわ。これに参加してもらいたいの」
ペラっと、どこからともなくビラには、派手な見出しが踊る。
『秋のドーナツ収穫祭!欲しいものは自らの手で掴み取れ!周年記念争奪戦!』
風呂敷と湯のみに秋らしい色合いのイメージマスコットのぬいぐるみ。そこに新作ドーナツ三種類を一個ずつプレゼントする券がつくという。
来る途中に見かけたドーナツ屋は、そこそこの人がいた記憶がある。信女がそこのドーナツを好んで食べていると知って、通る度に見る癖がついてしまった。
「なるほど。参加して勝ち取らなきゃいけないと。それでこの券が必要なのね」
「そう。私はこれから仕事だから参加出来ない」
ずずっと顔の前に突き出されるビラの圧に、負けて葵はビラを受け取る。
「わかった、わかった。挑戦してくるから」
頷いた信女に、葵は任せてと笑顔で返した。
目尻が濡れている気がして、指で拭うとしっとりしていた。朧気な夢の記憶は瞬きするうちに溶けて消えてしまう。じんわりと胸の奥が痛むのは久しぶりに朧との記憶を夢で見たからだ。
こういう時は無理に思い出さないに限る。どうせ、夢のことなんてすぐに忘れてしまうのだから。
窓を開け、少しひんやりした秋の朝の空気を胸いっぱいに吸う。目の前の木に茂る黄色い葉が揺れる。暑いより寒い方が好きな葵にとって、秋の来訪は喜ばしいことだった。
読書の秋、食欲の秋。色々な秋はあれど、このふたつは外せない。今日は本屋に寄って、茶屋に行こう。頭の中で、季節限定の文字が踊るケーキのポスターを思い出しながら準備をしていた時、メールを受信した用の着信音が鳴った。
「朝から誰……」
そうは言いつつも、葵がメールを受け取るのは信女か異三郎かの二人くらいしかいない。受信したメールの送付先を確認すると、予想通り信女の名前があった。
『緊急事態』
その言葉とともに、現在位置だろう場所が記載してあった。葵は予定していたものを全て後回しにし、急いで信女の元へ向かった。
「今日から秋の新作が先行で味わえるわ」
指定された場所に着くなり言われた言葉に、葵はすっ転びそうになった。
新作が、ということはアレだろう。信女の好きなドーナツのことだ。想像していた緊急事態とは違ったことに、安堵すればいいのか、怒ればいいのか葵には分からなかった。
「それを買ってくればいいのね」
「少し違うわ。これに参加してもらいたいの」
ペラっと、どこからともなくビラには、派手な見出しが踊る。
『秋のドーナツ収穫祭!欲しいものは自らの手で掴み取れ!周年記念争奪戦!』
風呂敷と湯のみに秋らしい色合いのイメージマスコットのぬいぐるみ。そこに新作ドーナツ三種類を一個ずつプレゼントする券がつくという。
来る途中に見かけたドーナツ屋は、そこそこの人がいた記憶がある。信女がそこのドーナツを好んで食べていると知って、通る度に見る癖がついてしまった。
「なるほど。参加して勝ち取らなきゃいけないと。それでこの券が必要なのね」
「そう。私はこれから仕事だから参加出来ない」
ずずっと顔の前に突き出されるビラの圧に、負けて葵はビラを受け取る。
「わかった、わかった。挑戦してくるから」
頷いた信女に、葵は任せてと笑顔で返した。