志村新八
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雨が降ってきた。ポツっと一粒落ちてきたと思ったら、徐々に勢いが増し、周囲の人たちを走らせる。例に漏れず、私も近くのお店に駆け込んだ。
避難先のドラッグストアでは、傘が売り切れていた。店内に居座る訳にもいかず、飲み物だけ買って軒先を借りる。
濡れた部分があまり無いことに安堵しつつ、空を見上げる。先の方は晴れているから、少しすれば晴れるはず。
早く止まないかな。人通りが少なくなってきた通りをぼんやり眺めていると、走っている新八くんを見つけた。雨からメガネを守っているのか、手を小さな屋根のようにしている。
ぽっと心に光が灯ったように暖かくなる。見かけただけで、嬉しい気持ちになるのはちょっと重症かもしれない。一緒に雨宿り出来ないかな、なんて淡い期待を抱いてしまう。
そんな気持ちが届いたのか、軒下を探していたのか、新八くんがこちらにやってきた。軒下に横並びに並ぶ。
「ナマエさん、雨宿りですか?」
「そう、さっきここに避難してきたの」
「お互い災難でしたね」
そう言って新八くんは困ったように笑った。そうだね、と返すけど、彼との予定外の遭遇に雨の災難さは、吹き飛んでしまっている。
彼はメガネに付いている雫を拭き始めた。髪や着物がしっとりと濡れていて、このままだと風邪を引いてしまいそう。そういえば、ハンカチを持っていた。
「新八くん、ちょっとこっち向いて。じっとしててね」
「はい……?」
素直に顔を向けてくれた彼の頭に手を伸ばして、毛先を優しく拭いていく。あまり変わらないかもしれないけど、少しでも水気を減らしてあげないと。本当に風邪を引いてしまう。
メガネを拭く姿勢のまま、文字通り動かない新八くん。そこまでじっとしてなくてもいいのになぁ。でも、協力してくれている内に早くしてしまおう。
ゆっくりと滴る雫を拭いている最中に、ふと、彼と目が合った。レンズ越しじゃないのがとっても新鮮だ。メガネを外して見える範囲がどれくらいか分からないけど、ボヤけて認識されないのは少し、寂しいかもしれない。
「ありがとう。もう動いても大丈夫だよ」
「ありがとう、ございます。……あの、ナマエさん、顔、近いです」
「……わ、ごめんなさい!」
慌てて新八くんから離れる。無意識に距離が近くなっていた。広くは無い軒下で、雨に濡れないようになるべく新八くん側に寄っていたのが良くなかった。彼の赤くなっていた顔につられるように私の頬も熱くなる。
屋根に雨粒が落ちる音で場が満たさる。
「ここ、傘とか売ってないんですかね」
沈黙を破ったのはメガネを掛けた新八くんの声だった。視線を向けた先には、空の傘売場。
「傘は私が来た時に、ちょうど売り切れてたの。お店の中のを出してたみたいで、そこに無ければ今日はもう売り切れですって」
「そうなんですね。傘があれば早く帰れるのにって思ったんですけど……。あっ!べ、別に、早く帰って欲しいわけじゃなくて、いや、このままだと寒くて、貴女が風邪を引いちゃうから、帰って暖かくして欲しいですけど……!でも、貴女と話す時間が減るのも嫌です……」
早口から一転、ぽつりと呟かれた言葉に、きゅっと胸が締め付けられる。可愛い。濡れているせいか、雨に濡れた犬みたいに見えてしまって、庇護欲みたいなものが芽生え始めていた。
「って、僕、変なこと言ってますよね、すみません」
「そんな事ないよ。新八くんと話す時間が減るのが嫌なのはそれは私も一緒。でも、新八くんの方が濡れてるし……だから、これ」
羽織を脱いで、新八くんの肩に掛ける。丈が短いのは仕方がないけど、華やかな色は存外彼に良く似合う。
「女性物で嫌かもしれないけど、冷えるのは良くないから」
「それは全然!……暖かいです。ありがとうございます」
「良かった。どういたしまして」
土を叩く音が弱くなってきている。そろそろ雨が止む頃だ。
早く止んで欲しかったのに、彼と会えただけで止んで欲しくないに変わってしまう。会おうと思えばいつでも会えるのに。でも、晴れた空の下で私の羽織を身にまとった姿も見たいかも。そんな欲が出てきてしまう。
「この羽織、また洗って返しますね」
「え、あ、ううん、気にしないで」
「いえ、その、また二人で会えたらって」
雨音が止み、雲の切れ間から日が差す。頬の熱が冷めないまま、私は全力で頷いた。
2026.3.6
避難先のドラッグストアでは、傘が売り切れていた。店内に居座る訳にもいかず、飲み物だけ買って軒先を借りる。
濡れた部分があまり無いことに安堵しつつ、空を見上げる。先の方は晴れているから、少しすれば晴れるはず。
早く止まないかな。人通りが少なくなってきた通りをぼんやり眺めていると、走っている新八くんを見つけた。雨からメガネを守っているのか、手を小さな屋根のようにしている。
ぽっと心に光が灯ったように暖かくなる。見かけただけで、嬉しい気持ちになるのはちょっと重症かもしれない。一緒に雨宿り出来ないかな、なんて淡い期待を抱いてしまう。
そんな気持ちが届いたのか、軒下を探していたのか、新八くんがこちらにやってきた。軒下に横並びに並ぶ。
「ナマエさん、雨宿りですか?」
「そう、さっきここに避難してきたの」
「お互い災難でしたね」
そう言って新八くんは困ったように笑った。そうだね、と返すけど、彼との予定外の遭遇に雨の災難さは、吹き飛んでしまっている。
彼はメガネに付いている雫を拭き始めた。髪や着物がしっとりと濡れていて、このままだと風邪を引いてしまいそう。そういえば、ハンカチを持っていた。
「新八くん、ちょっとこっち向いて。じっとしててね」
「はい……?」
素直に顔を向けてくれた彼の頭に手を伸ばして、毛先を優しく拭いていく。あまり変わらないかもしれないけど、少しでも水気を減らしてあげないと。本当に風邪を引いてしまう。
メガネを拭く姿勢のまま、文字通り動かない新八くん。そこまでじっとしてなくてもいいのになぁ。でも、協力してくれている内に早くしてしまおう。
ゆっくりと滴る雫を拭いている最中に、ふと、彼と目が合った。レンズ越しじゃないのがとっても新鮮だ。メガネを外して見える範囲がどれくらいか分からないけど、ボヤけて認識されないのは少し、寂しいかもしれない。
「ありがとう。もう動いても大丈夫だよ」
「ありがとう、ございます。……あの、ナマエさん、顔、近いです」
「……わ、ごめんなさい!」
慌てて新八くんから離れる。無意識に距離が近くなっていた。広くは無い軒下で、雨に濡れないようになるべく新八くん側に寄っていたのが良くなかった。彼の赤くなっていた顔につられるように私の頬も熱くなる。
屋根に雨粒が落ちる音で場が満たさる。
「ここ、傘とか売ってないんですかね」
沈黙を破ったのはメガネを掛けた新八くんの声だった。視線を向けた先には、空の傘売場。
「傘は私が来た時に、ちょうど売り切れてたの。お店の中のを出してたみたいで、そこに無ければ今日はもう売り切れですって」
「そうなんですね。傘があれば早く帰れるのにって思ったんですけど……。あっ!べ、別に、早く帰って欲しいわけじゃなくて、いや、このままだと寒くて、貴女が風邪を引いちゃうから、帰って暖かくして欲しいですけど……!でも、貴女と話す時間が減るのも嫌です……」
早口から一転、ぽつりと呟かれた言葉に、きゅっと胸が締め付けられる。可愛い。濡れているせいか、雨に濡れた犬みたいに見えてしまって、庇護欲みたいなものが芽生え始めていた。
「って、僕、変なこと言ってますよね、すみません」
「そんな事ないよ。新八くんと話す時間が減るのが嫌なのはそれは私も一緒。でも、新八くんの方が濡れてるし……だから、これ」
羽織を脱いで、新八くんの肩に掛ける。丈が短いのは仕方がないけど、華やかな色は存外彼に良く似合う。
「女性物で嫌かもしれないけど、冷えるのは良くないから」
「それは全然!……暖かいです。ありがとうございます」
「良かった。どういたしまして」
土を叩く音が弱くなってきている。そろそろ雨が止む頃だ。
早く止んで欲しかったのに、彼と会えただけで止んで欲しくないに変わってしまう。会おうと思えばいつでも会えるのに。でも、晴れた空の下で私の羽織を身にまとった姿も見たいかも。そんな欲が出てきてしまう。
「この羽織、また洗って返しますね」
「え、あ、ううん、気にしないで」
「いえ、その、また二人で会えたらって」
雨音が止み、雲の切れ間から日が差す。頬の熱が冷めないまま、私は全力で頷いた。
2026.3.6
