沖田総悟
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クリスマスから一日が経った十二月二十六日。ケーキ屋の箱が入った袋を抱えて上機嫌に帰路に着く。
昨日、一昨日と仕事で、クリスマスらしいクリスマスが過ごせなかった。楽しそうにイベントを楽しむ人たちを見ていると、別に一緒に過ごす相手もいないのに少し憂鬱になってしまうのは空気に当てられたせいだろう。
すっかりお正月の空気に変わった街中でも、クリスマスはココ!と紹介される有名店のショーケースに並んだケーキたちは、まだクリスマスは終わってないと語りかけてきた。可愛らしいケーキたちは、少し値引きされて鎮座する。それを見つけたら、それはもうすることは一つだ。
「ケーキパーティー……!」
好きなだけ買う。これに尽きる。ある意味、自分へのクリスマスプレゼントだ。夜にひとりで開催すると決めたら、帰る足も軽くなる。
◾︎
「ナマエじゃないですか」
「沖田くん」
公園を通り過ぎようとして、ベンチに座っていた沖田くんに声を掛けられた。
浮かれた足で彼の前に立つ。トントンと叩かれて、沖田くんの隣に座る。
「仕事中?」
「まァ、そうですね。市民の皆様の安全を監視してるんでェ」
「ようはサボりってことね」
公園のベンチに座って見れるのは、夕焼けに染まった公園の風景だけだ。遊んでいる子どもも、散歩する人もいない。
「いやいや、これも立派な仕事でさァ。ちょうど今、箱の中を検分しなきゃいけなくなったんで」
「箱……?え、これのこと?」
膝の上に乗せたケーキの箱を指すと、沖田くんは頷いた。
「ちゃんとケーキ屋の名前が書いてあるんだけど」
「ああ、その店のケーキですかィ。クリスマスに特に人気だって聞きやしたが……」
「そう!奇跡的に残ってて、クリスマスも仕事で過ごした私へ、サンタさんからのプレゼントなんじゃないかって思ったの」
「ヘェ、なら、俺もプレゼントが欲しいもんです」
「真選組もクリスマスに休みってないんだ」
「イベント事は人が集まって行動することが多いんで、攘夷浪士たちがコソコソ紛れて活動してたり、それこそ羽目外しすぎた馬鹿どもを制圧したり、色々やることはあるんですぜ」
沖田くんがクリスマスも仕事していたと知って、安堵感が広がる。人の不幸を喜んでいるみたいな気持ちになってしまった。チラッと沖田くんを見る。特に気にした様子は無く、そっと息を吐く。
「真選組って大変なんだね。いつもありがとう。何かあげられたらいいんだけど……」
「ケーキは魅力的ですがね、今は一応仕事中なんです」
「いつも店内の見廻りも兼ねて、とか言って、焼き団子にタバスコトッピングして食べてたりするじゃない。ていうか、あげるなんて一言も言ってないんだけど」
「味見だ、味見。本当にあの名店の味かどうか俺の舌で確かめてやるって言ってんです」
「辛党の沖田くんに何が分かるって言うのよ」
いつの間にかケーキを食べさせることになっている。ケーキの箱を隠すように抱えるけど、沖田くんの視線は私の腕の中に固定されたままだ。
辛党の彼が一体なぜ、ここまで食べさせろと迫ってくるのか。なにか企んでいるんじゃないかと邪推したくなる。例えば、それこそタバスコをかけてくる、とか。
「辛党だからこそ、甘さには敏感なんでさァ。それに、仕事で寂しくクリスマスを過ごしたのは俺も同じで、ナマエとは仲間と言っても過言じゃねェ。同士のよしみで分け合ったってバチは当たりやせんぜ」
「うーん。そうなのかなぁ。何もしない?」
「そうそう。疑われるのは傷つきやすが、そんなに心配なら、ほら、食べさせてくだせェ」
あー、と開けた口を指差す。それっぽいことを言われて丸め込まれそうになっている気がする。だけど、ここまで来たら、食べさせてさっさと職務に戻らせた方が良さそうだ。
「はいはい、わかりました」
膝の上で箱を開ける。全て違う種類のケーキが綺麗に並んでいる。
「沖田くん、どれがいい?」
「なんでもいいですぜ。ナマエの一番をとるほど、俺も鬼じゃねぇんで」
「優しさは嬉しいんだけど、逆に難しい選択肢になっちゃった」
正直どれも美味しそうと思って買ったので、絶対に食べたいものとかも無かったりする。少し悩んで、定番のショートケーキを持ち上げる。
ケーキのフィルムを、半分ほど剥がしたところで手が止まった。どうやって彼に食べさせればいいのか。なぜか、口を開けて待っている沖田くんの意図を取るに、あーんしろって事なのだろうか。今周りに人がほとんど居ないとはいえ、何をさせようとしているんだこの男は。
頭を悩ませていると、持ち帰りの袋の中に、個包装のフォークを付けてもらっていたことを思い出した。そもそも私の手から食べさせるのもおかしな話だ。フォークを渡して、自分で食べてもらえばいい。
空いている手で袋の中を探っていると、沖田くんの手が重なった。
「んな、まどろっこしいことしなくても」
ケーキを持っていた方の手首を掴まれる。びっくりしながらもケーキを離さなかった私を褒めて欲しい。
「もう、危ないじゃない」
「こうした方が早ェ」
私の言葉を丸ごと無視した沖田くんは、私の手首を掴んだ。顔が近づいてくる。沖田くんの存在が、近い。
そのまま三角の先をひと口、かじった。
「こりゃ間違いねェですぜ。あの名店の味……」
「……行儀悪いよ、沖田くん」
なんと絞り出せた言葉は、彼を咎めるだけに終わった。とくとくと脈打つ音に気づかれませんように。
早く解放してもらわないといけない。手首に触れている沖田くんは、私の変化した鼓動のことなんて、とっくにお見通しだろう。
「ほら、もう丸々食べていいから、フォーク使って」
「脈が早ェ。緊張ですかい?緊張するようなことなんてありゃしないでしょう」
するっと添えられた指が手首を撫でてきた。そして、再び握られる。逃げられない。抑えられているせいか、早まる鼓動を私も自覚させられる。もっと意識してしまう。
「と、突然、あんな食べ方されたら誰でもびっくりするでしょ。だから、ドキドキしてるだけで」
ずいっと沖田くんの顔が覗き込むように近づいてきた。思わず逸らした顔を、重なっていた手に掴まれ、強制的に彼と目を合わせられる。
「ヘェ?ナマエはびっくりすると、顔が赤くなっちまうんですかィ。そりゃ良いことを知りやした」
ぶわっと頬に熱が集まっていく。人の困った顔を見て上機嫌になるなんて、なんて性悪だ。顔が良くないと許されない。そんな彼に惹かれ、絆されかけている私も大概かもしれない。
「そ、そう、良かったわね。……早く、離して」
「わかりやした」
手首を掴んでいた手が離れ、顔を掴んでいた手も離れていく。随分物わかりがいい。肌を撫でる風が、随分冷たく感じた。
そう思った瞬間、頬に一瞬の熱と柔らかい感覚。振り向くと、呼吸音すら聞こえるほど近くに沖田くんの顔があった。掴んでいたケーキが柔らかく形を変える。
「なっ、なっ……!?」
「ああ、すいやせん。ショートケーキの苺、食べてなかったと思いやして。美味しかったですぜ、クリスマスプレゼント。…… ナマエの熱も」
そんじゃ、と去っていく背中を、私はケーキ片手にしばらく眺めていることしか出来ない。
ドクドクと脈打つ鼓動はショートケーキを見る度に思い出してしまいそうで、最悪、と心にも無いことを呟いてしまうのであった。
2026.2.25
昨日、一昨日と仕事で、クリスマスらしいクリスマスが過ごせなかった。楽しそうにイベントを楽しむ人たちを見ていると、別に一緒に過ごす相手もいないのに少し憂鬱になってしまうのは空気に当てられたせいだろう。
すっかりお正月の空気に変わった街中でも、クリスマスはココ!と紹介される有名店のショーケースに並んだケーキたちは、まだクリスマスは終わってないと語りかけてきた。可愛らしいケーキたちは、少し値引きされて鎮座する。それを見つけたら、それはもうすることは一つだ。
「ケーキパーティー……!」
好きなだけ買う。これに尽きる。ある意味、自分へのクリスマスプレゼントだ。夜にひとりで開催すると決めたら、帰る足も軽くなる。
◾︎
「ナマエじゃないですか」
「沖田くん」
公園を通り過ぎようとして、ベンチに座っていた沖田くんに声を掛けられた。
浮かれた足で彼の前に立つ。トントンと叩かれて、沖田くんの隣に座る。
「仕事中?」
「まァ、そうですね。市民の皆様の安全を監視してるんでェ」
「ようはサボりってことね」
公園のベンチに座って見れるのは、夕焼けに染まった公園の風景だけだ。遊んでいる子どもも、散歩する人もいない。
「いやいや、これも立派な仕事でさァ。ちょうど今、箱の中を検分しなきゃいけなくなったんで」
「箱……?え、これのこと?」
膝の上に乗せたケーキの箱を指すと、沖田くんは頷いた。
「ちゃんとケーキ屋の名前が書いてあるんだけど」
「ああ、その店のケーキですかィ。クリスマスに特に人気だって聞きやしたが……」
「そう!奇跡的に残ってて、クリスマスも仕事で過ごした私へ、サンタさんからのプレゼントなんじゃないかって思ったの」
「ヘェ、なら、俺もプレゼントが欲しいもんです」
「真選組もクリスマスに休みってないんだ」
「イベント事は人が集まって行動することが多いんで、攘夷浪士たちがコソコソ紛れて活動してたり、それこそ羽目外しすぎた馬鹿どもを制圧したり、色々やることはあるんですぜ」
沖田くんがクリスマスも仕事していたと知って、安堵感が広がる。人の不幸を喜んでいるみたいな気持ちになってしまった。チラッと沖田くんを見る。特に気にした様子は無く、そっと息を吐く。
「真選組って大変なんだね。いつもありがとう。何かあげられたらいいんだけど……」
「ケーキは魅力的ですがね、今は一応仕事中なんです」
「いつも店内の見廻りも兼ねて、とか言って、焼き団子にタバスコトッピングして食べてたりするじゃない。ていうか、あげるなんて一言も言ってないんだけど」
「味見だ、味見。本当にあの名店の味かどうか俺の舌で確かめてやるって言ってんです」
「辛党の沖田くんに何が分かるって言うのよ」
いつの間にかケーキを食べさせることになっている。ケーキの箱を隠すように抱えるけど、沖田くんの視線は私の腕の中に固定されたままだ。
辛党の彼が一体なぜ、ここまで食べさせろと迫ってくるのか。なにか企んでいるんじゃないかと邪推したくなる。例えば、それこそタバスコをかけてくる、とか。
「辛党だからこそ、甘さには敏感なんでさァ。それに、仕事で寂しくクリスマスを過ごしたのは俺も同じで、ナマエとは仲間と言っても過言じゃねェ。同士のよしみで分け合ったってバチは当たりやせんぜ」
「うーん。そうなのかなぁ。何もしない?」
「そうそう。疑われるのは傷つきやすが、そんなに心配なら、ほら、食べさせてくだせェ」
あー、と開けた口を指差す。それっぽいことを言われて丸め込まれそうになっている気がする。だけど、ここまで来たら、食べさせてさっさと職務に戻らせた方が良さそうだ。
「はいはい、わかりました」
膝の上で箱を開ける。全て違う種類のケーキが綺麗に並んでいる。
「沖田くん、どれがいい?」
「なんでもいいですぜ。ナマエの一番をとるほど、俺も鬼じゃねぇんで」
「優しさは嬉しいんだけど、逆に難しい選択肢になっちゃった」
正直どれも美味しそうと思って買ったので、絶対に食べたいものとかも無かったりする。少し悩んで、定番のショートケーキを持ち上げる。
ケーキのフィルムを、半分ほど剥がしたところで手が止まった。どうやって彼に食べさせればいいのか。なぜか、口を開けて待っている沖田くんの意図を取るに、あーんしろって事なのだろうか。今周りに人がほとんど居ないとはいえ、何をさせようとしているんだこの男は。
頭を悩ませていると、持ち帰りの袋の中に、個包装のフォークを付けてもらっていたことを思い出した。そもそも私の手から食べさせるのもおかしな話だ。フォークを渡して、自分で食べてもらえばいい。
空いている手で袋の中を探っていると、沖田くんの手が重なった。
「んな、まどろっこしいことしなくても」
ケーキを持っていた方の手首を掴まれる。びっくりしながらもケーキを離さなかった私を褒めて欲しい。
「もう、危ないじゃない」
「こうした方が早ェ」
私の言葉を丸ごと無視した沖田くんは、私の手首を掴んだ。顔が近づいてくる。沖田くんの存在が、近い。
そのまま三角の先をひと口、かじった。
「こりゃ間違いねェですぜ。あの名店の味……」
「……行儀悪いよ、沖田くん」
なんと絞り出せた言葉は、彼を咎めるだけに終わった。とくとくと脈打つ音に気づかれませんように。
早く解放してもらわないといけない。手首に触れている沖田くんは、私の変化した鼓動のことなんて、とっくにお見通しだろう。
「ほら、もう丸々食べていいから、フォーク使って」
「脈が早ェ。緊張ですかい?緊張するようなことなんてありゃしないでしょう」
するっと添えられた指が手首を撫でてきた。そして、再び握られる。逃げられない。抑えられているせいか、早まる鼓動を私も自覚させられる。もっと意識してしまう。
「と、突然、あんな食べ方されたら誰でもびっくりするでしょ。だから、ドキドキしてるだけで」
ずいっと沖田くんの顔が覗き込むように近づいてきた。思わず逸らした顔を、重なっていた手に掴まれ、強制的に彼と目を合わせられる。
「ヘェ?ナマエはびっくりすると、顔が赤くなっちまうんですかィ。そりゃ良いことを知りやした」
ぶわっと頬に熱が集まっていく。人の困った顔を見て上機嫌になるなんて、なんて性悪だ。顔が良くないと許されない。そんな彼に惹かれ、絆されかけている私も大概かもしれない。
「そ、そう、良かったわね。……早く、離して」
「わかりやした」
手首を掴んでいた手が離れ、顔を掴んでいた手も離れていく。随分物わかりがいい。肌を撫でる風が、随分冷たく感じた。
そう思った瞬間、頬に一瞬の熱と柔らかい感覚。振り向くと、呼吸音すら聞こえるほど近くに沖田くんの顔があった。掴んでいたケーキが柔らかく形を変える。
「なっ、なっ……!?」
「ああ、すいやせん。ショートケーキの苺、食べてなかったと思いやして。美味しかったですぜ、クリスマスプレゼント。…… ナマエの熱も」
そんじゃ、と去っていく背中を、私はケーキ片手にしばらく眺めていることしか出来ない。
ドクドクと脈打つ鼓動はショートケーキを見る度に思い出してしまいそうで、最悪、と心にも無いことを呟いてしまうのであった。
2026.2.25