山崎退
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「バイト行きたくない。助けて、アンパ〇マン」
「アンパ〇マンじゃねーよ」
机に突っ伏して嘆く彼女の後頭部を見ながら、あんパンをかじる。食べ進める俺に薄情者と呻き声が聞こえた。
いつもより早く学校が終わる終業式の日。今年は丁度クリスマスイブで、パラパラと雨も降っている。窓ガラスを伝う雨粒に、せめて雪なら良いのにと思う。理想の前夜祭とはならない日だ。
「傘も忘れるし、イブにバイトだし」
「バイトは知らないけど……。傘は朝に天気予報でやってたでしょ。ニュースアプリとかで通知来ない?」
「バタバタしすぎて見れてないよ〜。ニュースアプリは通知オフ」
「意味無いね」
甘い餡子の香りにかぶりつく。パッと明るくなった俺のスマホは、今日の十九時頃まで雨だと教えてくれる。
「あーあ。シフト出す時は働く気満々なのに、バイトの日になると嫌になるのなんでだろうね」
ようやく顔を上げたナマエちゃんは、前の席で不機嫌さを隠さず座っている。
「休みにしなかったの?」
「予定無かったし、長谷川くんとクリスマスに稼ごう同盟組んじゃった」
「ふうん」
そういえば先月の終わりに、そんな話を目の前でしていたような。丸めたバイト情報誌を片手に、空いた手で彼女と握手していた。
そこで思い出した。予定が無いことに安堵したけど、彼女に触れる手にメラっとした嫉妬の炎が揺れて、記憶を奥底に沈めていたことに。アンパンを食べる手が止まって、重たいため息が出る。
「どうしたの?」
「……ううん、なんでもない。ところでバイトは何時に終わるの?」
「今日は二十時まで。忙しく、なければ……」
遠い目をする彼女の顔から悲壮感が漂う。イベント事の時は、めっさ人が来るのだと言っていたのを思い出す。その影響で退勤時間がズレることもまあ、あるんだろう。今日程バイトに行きたくない気持ちもなんとなく分かる。
だから、という訳でもないけど、こんな日に、いや、毎日頑張ってるナマエちゃんにご褒美があってもいいんじゃないか。
今日、クリスマスイブに、彼氏でも無いのに前もって予定を入れるのはおこがましいけど、当日に空いてるところを予約するのはありだろう。
「それならその時間に迎えに行くよ」
「え……。えっ!?」
ガタンッと椅子が大袈裟に驚く。ぱちぱちと無言で瞬きを繰り返す彼女の反応に、不安が胸を撫でる。断られたら……いや、断るのもナマエちゃんの自由だけど、受けるショックはデカい。
ゆっくりと座り直す彼女を待つ間、食べ終わった袋を手持ち無沙汰に畳んでみたりする。
「傘、忘れたんでしょ。だから、キミのバイト先まで送って行くし、帰る頃に迎えに行く」
「アンパ〇マンじゃなくて、サンタクロースだ」
「……ナマエちゃん限定のね」
「ありがとう! よし、やる気出てきた」
さっきまでの不機嫌さはもう無く、晴れやかな笑みが浮かんでいた。それに釣られて俺も口角が上がる。
バイトが終わった帰りにコンビニでも寄って、温かい飲み物とチキンを手に少し立ち話して帰ろう。彼女のバイトが終わる頃にはきっと、雨は止んでるだろうから。
2025.12.24
「アンパ〇マンじゃねーよ」
机に突っ伏して嘆く彼女の後頭部を見ながら、あんパンをかじる。食べ進める俺に薄情者と呻き声が聞こえた。
いつもより早く学校が終わる終業式の日。今年は丁度クリスマスイブで、パラパラと雨も降っている。窓ガラスを伝う雨粒に、せめて雪なら良いのにと思う。理想の前夜祭とはならない日だ。
「傘も忘れるし、イブにバイトだし」
「バイトは知らないけど……。傘は朝に天気予報でやってたでしょ。ニュースアプリとかで通知来ない?」
「バタバタしすぎて見れてないよ〜。ニュースアプリは通知オフ」
「意味無いね」
甘い餡子の香りにかぶりつく。パッと明るくなった俺のスマホは、今日の十九時頃まで雨だと教えてくれる。
「あーあ。シフト出す時は働く気満々なのに、バイトの日になると嫌になるのなんでだろうね」
ようやく顔を上げたナマエちゃんは、前の席で不機嫌さを隠さず座っている。
「休みにしなかったの?」
「予定無かったし、長谷川くんとクリスマスに稼ごう同盟組んじゃった」
「ふうん」
そういえば先月の終わりに、そんな話を目の前でしていたような。丸めたバイト情報誌を片手に、空いた手で彼女と握手していた。
そこで思い出した。予定が無いことに安堵したけど、彼女に触れる手にメラっとした嫉妬の炎が揺れて、記憶を奥底に沈めていたことに。アンパンを食べる手が止まって、重たいため息が出る。
「どうしたの?」
「……ううん、なんでもない。ところでバイトは何時に終わるの?」
「今日は二十時まで。忙しく、なければ……」
遠い目をする彼女の顔から悲壮感が漂う。イベント事の時は、めっさ人が来るのだと言っていたのを思い出す。その影響で退勤時間がズレることもまあ、あるんだろう。今日程バイトに行きたくない気持ちもなんとなく分かる。
だから、という訳でもないけど、こんな日に、いや、毎日頑張ってるナマエちゃんにご褒美があってもいいんじゃないか。
今日、クリスマスイブに、彼氏でも無いのに前もって予定を入れるのはおこがましいけど、当日に空いてるところを予約するのはありだろう。
「それならその時間に迎えに行くよ」
「え……。えっ!?」
ガタンッと椅子が大袈裟に驚く。ぱちぱちと無言で瞬きを繰り返す彼女の反応に、不安が胸を撫でる。断られたら……いや、断るのもナマエちゃんの自由だけど、受けるショックはデカい。
ゆっくりと座り直す彼女を待つ間、食べ終わった袋を手持ち無沙汰に畳んでみたりする。
「傘、忘れたんでしょ。だから、キミのバイト先まで送って行くし、帰る頃に迎えに行く」
「アンパ〇マンじゃなくて、サンタクロースだ」
「……ナマエちゃん限定のね」
「ありがとう! よし、やる気出てきた」
さっきまでの不機嫌さはもう無く、晴れやかな笑みが浮かんでいた。それに釣られて俺も口角が上がる。
バイトが終わった帰りにコンビニでも寄って、温かい飲み物とチキンを手に少し立ち話して帰ろう。彼女のバイトが終わる頃にはきっと、雨は止んでるだろうから。
2025.12.24