志村新八
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3Z軸
煌びやかなネオンが夜を迎えた街を明るく照らす。吐く息が白くて、頬に当たる空気が身体の熱を奪っていってしまう。身震いしながら首に巻いたマフラーに顔をうずめた。
「寒すぎる」
もごもごと言葉はマフラーに吸い込まれていく。自身を抱きしめながら、通り過ぎていく人々を眺める。スマホを触るのも指先が冷えすぎてて無理だ。カイロは持ってくるのを忘れてしまった。慌てて出てくるとロクなことが無い、と心の中でため息をつく。
いや、慌てなくても時間はたっぷりあった。待ち合わせ時間を考えると、何本か電車を遅くしたって良いぐらいだ。それでも、約束の時間が迫るにつれ、そわそわしてしまい、落ち着かなくて家を飛び出てしまった。
寒さで少しは落ち着くかと思ったが、風が吹く事に、髪型は変じゃないか、とか、た忘れ物は、ああ、カイロ忘れた、手袋も、となってしまい、結局落ち着くどころではないなかった。それでも、バッグと一緒にプレゼントを忘れなかっただけ、良かったと思おう。
待ち合わせ場所の広場は、真ん中に備えられた時計も含め、クリスマスモチーフの電飾で飾られている。そのため、友人や恋人同士の待ち合わせの人々も集まる。寒さを凌ぐため、ぎゅっと密着し合う恋人同士を見て、そわそわした気持ちがマックスにまで高まる。広場の時計は約束の時間の十分前を指している。
「ナマエさん!遅くなってすみません!!」
息を切らしながらやってきた学ランの少年――新八くんは私の前に立つなり頭を下げる。わざわざ走って来てくれたんだ。
「ううん、待ってないよ。なんなら時間より少し早いくらいだよ」
「で、でも、ナマエさんは多分ずっと待っててくれてましたよね……。鼻、少し赤くなってます」
顔を上げながら、私の顔がしっかりと目に入っていたらしい。気にしないで、と格好つけたのが少し恥ずかしくなる。
「ほんと、気にしないでいいよ。……楽しみすぎてびっくりするくらい早く来ちゃっただけ」
パクパクと口を開閉させる新八くんは、きっと心の中で困惑の絶叫をかましているところだろう。長い付き合いの中で、なんとなくわかる。煌びやかな電飾に照らされた、真っ赤になって困惑する顔を眺めているのもいいけど、クリスマスの夜はそれを堪能する時間も残してくれない。
「それは、僕だって思ってます。だからこそ、その」
なにかお詫びを、と続く言葉に真面目だなと思った。そういうところに惹かれたんだよなあ。不安げに私を見つめる瞳は、私の言葉を今か今かと待ち望んでいる。うーんと両腕を前で組み、頭を働かせる。
「んー、それなら、1回だけ、ちゃん付けで呼んで欲しいな」
「ちゃん付け……?」
「ほら、私たちって今は同じ高校3年生って設定でしょ?」
「設定って……。まあ、そうですけど……」
「ずっと、いいなぁって思ってたんだ。神楽ちゃんやお通ちゃんが、ちゃん付けで呼ばれてるの」
「そうなんですか?」
新八くんの言葉に大きく何度も頷く。どういう風に呼ばれても、新八くんから名前で呼ばれるのは好きだ。でも、たまには違う呼ばれ方もされたい、なんて小さすぎるワガママはこういう時に叶ってもいいんじゃないかって思う。
「わかりました。……って、そんなに見られると呼びづらいです」
「あ、ごめんね」
口では謝りながら、新八くんから目を離すことは出来なかった。じっと見つめる私とは反対に、彼の目はレンズの奥で泳いでいる。もういっそバタフライだ。それでも、決心したように大きく息を吸った。
「ナマエちゃん」
新八くんの声が柔らかく私の心を包む。真っ赤な顔をして、でも目はしっかりと私を見ている。その事実にぎゅうっと、でもふわふわとした感覚。彼といると覚えておきたい色々な感情を教えてくれる。
「新八くん!」
浮ついた心のままに腕を組み、新八くんと密着する。軽くよろけながらも、直ぐにしっかりと体勢が戻るのはさすが、男の子。
「ちょ、えェエエエエ!?ナマエさん!?」
正面から横になった彼の顔を見上げる。煌びやかなイルミネーションの光が赤くなった頬を照らした。私もきっと同じくらい赤くなっている。
「呼んでくれてありがとう、新八くん」
「……いえ、僕も呼べて良かったというか」
もごもごと呟く新八くんの腕がごそごそと動いた。勢いで腕を組んだのが嫌だったのかな。周りのカップルもやってるし、寒いからくっついている方が良い。
そんな理由を並べようと口を開いた時、私の手が大きな手に捕まった。体温が残る暖かい手は探るように、こわごわと指を絡めて包まれる。
「さ、寒いんで、暖めるならこれが良いって思っただけです。別に浮かれてるとかそういう訳じゃっ!?」
絡められた指に力を入れて、私からも彼を捕まえた。力を込められるとは思ってもみなかった、とまん丸の目が語っている。ちょっと心外だ。
「うんうん、これで暖かいよ。それじゃあ、行こ」
「は、はい!」
浮かれる気持ちを隠さずに、広場から繋がる遊歩道へ歩き出す。ぎゅうぎゅうと体を寄せても、ガチガチに固まる体は拒否せず受け入れてくれる。寒さなんてとっくに吹き飛んだ。
遊歩道横に、規則正しく植えられている木々はオレンジや白に光り、その下に置かれたランプの光が眩しい。低木には青や紫、黄色などの電飾が葉を照らす。幻想的な風景を作り出すイルミネーションを堪能したいから、いつも以上に足取りがゆっくりになっていく。
「やっぱり良いなぁ、イルミネーション。キラキラしてるもの見るの好きなんだ」
「そうなんですか?」
「うん。言ったこと無かったっけ?」
「初耳です。……それだったら、あなたともっとこういうイベントに来てれば良かった」
しんみりとした呼吸を感じて新八くん見上げた。メガネのレンズにイルミネーションの光の点が反射している。なんとなく、今のことじゃない気がした。ぎゅっと手を握り直す。
「そう?夜の提灯の灯りだって、イルミネーションみたいなものだよ。……新八くんと歩いて帰ってた時間が、実は大好きだったんだ」
「……僕もです」
力強く握り返される。それと一緒に聞こえた声は、耳をすまさないといけないくらいの大きさだ。でも、それだけで心からぽかぽかと暖かくなっていった。
話しながらたどり着いたメインの巨大ツリーの周辺には、たくさんの人が集まっていた。先程の遊歩道に比べれば賑やかな声が聞こえる。だけど、冷たい空気がそれを遮断するかのように、新八くんとの空気は穏やかだ。
「綺麗だね」
「うん、ずっと見ていられそう」
弾む声に返事をしながら、私の目は新八くんの横顔とイルミネーションの間で揺れていた。夜にはっきりと輝くイルミネーションの光。それが織り成すアートに夢中になる彼の顔にどうしようもなく惹かれた。
フィナーレを迎えた瞬間、パチッと目が合う。白い息が私と新八くんの間で消えてなくなる。呼吸を感じるくらいに顔が近くて、鼓動がドクドクと徐々に早くなっていく。
「すっごい綺麗だったね!」
誰かの声にハッと意識が戻った。目が合っていたほんの一瞬が、とても長く感じた。痺れるような余韻が胸の中に残る。
「そ、そうだ、写真!写真、撮らない?」
制服のポケットからスマホを取り出す。
「そうですね!撮りましょう!」
遊歩道の端に寄ってカメラアプリをタップする。光り輝くツリーを背景にして、二人並んで画面に映る。こんなに寄り添って撮るのは初めてかもしれない。
「それじゃあ、撮れたの共有するね」
操作がしづらいので、一度新八くんから離れる。途端、寒さが身に染みて、身体が震えた。カメラロールに並ぶ写真をタップしながら、思わず笑いを堪える。新八くん、表情がカチコチだ。可愛い。
凍える手でスマホを操作していると、シャッター音がした気がした。顔を上げると、新八くんが慌てたようにスマホを下げる。
「今、撮ってた……?」
「すいません!……でも、ナマエさんがとっても素敵に見えたから、今の瞬間を撮っておきたかったんです。」
眉を下げて頬を掻く彼がそんな事を言うものだから、怒るものも怒れない。まあ、最初から怒ってもいないけど。ただ、写り具合だけ気になる。せっかく彼の手元に残るなら、どのタイミングで見ても可愛いって思ってもらえるものがいい。
「うん、それなら良し。でも写り具合だけ確認させて?」
「はい。ちょっと待っててください」
スマホに目を移す新八くんを見て、今だ、と彼を撮る。小さな仕返しだ。
「今、撮りました?」
「はい、チーズ」
「言うの遅すぎでしょうが!……まあ、僕も撮ったからおあいこですね」
顔を見合わせて二人で笑い合う。 煌めく光に負けないくらい、今、この瞬間が輝いている。全部をとっておきたいと思うのは贅沢だろうか。
「はー、ほんと楽しい!新八くんと一緒に来れて良かった」
「僕もです。……あっ!忘れるところだった」
新八くんはバッグの中から紙袋を取り出した。クリスマスデザインのそれは私に差し出される。
「これ、ナマエさんにクリスマスプレゼントです。大したものじゃないんですけど……」
「ありがとう!なんだろうなぁ。今ゆっくり開けられないのが悔しい」
「あはは。人、多くなってきましたもんね」
周りには写真を撮る人々が多くなってきた。立ち止まったままなのも良くない。でも帰ってからも楽しみがあるなんて、今日は本当に最高の日だ。
「私も新八くんに」
持っていた、これまたクリスマス限定デザインの紙袋を渡す。
「あ、ありがとうございます!」
どういたしまして、と返しながら私の目には、赤く染った頬が映っていた。あたふたとしながら受け取る姿を見ながら、ドクドクと甘く打つ鼓動がバレないように、マフラーの位置を直すフリをする。
「……じゃあ、そろそろ移動しようか」
「はい。そういえば、この先に屋台がありましたよね」
誘導するように、彼の手が私の手を引く。暖かい手に包まれて、口の端が緩んで仕方がない。
煌びやかな光が行く先を照らす。さっき直したはずのマフラーの位置をまた戻すフリをしないといけなくなってしまった。
2025.11.28
12月14日開催
恋知る侍に悪い奴はいない3-WEB出張版-
アンソロジー企画「クリスマス」
煌びやかなネオンが夜を迎えた街を明るく照らす。吐く息が白くて、頬に当たる空気が身体の熱を奪っていってしまう。身震いしながら首に巻いたマフラーに顔をうずめた。
「寒すぎる」
もごもごと言葉はマフラーに吸い込まれていく。自身を抱きしめながら、通り過ぎていく人々を眺める。スマホを触るのも指先が冷えすぎてて無理だ。カイロは持ってくるのを忘れてしまった。慌てて出てくるとロクなことが無い、と心の中でため息をつく。
いや、慌てなくても時間はたっぷりあった。待ち合わせ時間を考えると、何本か電車を遅くしたって良いぐらいだ。それでも、約束の時間が迫るにつれ、そわそわしてしまい、落ち着かなくて家を飛び出てしまった。
寒さで少しは落ち着くかと思ったが、風が吹く事に、髪型は変じゃないか、とか、た忘れ物は、ああ、カイロ忘れた、手袋も、となってしまい、結局落ち着くどころではないなかった。それでも、バッグと一緒にプレゼントを忘れなかっただけ、良かったと思おう。
待ち合わせ場所の広場は、真ん中に備えられた時計も含め、クリスマスモチーフの電飾で飾られている。そのため、友人や恋人同士の待ち合わせの人々も集まる。寒さを凌ぐため、ぎゅっと密着し合う恋人同士を見て、そわそわした気持ちがマックスにまで高まる。広場の時計は約束の時間の十分前を指している。
「ナマエさん!遅くなってすみません!!」
息を切らしながらやってきた学ランの少年――新八くんは私の前に立つなり頭を下げる。わざわざ走って来てくれたんだ。
「ううん、待ってないよ。なんなら時間より少し早いくらいだよ」
「で、でも、ナマエさんは多分ずっと待っててくれてましたよね……。鼻、少し赤くなってます」
顔を上げながら、私の顔がしっかりと目に入っていたらしい。気にしないで、と格好つけたのが少し恥ずかしくなる。
「ほんと、気にしないでいいよ。……楽しみすぎてびっくりするくらい早く来ちゃっただけ」
パクパクと口を開閉させる新八くんは、きっと心の中で困惑の絶叫をかましているところだろう。長い付き合いの中で、なんとなくわかる。煌びやかな電飾に照らされた、真っ赤になって困惑する顔を眺めているのもいいけど、クリスマスの夜はそれを堪能する時間も残してくれない。
「それは、僕だって思ってます。だからこそ、その」
なにかお詫びを、と続く言葉に真面目だなと思った。そういうところに惹かれたんだよなあ。不安げに私を見つめる瞳は、私の言葉を今か今かと待ち望んでいる。うーんと両腕を前で組み、頭を働かせる。
「んー、それなら、1回だけ、ちゃん付けで呼んで欲しいな」
「ちゃん付け……?」
「ほら、私たちって今は同じ高校3年生って設定でしょ?」
「設定って……。まあ、そうですけど……」
「ずっと、いいなぁって思ってたんだ。神楽ちゃんやお通ちゃんが、ちゃん付けで呼ばれてるの」
「そうなんですか?」
新八くんの言葉に大きく何度も頷く。どういう風に呼ばれても、新八くんから名前で呼ばれるのは好きだ。でも、たまには違う呼ばれ方もされたい、なんて小さすぎるワガママはこういう時に叶ってもいいんじゃないかって思う。
「わかりました。……って、そんなに見られると呼びづらいです」
「あ、ごめんね」
口では謝りながら、新八くんから目を離すことは出来なかった。じっと見つめる私とは反対に、彼の目はレンズの奥で泳いでいる。もういっそバタフライだ。それでも、決心したように大きく息を吸った。
「ナマエちゃん」
新八くんの声が柔らかく私の心を包む。真っ赤な顔をして、でも目はしっかりと私を見ている。その事実にぎゅうっと、でもふわふわとした感覚。彼といると覚えておきたい色々な感情を教えてくれる。
「新八くん!」
浮ついた心のままに腕を組み、新八くんと密着する。軽くよろけながらも、直ぐにしっかりと体勢が戻るのはさすが、男の子。
「ちょ、えェエエエエ!?ナマエさん!?」
正面から横になった彼の顔を見上げる。煌びやかなイルミネーションの光が赤くなった頬を照らした。私もきっと同じくらい赤くなっている。
「呼んでくれてありがとう、新八くん」
「……いえ、僕も呼べて良かったというか」
もごもごと呟く新八くんの腕がごそごそと動いた。勢いで腕を組んだのが嫌だったのかな。周りのカップルもやってるし、寒いからくっついている方が良い。
そんな理由を並べようと口を開いた時、私の手が大きな手に捕まった。体温が残る暖かい手は探るように、こわごわと指を絡めて包まれる。
「さ、寒いんで、暖めるならこれが良いって思っただけです。別に浮かれてるとかそういう訳じゃっ!?」
絡められた指に力を入れて、私からも彼を捕まえた。力を込められるとは思ってもみなかった、とまん丸の目が語っている。ちょっと心外だ。
「うんうん、これで暖かいよ。それじゃあ、行こ」
「は、はい!」
浮かれる気持ちを隠さずに、広場から繋がる遊歩道へ歩き出す。ぎゅうぎゅうと体を寄せても、ガチガチに固まる体は拒否せず受け入れてくれる。寒さなんてとっくに吹き飛んだ。
遊歩道横に、規則正しく植えられている木々はオレンジや白に光り、その下に置かれたランプの光が眩しい。低木には青や紫、黄色などの電飾が葉を照らす。幻想的な風景を作り出すイルミネーションを堪能したいから、いつも以上に足取りがゆっくりになっていく。
「やっぱり良いなぁ、イルミネーション。キラキラしてるもの見るの好きなんだ」
「そうなんですか?」
「うん。言ったこと無かったっけ?」
「初耳です。……それだったら、あなたともっとこういうイベントに来てれば良かった」
しんみりとした呼吸を感じて新八くん見上げた。メガネのレンズにイルミネーションの光の点が反射している。なんとなく、今のことじゃない気がした。ぎゅっと手を握り直す。
「そう?夜の提灯の灯りだって、イルミネーションみたいなものだよ。……新八くんと歩いて帰ってた時間が、実は大好きだったんだ」
「……僕もです」
力強く握り返される。それと一緒に聞こえた声は、耳をすまさないといけないくらいの大きさだ。でも、それだけで心からぽかぽかと暖かくなっていった。
話しながらたどり着いたメインの巨大ツリーの周辺には、たくさんの人が集まっていた。先程の遊歩道に比べれば賑やかな声が聞こえる。だけど、冷たい空気がそれを遮断するかのように、新八くんとの空気は穏やかだ。
「綺麗だね」
「うん、ずっと見ていられそう」
弾む声に返事をしながら、私の目は新八くんの横顔とイルミネーションの間で揺れていた。夜にはっきりと輝くイルミネーションの光。それが織り成すアートに夢中になる彼の顔にどうしようもなく惹かれた。
フィナーレを迎えた瞬間、パチッと目が合う。白い息が私と新八くんの間で消えてなくなる。呼吸を感じるくらいに顔が近くて、鼓動がドクドクと徐々に早くなっていく。
「すっごい綺麗だったね!」
誰かの声にハッと意識が戻った。目が合っていたほんの一瞬が、とても長く感じた。痺れるような余韻が胸の中に残る。
「そ、そうだ、写真!写真、撮らない?」
制服のポケットからスマホを取り出す。
「そうですね!撮りましょう!」
遊歩道の端に寄ってカメラアプリをタップする。光り輝くツリーを背景にして、二人並んで画面に映る。こんなに寄り添って撮るのは初めてかもしれない。
「それじゃあ、撮れたの共有するね」
操作がしづらいので、一度新八くんから離れる。途端、寒さが身に染みて、身体が震えた。カメラロールに並ぶ写真をタップしながら、思わず笑いを堪える。新八くん、表情がカチコチだ。可愛い。
凍える手でスマホを操作していると、シャッター音がした気がした。顔を上げると、新八くんが慌てたようにスマホを下げる。
「今、撮ってた……?」
「すいません!……でも、ナマエさんがとっても素敵に見えたから、今の瞬間を撮っておきたかったんです。」
眉を下げて頬を掻く彼がそんな事を言うものだから、怒るものも怒れない。まあ、最初から怒ってもいないけど。ただ、写り具合だけ気になる。せっかく彼の手元に残るなら、どのタイミングで見ても可愛いって思ってもらえるものがいい。
「うん、それなら良し。でも写り具合だけ確認させて?」
「はい。ちょっと待っててください」
スマホに目を移す新八くんを見て、今だ、と彼を撮る。小さな仕返しだ。
「今、撮りました?」
「はい、チーズ」
「言うの遅すぎでしょうが!……まあ、僕も撮ったからおあいこですね」
顔を見合わせて二人で笑い合う。 煌めく光に負けないくらい、今、この瞬間が輝いている。全部をとっておきたいと思うのは贅沢だろうか。
「はー、ほんと楽しい!新八くんと一緒に来れて良かった」
「僕もです。……あっ!忘れるところだった」
新八くんはバッグの中から紙袋を取り出した。クリスマスデザインのそれは私に差し出される。
「これ、ナマエさんにクリスマスプレゼントです。大したものじゃないんですけど……」
「ありがとう!なんだろうなぁ。今ゆっくり開けられないのが悔しい」
「あはは。人、多くなってきましたもんね」
周りには写真を撮る人々が多くなってきた。立ち止まったままなのも良くない。でも帰ってからも楽しみがあるなんて、今日は本当に最高の日だ。
「私も新八くんに」
持っていた、これまたクリスマス限定デザインの紙袋を渡す。
「あ、ありがとうございます!」
どういたしまして、と返しながら私の目には、赤く染った頬が映っていた。あたふたとしながら受け取る姿を見ながら、ドクドクと甘く打つ鼓動がバレないように、マフラーの位置を直すフリをする。
「……じゃあ、そろそろ移動しようか」
「はい。そういえば、この先に屋台がありましたよね」
誘導するように、彼の手が私の手を引く。暖かい手に包まれて、口の端が緩んで仕方がない。
煌びやかな光が行く先を照らす。さっき直したはずのマフラーの位置をまた戻すフリをしないといけなくなってしまった。
2025.11.28
12月14日開催
恋知る侍に悪い奴はいない3-WEB出張版-
アンソロジー企画「クリスマス」