沖田総悟
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祭りの提灯は、かぶき町の店に連なる提灯より明るく感じる。屋台や、頭上高くに備え付けられた電飾もあるだろうが、一番は祭りを楽しむ喧騒だと思った。
じっとりと暑い夜はかき氷がよく売れる。定番の味から、少し変わった味が揃う、うちも例外ではない。途切れそうで途切れない列に手を動かしながら、隙をついては周りの屋台を見渡す。沖田くん、いないのかな。
真選組が今日の祭りで見廻りをしているのは、何度も屋台の前を真選組の人たちが行き来していたから知っている。それなら、沖田くんのこともひと目見れるのではないかと思った。だけど、期待とは裏腹にあの茶髪頭は見当たらない。
やっと列が落ち着き、店長と一息つく。もう一人のスタッフの子は少しの休憩で祭りを回っている。
沖田くんも忙しいよね。一応、出店場所は教えたけど、彼も仕事だ。会えないのは残念だけど仕方がない。
「沖田くん来ないのかなぁ」
「俺がなんだって」
「わっ、お、沖田くん……!」
台の向こう側に沖田くんが立っていた。いつの間に。驚きでバクバクと鳴る心臓の上に手を重ねる。
「そんな驚かれたら悲しいや」
肩をすくめる彼は、悲しいと言う割に表情ひとつ変えない。
「急に来られたらびっくりしますよ。それに悲しそうには見えないんですけど……」
「ま、冗談はさておき、かき氷ひとつ。味は……ナマエ好きな味ありやすか」
「私?うーん……イチゴかな」
「ンじゃ、それで」
シャリシャリ氷の山を作りながら心臓を落ち着かせる。ポロッと出た言葉を聞かれたのが恥ずかしい。シロップをかけ、更に氷の山を高くする。仕上げのシロップで完成だ。
「沖田くん、どうぞ」
「どーも」
スプーンストローをさして渡すと、沖田くんはすぐに一口食べて、甘いとボヤいた。
今お客さんいないし、せっかくなら回ってきなよと店長の粋な計らいで、少しだけど沖田くんと祭りを回れることになった。とっても嬉しいんだけど、すれ違う人たちの視線がグサグサと突き刺さる。
「あの、なんだか目立ってませんか」
「そりゃ、真選組と歩いてたら注目の的ですぜ」
「確かに、そうですよね」
見慣れすぎて何も思わなかったけど、そういえば沖田くんは隊服を来ている。一般人が隊士と一緒に歩いていたら何事かと思われるのは当然だ。
「ま、今年は勘弁してくだせェ。……牽制になって、こっちとしては有難いくらいなんで」
「牽制……?」
「そ、アンタは堂々としてりゃいいんです。……いっそ首輪でも付けて散歩します?」
首の後ろを熱を持った指でするっと撫でられる。首輪が巻き付いたような感覚と、くすぐったさに思わず声が出た。
「ひっ……、え、遠慮します。そりゃ、ある意味目を逸らされるかもしれませんけど」
目を合わせたら確実にヤバいと思わせるには充分すぎるけど、それをして歩く度胸なんてあるはずもない。必死に首を振る私に、残念、と冗談なのか本気なのか分からない言葉が返ってきた。
私の目にヨーヨー釣りと書かれた屋台が見えた。
「あ、ヨーヨー釣り」
小さい頃はよく両親にねだって水風船のヨーヨーを釣っていた。こよりがちぎれないように釣るドキドキ感や、とれたヨーヨーを歩きながら遊ぶのも好きだったな、と記憶が蘇る。
「欲しいんですかィ」
「うん。赤いやつが欲しいな」
赤地に白と水色で表面に円が描かれたヨーヨーを指差す。
「ナマエ、赤、好きでしたっけ」
オヤジ、一回分、と釣り針を受け取り、しゃがむ彼の隣に並ぶ。
「これからイベントが増えるし、真選組の仕事、忙しくなるんでしょ?だからしばらくはヨーヨーを沖田くんだと思おうかなーっておもったの。赤は沖田くんのアイマスクと同じ色だし」
「……なーんか、気に食わねェ」
じとっと不満気な目をされてしまった。寂しさも紛らわせるし、童心に帰って遊べるし、いい案だなと思ったんだけど彼はどうやら違うらしい。
「そう?」
「水風船なんて、数日もすれば萎んじまう。ナマエの心がそれと同じになっちまったら困りやす」
そう言う沖田くんの声が遠くに聞こえる。
ドクドクと苦しいほどに心臓が歓喜に跳ねる。そんなことを考えてくれていたんだ。私の沖田くんへの気持ちが萎んだり、無くなったりすることなんて無いのに。
沖田くんの手際は見事で、あっという間に、取れやしたぜ、と要望通りの赤いヨーヨーを見せてくれた。
「割らねェよう大切に扱ってくださいよ」
「うん、ありがとう」
指に輪ゴムを通し、ふわふわと上下する水風船の感覚に、これこれと幼少期のワクワク感を思い出す。
「……そういえば、ヨーヨー釣りに使われる水風船って、割れづらくなってるんだって」
「ヘェ」
「だから、私の沖田くんへの気持ちも簡単に壊れたりしないよ」
「……そうですかィ」
顔がほんのり赤く見えたのは、祭りの明かりのせいか、それとも。
「見んな」
「ふふ、はーい」
滅多に無い機会だから本当は怒られても見たい。だけど、行き交う人が多くなり、よそ見は厳禁な状態になってしまった。
ヨーヨーが上下して中の水が揺れる。膨らんだ水風船が私の心なら、沖田くんへの気持ちはこの水の量じゃ足りない。きっと、跳ねれば輪ゴムがちぎれてしまうくらい、いっぱいで重たい。なんて、本人にはまだ言えないけど。
喧騒とすれ違う。手元でぱしゃぱしゃと水が揺れた。
2025.8.26
じっとりと暑い夜はかき氷がよく売れる。定番の味から、少し変わった味が揃う、うちも例外ではない。途切れそうで途切れない列に手を動かしながら、隙をついては周りの屋台を見渡す。沖田くん、いないのかな。
真選組が今日の祭りで見廻りをしているのは、何度も屋台の前を真選組の人たちが行き来していたから知っている。それなら、沖田くんのこともひと目見れるのではないかと思った。だけど、期待とは裏腹にあの茶髪頭は見当たらない。
やっと列が落ち着き、店長と一息つく。もう一人のスタッフの子は少しの休憩で祭りを回っている。
沖田くんも忙しいよね。一応、出店場所は教えたけど、彼も仕事だ。会えないのは残念だけど仕方がない。
「沖田くん来ないのかなぁ」
「俺がなんだって」
「わっ、お、沖田くん……!」
台の向こう側に沖田くんが立っていた。いつの間に。驚きでバクバクと鳴る心臓の上に手を重ねる。
「そんな驚かれたら悲しいや」
肩をすくめる彼は、悲しいと言う割に表情ひとつ変えない。
「急に来られたらびっくりしますよ。それに悲しそうには見えないんですけど……」
「ま、冗談はさておき、かき氷ひとつ。味は……ナマエ好きな味ありやすか」
「私?うーん……イチゴかな」
「ンじゃ、それで」
シャリシャリ氷の山を作りながら心臓を落ち着かせる。ポロッと出た言葉を聞かれたのが恥ずかしい。シロップをかけ、更に氷の山を高くする。仕上げのシロップで完成だ。
「沖田くん、どうぞ」
「どーも」
スプーンストローをさして渡すと、沖田くんはすぐに一口食べて、甘いとボヤいた。
今お客さんいないし、せっかくなら回ってきなよと店長の粋な計らいで、少しだけど沖田くんと祭りを回れることになった。とっても嬉しいんだけど、すれ違う人たちの視線がグサグサと突き刺さる。
「あの、なんだか目立ってませんか」
「そりゃ、真選組と歩いてたら注目の的ですぜ」
「確かに、そうですよね」
見慣れすぎて何も思わなかったけど、そういえば沖田くんは隊服を来ている。一般人が隊士と一緒に歩いていたら何事かと思われるのは当然だ。
「ま、今年は勘弁してくだせェ。……牽制になって、こっちとしては有難いくらいなんで」
「牽制……?」
「そ、アンタは堂々としてりゃいいんです。……いっそ首輪でも付けて散歩します?」
首の後ろを熱を持った指でするっと撫でられる。首輪が巻き付いたような感覚と、くすぐったさに思わず声が出た。
「ひっ……、え、遠慮します。そりゃ、ある意味目を逸らされるかもしれませんけど」
目を合わせたら確実にヤバいと思わせるには充分すぎるけど、それをして歩く度胸なんてあるはずもない。必死に首を振る私に、残念、と冗談なのか本気なのか分からない言葉が返ってきた。
私の目にヨーヨー釣りと書かれた屋台が見えた。
「あ、ヨーヨー釣り」
小さい頃はよく両親にねだって水風船のヨーヨーを釣っていた。こよりがちぎれないように釣るドキドキ感や、とれたヨーヨーを歩きながら遊ぶのも好きだったな、と記憶が蘇る。
「欲しいんですかィ」
「うん。赤いやつが欲しいな」
赤地に白と水色で表面に円が描かれたヨーヨーを指差す。
「ナマエ、赤、好きでしたっけ」
オヤジ、一回分、と釣り針を受け取り、しゃがむ彼の隣に並ぶ。
「これからイベントが増えるし、真選組の仕事、忙しくなるんでしょ?だからしばらくはヨーヨーを沖田くんだと思おうかなーっておもったの。赤は沖田くんのアイマスクと同じ色だし」
「……なーんか、気に食わねェ」
じとっと不満気な目をされてしまった。寂しさも紛らわせるし、童心に帰って遊べるし、いい案だなと思ったんだけど彼はどうやら違うらしい。
「そう?」
「水風船なんて、数日もすれば萎んじまう。ナマエの心がそれと同じになっちまったら困りやす」
そう言う沖田くんの声が遠くに聞こえる。
ドクドクと苦しいほどに心臓が歓喜に跳ねる。そんなことを考えてくれていたんだ。私の沖田くんへの気持ちが萎んだり、無くなったりすることなんて無いのに。
沖田くんの手際は見事で、あっという間に、取れやしたぜ、と要望通りの赤いヨーヨーを見せてくれた。
「割らねェよう大切に扱ってくださいよ」
「うん、ありがとう」
指に輪ゴムを通し、ふわふわと上下する水風船の感覚に、これこれと幼少期のワクワク感を思い出す。
「……そういえば、ヨーヨー釣りに使われる水風船って、割れづらくなってるんだって」
「ヘェ」
「だから、私の沖田くんへの気持ちも簡単に壊れたりしないよ」
「……そうですかィ」
顔がほんのり赤く見えたのは、祭りの明かりのせいか、それとも。
「見んな」
「ふふ、はーい」
滅多に無い機会だから本当は怒られても見たい。だけど、行き交う人が多くなり、よそ見は厳禁な状態になってしまった。
ヨーヨーが上下して中の水が揺れる。膨らんだ水風船が私の心なら、沖田くんへの気持ちはこの水の量じゃ足りない。きっと、跳ねれば輪ゴムがちぎれてしまうくらい、いっぱいで重たい。なんて、本人にはまだ言えないけど。
喧騒とすれ違う。手元でぱしゃぱしゃと水が揺れた。
2025.8.26