坂田銀時
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仕事でミスが重なって気分はどん底。怒鳴られるようなことは無かったけど、ミスが積み重なると心が涙を流し、慰めさえも逆に辛くなってしまう時期に入る。結果、心の中が大いに荒れた。
荒れた結果、どうなるかというと、仕事終わりに大江戸スーパーに駆け込み、てきとうに缶のお酒とおつまみを買ってひとり飲みだ。お店で呑むのも好きだけど、ひとりで、こんな荒れて日に行くと明日に支障が出るのは火を見るより明らか。
スーパーに向かっている途中、ふと上を向くと綺麗な満月がかぶき町を照らしていたのだ。外で呑んだらさぞ、気分が良いだろう。そう、思った。
帰る途中にある公園は、見た限り誰もいない。これ幸い、と灯りが照らすベンチに陣取り、夜のひとりピクニックの始まりだ。
プルタブを押し上げると。カシュっといい音を奏で、炭酸の弾ける音が心を揺らす。いただきます、と呟いて、ひと口流し込む。この瞬間が呑んでる中で一番最高の時間だ。
焼き鳥のパックを開いて、串に刺さった鶏肉を楽しむ。電子レンジでチンが出来なくて、あったかくはないけど、甘辛いタレとお酒があって美味しい。また買って帰ろう。新しい美味しいものを見つけられた今日は、実は良い日だったのかもしれない。
時折、月を見ながらひとり呑みを楽しんでいると、聞きなれた声が近づいてきた。
「おねーさん、ひとりでなにしてんの?」
「……月見酒」
銀色の髪を揺らし、ひらっと片手を上げてやってきたのは、万事屋の銀さんだった。何度かお世話になったことがある、私の好きな人。やっぱり、今日は良い日だ。銀さんに会えた。
「月見酒ェ?おいおい、そりゃ秋だろ」
邪魔するぜェと、買い物袋を挟んで、どかっと座った銀さんは耳をほじりながら言った。
「他に良い言い方が思いつかなかったの」
ああ、可愛くない言い方をしてしまった。横目で銀さんを見ると、彼は気にしていないのか、満月を見上げていた。
「ま、こんだけ綺麗な月なら、秋にやるのとそう変わらねェか」
銀さんの真面目な横顔が見慣れなくて、目を逸らしたくなってしまった私は、缶を上に向け、残っていたぶんの最後のひと口までを飲みきる。
「おーおー、いい呑みっぷりじゃねェか」
「ん、でも、もう無くなっちゃった」
手首を振ってみると、ほんの少しだけ残ったお酒が揺れる音がした。それを銀さんに奪われたと思ったら、すぐに新しいお酒が手の中に補充された。いつの間にか、袋の中からお酒を取りだしたらしい。ニッと笑った銀さんの手にも、缶が握られていた。
「良かったら付き合うぜ。つーか、一本貰っていい?」
「いーよ」
そもそも、それが目的でしょ。鈍い音で乾杯をして、嬉しそうな顔をして呑み始める銀さんを見て思う。
「なんかあったか」
「どうしてそう思うの」
驚いた。銀さんと会ってから沈んだ顔なんてしていないのに。
「お前、結構表情で分かりやすいぜ。それに、こんなやけ酒みたいな量、なにかありましたーって言ってるようなもんじゃねぇか」
見せられた袋の中は、まだ缶が転がり、おつまみだって開けてないのも入っている。
銀さんには敵わないなぁ。
「ちょっと、聞いてもらってもいい?」
「なんでもどーぞ」
「実は、し、」
仕事で、と言いかけたタイミングで、缶の潰れたような音がした。彼の手で軽く潰れた缶からはアルコールが溢れ出ている。
「し、失恋!!?つか、ナマエ好きなやついたのォ!?」
今までの雰囲気はどこへやら。とんでもない声量で、とんでもない勘違いをされている。好きな人がいるのはあってるけど、好きな人に別の好きな人がいると思われるのもなんだか嫌だ。
「ち、違う!違う!最後まで聞いてよ!!仕事!仕事で嫌なことがあっただけ!」
銀さんに負けない声量で言い返す。ふだんならこんな大声出したりしない。いつの間にか酔いが回ってきたのかもしれない。
「だ、だよなァ。そう思ったよ?ナマエから男の気配なんて、一切したことなかったしィ?」
「それもそれで失礼じゃない?」
拗ねたふりをして、銀さんから顔を逸らしてお酒を呑む。ふりなのが分かっているのか、謝る声も弾んでいる。その感じがアルコールと合ってふわふわと気持ちいい。
「悪ぃ悪ぃ。男じゃねぇのか、良かった……。いや、良くはねぇか。仕事でしんどい思いしたんだな」
急に真剣なトーンになるの、ずるい。大きい手が優しく私の頭を撫でる。安心感が頭からゆっくり、身体中に広がっていくのが分かった。
「俺で良ければいつでも聞くぜ?二十四時間、三百六十五日、いつでも依頼受け付けてまーす」
励ましてくれるための軽口だと分かる。銀さんを呼ぶ特権を手に入れてしまった。そういうことでいいのかな。
「ふふ、依頼料は私の奢りでいい?」
「……おー、頼むわ」
手が離れる。荒れていた心も、気がつけば晴れやかな気持ちになっていた。
並んでお酒を呑む。二人で見た満月をきっとこの先忘れることはない。
2025.7.25
荒れた結果、どうなるかというと、仕事終わりに大江戸スーパーに駆け込み、てきとうに缶のお酒とおつまみを買ってひとり飲みだ。お店で呑むのも好きだけど、ひとりで、こんな荒れて日に行くと明日に支障が出るのは火を見るより明らか。
スーパーに向かっている途中、ふと上を向くと綺麗な満月がかぶき町を照らしていたのだ。外で呑んだらさぞ、気分が良いだろう。そう、思った。
帰る途中にある公園は、見た限り誰もいない。これ幸い、と灯りが照らすベンチに陣取り、夜のひとりピクニックの始まりだ。
プルタブを押し上げると。カシュっといい音を奏で、炭酸の弾ける音が心を揺らす。いただきます、と呟いて、ひと口流し込む。この瞬間が呑んでる中で一番最高の時間だ。
焼き鳥のパックを開いて、串に刺さった鶏肉を楽しむ。電子レンジでチンが出来なくて、あったかくはないけど、甘辛いタレとお酒があって美味しい。また買って帰ろう。新しい美味しいものを見つけられた今日は、実は良い日だったのかもしれない。
時折、月を見ながらひとり呑みを楽しんでいると、聞きなれた声が近づいてきた。
「おねーさん、ひとりでなにしてんの?」
「……月見酒」
銀色の髪を揺らし、ひらっと片手を上げてやってきたのは、万事屋の銀さんだった。何度かお世話になったことがある、私の好きな人。やっぱり、今日は良い日だ。銀さんに会えた。
「月見酒ェ?おいおい、そりゃ秋だろ」
邪魔するぜェと、買い物袋を挟んで、どかっと座った銀さんは耳をほじりながら言った。
「他に良い言い方が思いつかなかったの」
ああ、可愛くない言い方をしてしまった。横目で銀さんを見ると、彼は気にしていないのか、満月を見上げていた。
「ま、こんだけ綺麗な月なら、秋にやるのとそう変わらねェか」
銀さんの真面目な横顔が見慣れなくて、目を逸らしたくなってしまった私は、缶を上に向け、残っていたぶんの最後のひと口までを飲みきる。
「おーおー、いい呑みっぷりじゃねェか」
「ん、でも、もう無くなっちゃった」
手首を振ってみると、ほんの少しだけ残ったお酒が揺れる音がした。それを銀さんに奪われたと思ったら、すぐに新しいお酒が手の中に補充された。いつの間にか、袋の中からお酒を取りだしたらしい。ニッと笑った銀さんの手にも、缶が握られていた。
「良かったら付き合うぜ。つーか、一本貰っていい?」
「いーよ」
そもそも、それが目的でしょ。鈍い音で乾杯をして、嬉しそうな顔をして呑み始める銀さんを見て思う。
「なんかあったか」
「どうしてそう思うの」
驚いた。銀さんと会ってから沈んだ顔なんてしていないのに。
「お前、結構表情で分かりやすいぜ。それに、こんなやけ酒みたいな量、なにかありましたーって言ってるようなもんじゃねぇか」
見せられた袋の中は、まだ缶が転がり、おつまみだって開けてないのも入っている。
銀さんには敵わないなぁ。
「ちょっと、聞いてもらってもいい?」
「なんでもどーぞ」
「実は、し、」
仕事で、と言いかけたタイミングで、缶の潰れたような音がした。彼の手で軽く潰れた缶からはアルコールが溢れ出ている。
「し、失恋!!?つか、ナマエ好きなやついたのォ!?」
今までの雰囲気はどこへやら。とんでもない声量で、とんでもない勘違いをされている。好きな人がいるのはあってるけど、好きな人に別の好きな人がいると思われるのもなんだか嫌だ。
「ち、違う!違う!最後まで聞いてよ!!仕事!仕事で嫌なことがあっただけ!」
銀さんに負けない声量で言い返す。ふだんならこんな大声出したりしない。いつの間にか酔いが回ってきたのかもしれない。
「だ、だよなァ。そう思ったよ?ナマエから男の気配なんて、一切したことなかったしィ?」
「それもそれで失礼じゃない?」
拗ねたふりをして、銀さんから顔を逸らしてお酒を呑む。ふりなのが分かっているのか、謝る声も弾んでいる。その感じがアルコールと合ってふわふわと気持ちいい。
「悪ぃ悪ぃ。男じゃねぇのか、良かった……。いや、良くはねぇか。仕事でしんどい思いしたんだな」
急に真剣なトーンになるの、ずるい。大きい手が優しく私の頭を撫でる。安心感が頭からゆっくり、身体中に広がっていくのが分かった。
「俺で良ければいつでも聞くぜ?二十四時間、三百六十五日、いつでも依頼受け付けてまーす」
励ましてくれるための軽口だと分かる。銀さんを呼ぶ特権を手に入れてしまった。そういうことでいいのかな。
「ふふ、依頼料は私の奢りでいい?」
「……おー、頼むわ」
手が離れる。荒れていた心も、気がつけば晴れやかな気持ちになっていた。
並んでお酒を呑む。二人で見た満月をきっとこの先忘れることはない。
2025.7.25