一年生秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋。
「来週はイワンの誕生日なんだ。アラセリスさん、なにかいい案はあるかい?」
お父様から呼び出されてお屋敷にうかがったら、そんなことを聞かれました。
「体質のせいで食べ物を用意したって口にはできないし、かといって物欲があるわけでもない。イワンは普段から一切わがままを言わないし、誕生日くらい望みを聞かせてくれと言っても「祝ってくれなくていい」なんて返事だから毎年困ってるんだ」
「そうなんですね」
十一月の月三十日はイワンが生まれた日。
父親としては祝いたい。けれどイワンは何もいらないと言う。
学院でセシリオ様たちも言ってましたね。本人が嫌がるから、イワンの誕生日を祝ったことがないって。
イワン本人としても、お母様のことがあるから自分の誕生日が苦手なのかもしれません。
「今年はアラセリスさんがいるだろう? だから、今年こそはお祝いしたいと思うんだ」
「私、隠し事のできるたちじゃないのですぐ本人に何がほしいか聞いちゃいますけど、いいんですか?」
嘘をつけないので、サプライズもへったくれもありません。
「いっそそのほうが新鮮かもしれないだろう。今からイワンのところに行って何がほしいか聞いてきてくれないか」
「わかりました」
「ーーというわけなんです」
「……なんの用で親父に呼び出されていたのかと思ったらそんなことか。本当に素直だなお前は」
褒められているのかな?
イワンが長椅子の隣をトントン叩くので、隣に腰を下ろします。
「それで、何が欲しいですか?」
「いきなり聞かれてもな」
イワンは、本当に困ったように考え込んでしまいました。
庶民の私と違って、服も装飾品も、ほしいと言わなくても与えられる立場にあります。
物欲に乏しいというより、与えられるもの以外を欲しいと考える機会がないのかもしれません。
イワンの手が私の腰を抱き寄せます。
私は引かれるまま、イワンにくっつきます。
「婚約したし、つがいになったし、今これ以上の望みはと聞かれたら、婚姻届を出すくらいか」
「ふぇ!?」
驚きすぎて変な声が出ちゃいましたよ。
「お前の誕生日はオレの三日後だったな」
「あ、はい、十二の月三日です」
「じゃあその日に出そう」
ルシール王国での成人と結婚年齢は男女ともに十六歳。
私は今度の誕生日で十六歳になるので、当日から婚姻届を出すことが可能になります。
「婚姻届でいいんですか。もっと他に何か」
「婚姻届がいい。法の上で結婚してしまえば、明確にオレのもの。もう誰もアラセリスに近寄れない。香水や婚約指輪よりずっと効果的だ」
ニッコリときれいに微笑んで言われました。
うん、束縛ここに極まれりです。
絶対他の男を近寄らせないという鉄の意志、感動すら覚えます。
「言われなくても、私もそのつもりだったのでやっぱり別のことにしてください。婚姻届以外のことで」
言い終える前に、イワンに組み敷かれました。
長椅子の柔らかな感触が背中に伝わります。
「なら、生気をくれ」
「それもいつもどおりじゃないですか。もっと、とくべつに欲しいものは?」
唇が触れ合い、長椅子の下に上着が落ちる。
低い声で囁かれます。
「お前の全てがオレのものになるなら、それだけで十分だ」
こうしてそばにいて触れ合うことが何よりのプレゼントになるなら、私はずっとイワンと一緒にいたい。
私にとっても、すごく嬉しいことだから。
お父様から呼び出されてお屋敷にうかがったら、そんなことを聞かれました。
「体質のせいで食べ物を用意したって口にはできないし、かといって物欲があるわけでもない。イワンは普段から一切わがままを言わないし、誕生日くらい望みを聞かせてくれと言っても「祝ってくれなくていい」なんて返事だから毎年困ってるんだ」
「そうなんですね」
十一月の月三十日はイワンが生まれた日。
父親としては祝いたい。けれどイワンは何もいらないと言う。
学院でセシリオ様たちも言ってましたね。本人が嫌がるから、イワンの誕生日を祝ったことがないって。
イワン本人としても、お母様のことがあるから自分の誕生日が苦手なのかもしれません。
「今年はアラセリスさんがいるだろう? だから、今年こそはお祝いしたいと思うんだ」
「私、隠し事のできるたちじゃないのですぐ本人に何がほしいか聞いちゃいますけど、いいんですか?」
嘘をつけないので、サプライズもへったくれもありません。
「いっそそのほうが新鮮かもしれないだろう。今からイワンのところに行って何がほしいか聞いてきてくれないか」
「わかりました」
「ーーというわけなんです」
「……なんの用で親父に呼び出されていたのかと思ったらそんなことか。本当に素直だなお前は」
褒められているのかな?
イワンが長椅子の隣をトントン叩くので、隣に腰を下ろします。
「それで、何が欲しいですか?」
「いきなり聞かれてもな」
イワンは、本当に困ったように考え込んでしまいました。
庶民の私と違って、服も装飾品も、ほしいと言わなくても与えられる立場にあります。
物欲に乏しいというより、与えられるもの以外を欲しいと考える機会がないのかもしれません。
イワンの手が私の腰を抱き寄せます。
私は引かれるまま、イワンにくっつきます。
「婚約したし、つがいになったし、今これ以上の望みはと聞かれたら、婚姻届を出すくらいか」
「ふぇ!?」
驚きすぎて変な声が出ちゃいましたよ。
「お前の誕生日はオレの三日後だったな」
「あ、はい、十二の月三日です」
「じゃあその日に出そう」
ルシール王国での成人と結婚年齢は男女ともに十六歳。
私は今度の誕生日で十六歳になるので、当日から婚姻届を出すことが可能になります。
「婚姻届でいいんですか。もっと他に何か」
「婚姻届がいい。法の上で結婚してしまえば、明確にオレのもの。もう誰もアラセリスに近寄れない。香水や婚約指輪よりずっと効果的だ」
ニッコリときれいに微笑んで言われました。
うん、束縛ここに極まれりです。
絶対他の男を近寄らせないという鉄の意志、感動すら覚えます。
「言われなくても、私もそのつもりだったのでやっぱり別のことにしてください。婚姻届以外のことで」
言い終える前に、イワンに組み敷かれました。
長椅子の柔らかな感触が背中に伝わります。
「なら、生気をくれ」
「それもいつもどおりじゃないですか。もっと、とくべつに欲しいものは?」
唇が触れ合い、長椅子の下に上着が落ちる。
低い声で囁かれます。
「お前の全てがオレのものになるなら、それだけで十分だ」
こうしてそばにいて触れ合うことが何よりのプレゼントになるなら、私はずっとイワンと一緒にいたい。
私にとっても、すごく嬉しいことだから。