一年生秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋。
ヴォルフラムが生徒会室に襲来し、現在セシリオが部屋の外に放り出して説教してくれている。
アタシはセリスさんと一緒に緊急作戦会議を開くことになった。
「はぁ……。学院祭の準備も中途半端だっていうのに……面倒なことになったわ。ゲームだとヴォルフラムがギジェルミーナに興味を持つなんてことなかったのに。アタシが転生者だから?」
「お茶でも飲んで落ち着きましょう、ミーナ様」
落ち着きましょう、なんて言うセリスさんもティーカップを持つ手が震えている。
会議の前に淹れたものだから、とっくにぬるくなっていて、味わえる気分でもなくなっている。
「どうしましょう。私がミーナ様に助けられていることも、考えたとたん彼に伝わってしまうんですよね。何も考えないってどうすればいいんでしょう」
「そうね。考えないようにすればするほど、ヴォルフラムにわかるでしょうね」
アタシがもとは日本人で、美生という名のOLだったこと。
この世界の分岐する未来を知っていること。
初対面のとき見透かされたらしい。
もしも、もしもヴォルフラムの口から、アタシの素性をまわりに暴露されたら。未来がどう変わってしまうのか予想もつかない。
最悪。
声には出さず、またため息を吐く。
ヴォルフラムはイワン純愛ルート中盤にのみ登場するキャラ。
セリスさんに偽物の愛を植え付ける魔法をかけて、自分のつがいにしようとする。
聖属性のセリスさんに精神操作魔法は効かないから、事なきを得る。それが正規のシナリオ。
それはあくまでも正規シナリオの話。
アタシが転生者という時点で正規シナリオから外れているのよね。
だからヴォルフラムもシナリオにない行動をしているのかしら。
アタシにアプローチしてきているなら、彼が偽の愛を植える相手もセリスさんでなく、アタシになるの?
闇魔法の耐性はないから、アタシは操られるままヴォルフラムのつがいにされてしまう可能性もある?
いつかはウィルフレドに告白しよう、なんて悠長なこと言っていられなくなってしまったわ。
迷い、俯くアタシにセリスさんは言う。
「ミーナ様。私、思うのです。もしかしたら、ミーナ様が私にすべて打ち明けてくださったときのように、他の方もきちんと話せば信じて、力を貸してくれるのではないでしょうか」
「アタシが転生者だと話すってこと?」
それは危険と隣り合わせの選択肢。セリスさんがアタシの言葉を信じてくれたのは奇跡のようなもの。
「すべてを全員にとはいいません。ミーナ様が信頼を置ける人にだけ。この世界に起こりえる不幸な未来を知っている、そのことだけでも。ヴォルフラムくんの行動が、未来にもたらす可能性のこと知っておいてもらえたら、一緒に止めてくれると思うんです」
たしかに、セリスさんが誘拐されたとき、アタシの突拍子もない言葉をセシリオとイワンは信じてくれた。
ならアタシもセシリオたちを信じないと、信じてもらえないわよね。
「……そうね。そのときはそばにいてくれる? 自分一人でうまく語れる自信がないの」
「もちろんです」
セリスさんは心強い笑みで、アタシの手を握ってくれる。
ゲームにない分岐ルートの行く末を知らない。
だから大丈夫なんて根拠はどこにもない。
それでも、信頼できる人にだけは起こり得る未来のことを話してみようと思った。
アタシはセリスさんと一緒に緊急作戦会議を開くことになった。
「はぁ……。学院祭の準備も中途半端だっていうのに……面倒なことになったわ。ゲームだとヴォルフラムがギジェルミーナに興味を持つなんてことなかったのに。アタシが転生者だから?」
「お茶でも飲んで落ち着きましょう、ミーナ様」
落ち着きましょう、なんて言うセリスさんもティーカップを持つ手が震えている。
会議の前に淹れたものだから、とっくにぬるくなっていて、味わえる気分でもなくなっている。
「どうしましょう。私がミーナ様に助けられていることも、考えたとたん彼に伝わってしまうんですよね。何も考えないってどうすればいいんでしょう」
「そうね。考えないようにすればするほど、ヴォルフラムにわかるでしょうね」
アタシがもとは日本人で、美生という名のOLだったこと。
この世界の分岐する未来を知っていること。
初対面のとき見透かされたらしい。
もしも、もしもヴォルフラムの口から、アタシの素性をまわりに暴露されたら。未来がどう変わってしまうのか予想もつかない。
最悪。
声には出さず、またため息を吐く。
ヴォルフラムはイワン純愛ルート中盤にのみ登場するキャラ。
セリスさんに偽物の愛を植え付ける魔法をかけて、自分のつがいにしようとする。
聖属性のセリスさんに精神操作魔法は効かないから、事なきを得る。それが正規のシナリオ。
それはあくまでも正規シナリオの話。
アタシが転生者という時点で正規シナリオから外れているのよね。
だからヴォルフラムもシナリオにない行動をしているのかしら。
アタシにアプローチしてきているなら、彼が偽の愛を植える相手もセリスさんでなく、アタシになるの?
闇魔法の耐性はないから、アタシは操られるままヴォルフラムのつがいにされてしまう可能性もある?
いつかはウィルフレドに告白しよう、なんて悠長なこと言っていられなくなってしまったわ。
迷い、俯くアタシにセリスさんは言う。
「ミーナ様。私、思うのです。もしかしたら、ミーナ様が私にすべて打ち明けてくださったときのように、他の方もきちんと話せば信じて、力を貸してくれるのではないでしょうか」
「アタシが転生者だと話すってこと?」
それは危険と隣り合わせの選択肢。セリスさんがアタシの言葉を信じてくれたのは奇跡のようなもの。
「すべてを全員にとはいいません。ミーナ様が信頼を置ける人にだけ。この世界に起こりえる不幸な未来を知っている、そのことだけでも。ヴォルフラムくんの行動が、未来にもたらす可能性のこと知っておいてもらえたら、一緒に止めてくれると思うんです」
たしかに、セリスさんが誘拐されたとき、アタシの突拍子もない言葉をセシリオとイワンは信じてくれた。
ならアタシもセシリオたちを信じないと、信じてもらえないわよね。
「……そうね。そのときはそばにいてくれる? 自分一人でうまく語れる自信がないの」
「もちろんです」
セリスさんは心強い笑みで、アタシの手を握ってくれる。
ゲームにない分岐ルートの行く末を知らない。
だから大丈夫なんて根拠はどこにもない。
それでも、信頼できる人にだけは起こり得る未来のことを話してみようと思った。