一年生秋編 交換留学生が来る秋、イワンのいない秋。
校舎前の並木道が黄色く色づきはじめた頃。
私のクラスに交換留学生が来ました。
褐色の肌に赤の瞳。
ゆるやかにウェーブする長い白髪を、後頭部で結っています。
翼をしまっているので見た目は人間と変わりません。
実年齢は二十五歳。人間と成長速度が違うから、学生の年齢が違うのも頷けます。
「僕はヴォルフラム・クラテンシュタインという。気軽にヴォルフと呼んでほシイ。短い間だけど、よろしクね」
ヴォルフラムくんは人懐っこい笑顔で挨拶したのですが、対するクラスメートの表情は固め。
これが魔族に対する世間一般の認識なんだと、思い知らされます。
「ステイシー先生。ヴォルフの席って決まってないだろ。ヴォルフ、俺の隣に来いよ」
ローレンツくんが大きく手招きします。イワンの幼馴染なだけあって、魔族への偏見というものを持っていません。
「そうね。ではヴォルフラムさん。ローレンツさんの隣を使って」
「わかったよ」
ヴォルフラムくんは軽やかな足取りで私たちの近くまで来ました。
そしてローレンツくんの隣でなく、なぜか私の隣に腰を下ろします。
「あの……あなたの席はそちらですよ?」
「きみ、魔族の|つがい《・・・》がいるネ。魂の色でワカる。人間の国に魔族の|つがい《・・・》がいるなんて珍しい」
早口でまくしたてられて、あいまいに笑うしかありません。
「ヴォルフ、やめろ。そいつの婚約者はめちゃくちゃ嫉妬深いんだ。必要以上に絡むな」
「なぜ? 僕はルシールのヒトと仲良くスル役目で来たノに」
「仲良くするなら他のやつにしとけ。な?」
ローレンツくんに首根っこを引っ張られて、当初の席につきました。グッジョブですローレンツくん。
授業がはじまったのに、ヴォルフラムくんはまだ私の方をチラチラ見てます。
イワンは、魔族なら魂を見ればつがいの有無がわかるって言ってました。
留学生と必要以上に親しくするなと嫉妬全開で言われましたが、ヴォルフラムくんの方が私にグイグイくる場合はどうしたらいいんでしょう。
つがいになったことで逆に目につくのかな。
ルシール王国に魔族自体ほとんどいなくて、|つがい《・・・》は私とディアナちゃん二人だけだそうです。
授業が終わり、ステイシー先生が教室を出ていくのと同時にヴォルフラムくんは私の席にきました。
「名前聞きそびれタよ。誰かのつがい、きみはなんて名前ね?」
「アラセリスです」
「君のつがいはどこにいル?」
「イワンならあなたと入れ替わりで、交換留学生としてアウグストにいます」
ふんふん、と頷くヴォルフラムくん。
……なんで私、さっきから質問攻めにあっているんでしょう。
「君が魔族のつがいだからダヨ。その人に会ってみたいネ」
ん? 今、思考を読まれたんです?
「ソウ。ダンタリオンには心を読む力がある。君のつがいが夢を渡れるようなもの」
ヴォルフラムくんは左胸をトントンと叩いてみせます。
心を読むなんて、広い世の中にはそんな魔法もあるのですね。
「アラセリス、僕を案内して。人間の学校は初めてだから。君と、赤毛の彼と三つ編みの子以外は、あまり魔族好きでないネ。さっきから聞くにたえない声ばかり届いていた。どうせ頼むなら、僕に好意的な人のほうがイイ」
学院の案内をするくらいなら、イワンも許してくれるでしょうか。でも、男の子と二人きりになるのは困ります。
助けを求めてローレンツくんを見ると、ローレンツくんは深く頷きました。
「俺も行ってやるよ。男子寮みたいに、女生徒じゃ入れない区域もあるからな」
「優しいクラスメートたちがいて助かるヨ」
ヴォルフラムくんは屈託なく笑いました。
私のクラスに交換留学生が来ました。
褐色の肌に赤の瞳。
ゆるやかにウェーブする長い白髪を、後頭部で結っています。
翼をしまっているので見た目は人間と変わりません。
実年齢は二十五歳。人間と成長速度が違うから、学生の年齢が違うのも頷けます。
「僕はヴォルフラム・クラテンシュタインという。気軽にヴォルフと呼んでほシイ。短い間だけど、よろしクね」
ヴォルフラムくんは人懐っこい笑顔で挨拶したのですが、対するクラスメートの表情は固め。
これが魔族に対する世間一般の認識なんだと、思い知らされます。
「ステイシー先生。ヴォルフの席って決まってないだろ。ヴォルフ、俺の隣に来いよ」
ローレンツくんが大きく手招きします。イワンの幼馴染なだけあって、魔族への偏見というものを持っていません。
「そうね。ではヴォルフラムさん。ローレンツさんの隣を使って」
「わかったよ」
ヴォルフラムくんは軽やかな足取りで私たちの近くまで来ました。
そしてローレンツくんの隣でなく、なぜか私の隣に腰を下ろします。
「あの……あなたの席はそちらですよ?」
「きみ、魔族の|つがい《・・・》がいるネ。魂の色でワカる。人間の国に魔族の|つがい《・・・》がいるなんて珍しい」
早口でまくしたてられて、あいまいに笑うしかありません。
「ヴォルフ、やめろ。そいつの婚約者はめちゃくちゃ嫉妬深いんだ。必要以上に絡むな」
「なぜ? 僕はルシールのヒトと仲良くスル役目で来たノに」
「仲良くするなら他のやつにしとけ。な?」
ローレンツくんに首根っこを引っ張られて、当初の席につきました。グッジョブですローレンツくん。
授業がはじまったのに、ヴォルフラムくんはまだ私の方をチラチラ見てます。
イワンは、魔族なら魂を見ればつがいの有無がわかるって言ってました。
留学生と必要以上に親しくするなと嫉妬全開で言われましたが、ヴォルフラムくんの方が私にグイグイくる場合はどうしたらいいんでしょう。
つがいになったことで逆に目につくのかな。
ルシール王国に魔族自体ほとんどいなくて、|つがい《・・・》は私とディアナちゃん二人だけだそうです。
授業が終わり、ステイシー先生が教室を出ていくのと同時にヴォルフラムくんは私の席にきました。
「名前聞きそびれタよ。誰かのつがい、きみはなんて名前ね?」
「アラセリスです」
「君のつがいはどこにいル?」
「イワンならあなたと入れ替わりで、交換留学生としてアウグストにいます」
ふんふん、と頷くヴォルフラムくん。
……なんで私、さっきから質問攻めにあっているんでしょう。
「君が魔族のつがいだからダヨ。その人に会ってみたいネ」
ん? 今、思考を読まれたんです?
「ソウ。ダンタリオンには心を読む力がある。君のつがいが夢を渡れるようなもの」
ヴォルフラムくんは左胸をトントンと叩いてみせます。
心を読むなんて、広い世の中にはそんな魔法もあるのですね。
「アラセリス、僕を案内して。人間の学校は初めてだから。君と、赤毛の彼と三つ編みの子以外は、あまり魔族好きでないネ。さっきから聞くにたえない声ばかり届いていた。どうせ頼むなら、僕に好意的な人のほうがイイ」
学院の案内をするくらいなら、イワンも許してくれるでしょうか。でも、男の子と二人きりになるのは困ります。
助けを求めてローレンツくんを見ると、ローレンツくんは深く頷きました。
「俺も行ってやるよ。男子寮みたいに、女生徒じゃ入れない区域もあるからな」
「優しいクラスメートたちがいて助かるヨ」
ヴォルフラムくんは屈託なく笑いました。