一年生春編 運命に翻弄される春
家に帰ってすぐ、ミーナ様からいただいた日記を読みます。
この中には監禁調教の未来から身を守るすべがたくさん書かれているのです。
私が迎える未来のうち、調教監禁されず幸せになれるのは純愛ルートだけのようです。
私は純愛すればいいんですね。
あ、でも、イワン様とは純愛でも嫌です。
無理やりキスしてきたこと、謝ったって許しません。
ファーストキスだったのに!
お風呂でいつもより多めに顔と口を洗いましたよ。
私が合意してないのでノーカウントです。あれは事故。お隣のおばちゃんがペットのワンコにチューしてるようなものです!
「姉さん、お客さんだよ」
「ひょえ!」
ノックの音とともに、扉の向こうからレネの声がしました。
「お、お、お客さん? この時間に?」
夕食時を過ぎた頃。外出する時間には少し遅いように思います。
「ロードだかロイデンだか、そんな感じの名前。同級生って言ってたけど」
もしかしてローレンツ様でしょうか。なぜ私の家を知っているのか疑問です。
けれど、もう来てしまっている以上は、用件を聞かずに追い返すわけにもいきません。
ローレンツ様は玄関先で待っていました。
「どういったご用件でしょうか」
「睨むなって。昨日会長が本当に俺の親父にあのときのこと暴露したもんだから大目玉食らったんだ。きちんと謝ってこいって言われてよ。今日は学院で言えなかったから、会長に家の場所をきいてきたんだ。……その、悪かったな」
「いいえ。こちらこそ、ぶつかってすみませんでした」
意地悪な人ですが、根っからの悪人ではないようです。
これを言うために、わざわざ家まで足を運んでくれた。バツが悪そうに頭をかく姿は、私たち庶民と何も変わりません。
「はー、許してくれて良かった。お詫びに魔法学でわからないところがあったら、俺の知っている範囲なら教えてやるよ」
「ありがとうございます。私は皆さんより知識が乏しいので、ローレンツ様に頼ることもあると思います」
同学年ですし、頼れる友達になれるならそれがいいですよね。
私が微笑うと、ローレンツ様も照れたように笑います。
「お、おう。じゃあまたな!」
街灯がともり、もうすぐ夜になる町の中。ローレンツ様は上機嫌で帰っていきました。
こっそり扉の影から覗いていたレネが聞いてきます。
「今の人は姉さんのなに?」
「同じ学年の人よ。昨日廊下でぶつかってしまって。そのお詫びに来たんだって」
「ふぅん。貴族って、お詫びを言うためだけにわざわざ家まで来るんだね」
「そうね。貴族といっても、私たちとあまり変わらないのかもしれないわ」
もしかして学校で、みんなのいる前で言うのは気が引けたのかもしれません。
この中には監禁調教の未来から身を守るすべがたくさん書かれているのです。
私が迎える未来のうち、調教監禁されず幸せになれるのは純愛ルートだけのようです。
私は純愛すればいいんですね。
あ、でも、イワン様とは純愛でも嫌です。
無理やりキスしてきたこと、謝ったって許しません。
ファーストキスだったのに!
お風呂でいつもより多めに顔と口を洗いましたよ。
私が合意してないのでノーカウントです。あれは事故。お隣のおばちゃんがペットのワンコにチューしてるようなものです!
「姉さん、お客さんだよ」
「ひょえ!」
ノックの音とともに、扉の向こうからレネの声がしました。
「お、お、お客さん? この時間に?」
夕食時を過ぎた頃。外出する時間には少し遅いように思います。
「ロードだかロイデンだか、そんな感じの名前。同級生って言ってたけど」
もしかしてローレンツ様でしょうか。なぜ私の家を知っているのか疑問です。
けれど、もう来てしまっている以上は、用件を聞かずに追い返すわけにもいきません。
ローレンツ様は玄関先で待っていました。
「どういったご用件でしょうか」
「睨むなって。昨日会長が本当に俺の親父にあのときのこと暴露したもんだから大目玉食らったんだ。きちんと謝ってこいって言われてよ。今日は学院で言えなかったから、会長に家の場所をきいてきたんだ。……その、悪かったな」
「いいえ。こちらこそ、ぶつかってすみませんでした」
意地悪な人ですが、根っからの悪人ではないようです。
これを言うために、わざわざ家まで足を運んでくれた。バツが悪そうに頭をかく姿は、私たち庶民と何も変わりません。
「はー、許してくれて良かった。お詫びに魔法学でわからないところがあったら、俺の知っている範囲なら教えてやるよ」
「ありがとうございます。私は皆さんより知識が乏しいので、ローレンツ様に頼ることもあると思います」
同学年ですし、頼れる友達になれるならそれがいいですよね。
私が微笑うと、ローレンツ様も照れたように笑います。
「お、おう。じゃあまたな!」
街灯がともり、もうすぐ夜になる町の中。ローレンツ様は上機嫌で帰っていきました。
こっそり扉の影から覗いていたレネが聞いてきます。
「今の人は姉さんのなに?」
「同じ学年の人よ。昨日廊下でぶつかってしまって。そのお詫びに来たんだって」
「ふぅん。貴族って、お詫びを言うためだけにわざわざ家まで来るんだね」
「そうね。貴族といっても、私たちとあまり変わらないのかもしれないわ」
もしかして学校で、みんなのいる前で言うのは気が引けたのかもしれません。