一年生夏編 恋人と過ごす夏
教員室の隣にある指導室に呼び出されました。
教頭先生がかなりご立腹で、まともに私の話を聞いてくれません。
二言目には「嘘を吐くな、ベルナデッタを叩いたんだろう!?」と怒鳴るのです。
ステイシー先生が間に入ってくれているのですが、カンカンに怒っていて話し合いになりません。
「ですから、教頭先生。アラセリスはそんなことをできる子じゃありません!」
「うちのベルナデッタが嘘をついたとでも言うのか!? わしは孫をそんなふうに育てたことはない!」
庶民なんか退学に追い込める、と豪語していたのは教頭先生のお孫さんだからですか。
権力の使い方を間違えていません?
なんて、先生に対してそんなことを言ったら、それこそ退学にされかねません。言いたいのを堪えます。
「私は叩いていませんし、むしろ被害者です。『退学にされたくなかったら、イワンとの婚約を解消しなさい』と脅されました」
「うちのベルナデッタがそんなことするものか」
ポッと出の庶民より、家族のほうを信用する。
しかも私は『悪いのはベルナデッタ様の方』と言っているのだから信じるわけありませんね。
「まわりで見ていた生徒がいたはずです。彼らが真実を知っています」
「聞き取りをしたら、彼らも口を揃えて、手を出したのはアラセリスの方だと言っていた。証言があるのにまだ知らぬというのか」
階級社会の中、身分が上の人間に聞かれて、正しい証言する人はいないでしょう。
先生が望む答えを言わないと退学にする、とでも言われたのかもしれません。
「ですから、この子は暴力をふるうような子ではありません。わたくし、自分の受け持つ子のことはきちんと理解しているつもりです」
「なら君の人を見る眼が曇っているんだ!」
何がなんでも私殴ったことにしたいようです。
どうしたらいいんですか。
困り果てていると、指導室の扉がノックもなしに開きました。
イワンとミーナ様、セシリオ様、ローレンツくんにクララさん、そして何名ものクラスメートがそこにいました。
「なんだ、お前たち」
「あまりにも横暴ですわ、教頭先生。セリスさんは生徒会の仕事も真面目にこなす模範生ですのよ。何もしてないセリスさんを謹慎処分にするのなら、わたくしたちにも考えがあります」
「考えだと」
教頭先生の言葉にイワンが答えます。
「ぼくも絡まれた当事者なので、証言する権利がありますよね。貴方の孫は、友人二人を引き連れてアラセリスを脅した。ぼくはそれを止めに入りました」
イワンの証言を引き継ぐように、クラスメートたちも口々に訴えます。
ベルナデッタ様の方から喧嘩を売るのを見たと。
セシリオ様が口を開きます。
「目撃者と被害者の証言が違うね。教頭は誰から、『暴力を振るったのはセリスくんだ』と聞いたんだい。王族であるわたしに、嘘をついたりはしないよね」
教頭先生は青ざめ、うなだれました。
ベルナデッタ様のお友だち二人が、嘘の証言をした犯人だったようです。
教頭先生を利用してまで私を陥れたいなんて、ベルナデッタ様の執念が怖いです。
結果、謹慎処分を言い渡されたのはベルナデッタ様とお友だちの方。
私を信じて助けてくれたステイシー先生やみんなに、心からお礼を言いました。
帰りはイワンが送ってくれました。
ラウレール家の馬車に揺られて家路をいきます。
座席に深く腰掛けて、イワンは私のおでこを小突く。
「つくづく厄介事に巻き込まれるたちだな、お前は」
「逃げようにもあっちからふっかけてくるので……」
ミーナ様に教わっていても、回避できない未来というのもあるのです。
何はともあれ、ニセ証言を覆せて良かったです。
イワンの肩によりかかると、そっと抱きとめてくれました。
居場所を守るためにも、頑張らなきゃです。
教頭先生がかなりご立腹で、まともに私の話を聞いてくれません。
二言目には「嘘を吐くな、ベルナデッタを叩いたんだろう!?」と怒鳴るのです。
ステイシー先生が間に入ってくれているのですが、カンカンに怒っていて話し合いになりません。
「ですから、教頭先生。アラセリスはそんなことをできる子じゃありません!」
「うちのベルナデッタが嘘をついたとでも言うのか!? わしは孫をそんなふうに育てたことはない!」
庶民なんか退学に追い込める、と豪語していたのは教頭先生のお孫さんだからですか。
権力の使い方を間違えていません?
なんて、先生に対してそんなことを言ったら、それこそ退学にされかねません。言いたいのを堪えます。
「私は叩いていませんし、むしろ被害者です。『退学にされたくなかったら、イワンとの婚約を解消しなさい』と脅されました」
「うちのベルナデッタがそんなことするものか」
ポッと出の庶民より、家族のほうを信用する。
しかも私は『悪いのはベルナデッタ様の方』と言っているのだから信じるわけありませんね。
「まわりで見ていた生徒がいたはずです。彼らが真実を知っています」
「聞き取りをしたら、彼らも口を揃えて、手を出したのはアラセリスの方だと言っていた。証言があるのにまだ知らぬというのか」
階級社会の中、身分が上の人間に聞かれて、正しい証言する人はいないでしょう。
先生が望む答えを言わないと退学にする、とでも言われたのかもしれません。
「ですから、この子は暴力をふるうような子ではありません。わたくし、自分の受け持つ子のことはきちんと理解しているつもりです」
「なら君の人を見る眼が曇っているんだ!」
何がなんでも私殴ったことにしたいようです。
どうしたらいいんですか。
困り果てていると、指導室の扉がノックもなしに開きました。
イワンとミーナ様、セシリオ様、ローレンツくんにクララさん、そして何名ものクラスメートがそこにいました。
「なんだ、お前たち」
「あまりにも横暴ですわ、教頭先生。セリスさんは生徒会の仕事も真面目にこなす模範生ですのよ。何もしてないセリスさんを謹慎処分にするのなら、わたくしたちにも考えがあります」
「考えだと」
教頭先生の言葉にイワンが答えます。
「ぼくも絡まれた当事者なので、証言する権利がありますよね。貴方の孫は、友人二人を引き連れてアラセリスを脅した。ぼくはそれを止めに入りました」
イワンの証言を引き継ぐように、クラスメートたちも口々に訴えます。
ベルナデッタ様の方から喧嘩を売るのを見たと。
セシリオ様が口を開きます。
「目撃者と被害者の証言が違うね。教頭は誰から、『暴力を振るったのはセリスくんだ』と聞いたんだい。王族であるわたしに、嘘をついたりはしないよね」
教頭先生は青ざめ、うなだれました。
ベルナデッタ様のお友だち二人が、嘘の証言をした犯人だったようです。
教頭先生を利用してまで私を陥れたいなんて、ベルナデッタ様の執念が怖いです。
結果、謹慎処分を言い渡されたのはベルナデッタ様とお友だちの方。
私を信じて助けてくれたステイシー先生やみんなに、心からお礼を言いました。
帰りはイワンが送ってくれました。
ラウレール家の馬車に揺られて家路をいきます。
座席に深く腰掛けて、イワンは私のおでこを小突く。
「つくづく厄介事に巻き込まれるたちだな、お前は」
「逃げようにもあっちからふっかけてくるので……」
ミーナ様に教わっていても、回避できない未来というのもあるのです。
何はともあれ、ニセ証言を覆せて良かったです。
イワンの肩によりかかると、そっと抱きとめてくれました。
居場所を守るためにも、頑張らなきゃです。