一年生春編 運命に翻弄される春
翌朝。約束どおりミーナ様が迎えに来てくださいました。
「おはよう、セリスさん。昨日はよく眠れたかしら」
「いえ、ぜんぜん……」
「そうみたいね。目の下のクマが濃いわ」
今日からどんな生活が待っているのかと思ったら、恐怖しかなかったです。
「そんなあなたのために、思い出せる限りのイベントを書いてきたの。これで最悪のバッドエンドは避けられると思う」
「本当ですか!? ありがとうございます。ミーナ様は現人神なのでしょうか」
ミーナ様から渡された厚手の日記帳には、文字がびっしり書き込まれています。
その内容に鳥肌がたちました。
え、これ、私の未来に起こりえること、ですか。
★セシリオバッドエンドルート①
一年生春の二日目放課後、二階の二年生教室前通路で発生
セシリオから生徒会役員になるよう勧誘される
→三回誘われて、三回とも入らないを選ぶ
セシリオのバッドエンドフラグが立つ
以降セシリオの意に反することを言うたび病み数値増加。
病みパラメータMAXで生徒会役員全員を巻き添えにして心中
……王子様すごく危ない人じゃないですかぁぁあ!!
ページをめくる手が震えます。
「あの、わ、私、きのう、王子様に馬車で送ると言われたのを断ったんですが、それは……」
知らないうちに心中ルートに一歩踏み出していたんでしょうか。
「それは大丈夫よセリスさん。昨日馬車に乗っていたら、セシリオにハジメテを奪われていたはず」
せーふ! せーふです!! 徒歩下校バンザイ!
一時の慰みにされるなんて断固拒否です!
「念の為、セリスさん以外の人間に読めないよう魔法をかけてあるから、誰かに盗み見られる心配はないと思う」
「助かります……」
お話しているうちに学院に着きました。
一年生と三年生では教室の棟が違うので、ミーナ様とは校門でいったんお別れです。
魔法学の授業はとても興味深かったです。
まずは初歩の魔法を身につけるのが一年生で学ぶことのようです。耳に入ってくるのは初めて聞く単語ばかりです。
魔法の正しい使い方を覚えることは、人を守り自分を守ることに繋がるということ。先生は口を酸っぱくして仰います。
お隣の席のクララさんがとても親切で、補足説明してくれました。先生の娘さんなんだそうです。教えるのがうまいのは先生譲りなんですね。
昼休憩はミーナ様が一緒に過ごしてくださったので、セシリオ様やローレンツ様とは会うことなく終わりました。
そして夕刻。
放課となったばかりの私のクラスに、一人の生徒が入ってきました。胸につけたバッジで、二年生ということがわかります。
藍色の長髪を項で結んだ、舞台女性のように優美な顔立ちをした殿方です。
「君が庶民の学校から編入してきたアラセリスさんですね。ぼくはイワン。この学院の生徒会書記をしています」
「は、はじめましてイワン様」
入学二日目にして、恋愛対象最後の一人に会ってしまいました。
王子様と魔法士団長様のご子息もそうですが、宰相様のご子息なんて、庶民が普通の生活をしていて会える相手じゃないです。しかも向こうから私を訪ねてくるなんて。
私は彼らと出会う運命にある。
ミーナ様の言葉がいっそう真実味を増します。
「あの、私になにかご用でしょうか」
イワン様はとても綺麗に微笑んで口を開きます。
「単刀直入に言いましょう。生徒会会計になってください。君以外に適任がいないんです」
「おはよう、セリスさん。昨日はよく眠れたかしら」
「いえ、ぜんぜん……」
「そうみたいね。目の下のクマが濃いわ」
今日からどんな生活が待っているのかと思ったら、恐怖しかなかったです。
「そんなあなたのために、思い出せる限りのイベントを書いてきたの。これで最悪のバッドエンドは避けられると思う」
「本当ですか!? ありがとうございます。ミーナ様は現人神なのでしょうか」
ミーナ様から渡された厚手の日記帳には、文字がびっしり書き込まれています。
その内容に鳥肌がたちました。
え、これ、私の未来に起こりえること、ですか。
★セシリオバッドエンドルート①
一年生春の二日目放課後、二階の二年生教室前通路で発生
セシリオから生徒会役員になるよう勧誘される
→三回誘われて、三回とも入らないを選ぶ
セシリオのバッドエンドフラグが立つ
以降セシリオの意に反することを言うたび病み数値増加。
病みパラメータMAXで生徒会役員全員を巻き添えにして心中
……王子様すごく危ない人じゃないですかぁぁあ!!
ページをめくる手が震えます。
「あの、わ、私、きのう、王子様に馬車で送ると言われたのを断ったんですが、それは……」
知らないうちに心中ルートに一歩踏み出していたんでしょうか。
「それは大丈夫よセリスさん。昨日馬車に乗っていたら、セシリオにハジメテを奪われていたはず」
せーふ! せーふです!! 徒歩下校バンザイ!
一時の慰みにされるなんて断固拒否です!
「念の為、セリスさん以外の人間に読めないよう魔法をかけてあるから、誰かに盗み見られる心配はないと思う」
「助かります……」
お話しているうちに学院に着きました。
一年生と三年生では教室の棟が違うので、ミーナ様とは校門でいったんお別れです。
魔法学の授業はとても興味深かったです。
まずは初歩の魔法を身につけるのが一年生で学ぶことのようです。耳に入ってくるのは初めて聞く単語ばかりです。
魔法の正しい使い方を覚えることは、人を守り自分を守ることに繋がるということ。先生は口を酸っぱくして仰います。
お隣の席のクララさんがとても親切で、補足説明してくれました。先生の娘さんなんだそうです。教えるのがうまいのは先生譲りなんですね。
昼休憩はミーナ様が一緒に過ごしてくださったので、セシリオ様やローレンツ様とは会うことなく終わりました。
そして夕刻。
放課となったばかりの私のクラスに、一人の生徒が入ってきました。胸につけたバッジで、二年生ということがわかります。
藍色の長髪を項で結んだ、舞台女性のように優美な顔立ちをした殿方です。
「君が庶民の学校から編入してきたアラセリスさんですね。ぼくはイワン。この学院の生徒会書記をしています」
「は、はじめましてイワン様」
入学二日目にして、恋愛対象最後の一人に会ってしまいました。
王子様と魔法士団長様のご子息もそうですが、宰相様のご子息なんて、庶民が普通の生活をしていて会える相手じゃないです。しかも向こうから私を訪ねてくるなんて。
私は彼らと出会う運命にある。
ミーナ様の言葉がいっそう真実味を増します。
「あの、私になにかご用でしょうか」
イワン様はとても綺麗に微笑んで口を開きます。
「単刀直入に言いましょう。生徒会会計になってください。君以外に適任がいないんです」