一年生春編 運命に翻弄される春
『ピィ〜、ピィ』
私の使い魔であるペンギンさんは、なんだか楽しそうにくるりくるりと歩き回っています。
召喚成功、したのはいいのですが……。
「く、しゅん!」
春とはいえ、まだ肌寒いくらいの気温。そんな中頭から水をかぶってしまったのでとても寒いです。
「セリス、とりあえずこれ羽織っとけ!」
「ありがと、う」
ローレンツくんが、着ていたジャケットを脱いではおらせてくれました。
「でも、ローレンツくんのジャケットが濡れちゃうんじゃ」
「いや、着ててもらわないと俺が困る」
滴るくらい濡れているので、ローレンツくんのジャケットにもどんどん水がしみています。申し訳なさすぎます。お洗濯して返さないと。
ステイシー先生が大きな布袋を私に渡してくれます。
「アラセリスさん、そのままでは風邪を引いてしまうわ。これに着替えなさい」
「申し訳ありません」
「気にしなくていいわ。毎年この授業では、火トカゲ を呼んで服を焦がしちゃう子や、あなたみたいに水生の使い魔でずぶ濡れになっちゃう子がいるのよ。だから落ち込まないでね」
準備がいいなと思ったら、恒例行事みたいなものなんですね。とんでもないミスを犯したのではないとわかって安心しました。
「それではお借りします」
中庭の隅にある倉庫を使うよう言われて走ります。ちょこちょことペンギンさんもついてきました。
木箱に着替えを乗せて、ローレンツくんがかけてくれたジャケットを脱ぐ。
「あ……」
濡れた服がぴったりくっついて、下着が透けています。絶対ジャケット着てろってこういうことですか!!
恥ずかしくて転がりたくなりました。
すぐにフォローしてくれてありがとうローレンツくん。
『チチチー』
小鳥ちゃんは、ペンギンさんの頭の上に移動しました。使い魔になってくれたなら名前があったほうがいいのかな。
うん、ペンちゃんにしましょう。
「ごめん。私の肩に乗ってたから、あなたも濡れちゃったよね。寒くない?」
袋の中に乾いたタオルもあったから、小鳥ちゃんを拭います。僅かに残った水滴は、小鳥ちゃんがぷるぷる体を震わせて水気を吹き飛ばしました。
飛沫を浴びたペンちゃんも、真似してふるふるしています。
服とブーツだけでなくブラもショーツも濡れてるので、いったん脱ぎます。さすがに私にピッタリサイズの下着のかえなんてあるはずないので、可能な限りタオルで水気をとって再び身につけます。
用意されていたロングワンピースに袖を通して、サンダルをはいて授業に戻りました。
「すみません、先生。今戻りました」
「アラセリスさん。問題なさそうね」
「はい」
「そちらの服はリネン担当にまわしておくから、乾いたら貴女のもとに届けさせるわね」
「ありがとうございます」
ローレンツくんの足元には茶色のポメラニアンがいました。この子が使い魔ですか。シッポをブンブン振って元気いっぱいです。
「おう、大丈夫かセリス」
「ありがとう、ローレンツくん。おかげで恥をかかずにすんだよ……」
「あー、うん」
ローレンツくんの視線が私から微妙にそらされています。ジャケットをかける前に見えちゃいましたよね、すみません本当に。
「洗濯して返そうと思うんだけど」
「律儀だなー。ちょっと湿ったくらい、放っときゃ乾くから気にすんな」
いいんでしょうか。良質な素材のジャケットなのに、そんな大雑把な感じで。
ローレンツくんは私の手からジャケットを受け取ると、小脇に抱えます。
「良かったな、セリス。お前も俺も、ちゃんと使い魔を召喚できて。こうやって努力を積み重ねてさ、おまけ要素だけで俺たちを判断した奴らがびっくりするような、すごい魔法士になろうぜ」
「はい!」
私も、治癒魔法がなくてもすごいと言ってもらえるような魔法士になろう。ローレンツくんの言葉は、道を照らすお日様のように思えました。
きっとローレンツくんもお父さんに負けないくらい、すごい魔法士になれますね。
私の使い魔であるペンギンさんは、なんだか楽しそうにくるりくるりと歩き回っています。
召喚成功、したのはいいのですが……。
「く、しゅん!」
春とはいえ、まだ肌寒いくらいの気温。そんな中頭から水をかぶってしまったのでとても寒いです。
「セリス、とりあえずこれ羽織っとけ!」
「ありがと、う」
ローレンツくんが、着ていたジャケットを脱いではおらせてくれました。
「でも、ローレンツくんのジャケットが濡れちゃうんじゃ」
「いや、着ててもらわないと俺が困る」
滴るくらい濡れているので、ローレンツくんのジャケットにもどんどん水がしみています。申し訳なさすぎます。お洗濯して返さないと。
ステイシー先生が大きな布袋を私に渡してくれます。
「アラセリスさん、そのままでは風邪を引いてしまうわ。これに着替えなさい」
「申し訳ありません」
「気にしなくていいわ。毎年この授業では、
準備がいいなと思ったら、恒例行事みたいなものなんですね。とんでもないミスを犯したのではないとわかって安心しました。
「それではお借りします」
中庭の隅にある倉庫を使うよう言われて走ります。ちょこちょことペンギンさんもついてきました。
木箱に着替えを乗せて、ローレンツくんがかけてくれたジャケットを脱ぐ。
「あ……」
濡れた服がぴったりくっついて、下着が透けています。絶対ジャケット着てろってこういうことですか!!
恥ずかしくて転がりたくなりました。
すぐにフォローしてくれてありがとうローレンツくん。
『チチチー』
小鳥ちゃんは、ペンギンさんの頭の上に移動しました。使い魔になってくれたなら名前があったほうがいいのかな。
うん、ペンちゃんにしましょう。
「ごめん。私の肩に乗ってたから、あなたも濡れちゃったよね。寒くない?」
袋の中に乾いたタオルもあったから、小鳥ちゃんを拭います。僅かに残った水滴は、小鳥ちゃんがぷるぷる体を震わせて水気を吹き飛ばしました。
飛沫を浴びたペンちゃんも、真似してふるふるしています。
服とブーツだけでなくブラもショーツも濡れてるので、いったん脱ぎます。さすがに私にピッタリサイズの下着のかえなんてあるはずないので、可能な限りタオルで水気をとって再び身につけます。
用意されていたロングワンピースに袖を通して、サンダルをはいて授業に戻りました。
「すみません、先生。今戻りました」
「アラセリスさん。問題なさそうね」
「はい」
「そちらの服はリネン担当にまわしておくから、乾いたら貴女のもとに届けさせるわね」
「ありがとうございます」
ローレンツくんの足元には茶色のポメラニアンがいました。この子が使い魔ですか。シッポをブンブン振って元気いっぱいです。
「おう、大丈夫かセリス」
「ありがとう、ローレンツくん。おかげで恥をかかずにすんだよ……」
「あー、うん」
ローレンツくんの視線が私から微妙にそらされています。ジャケットをかける前に見えちゃいましたよね、すみません本当に。
「洗濯して返そうと思うんだけど」
「律儀だなー。ちょっと湿ったくらい、放っときゃ乾くから気にすんな」
いいんでしょうか。良質な素材のジャケットなのに、そんな大雑把な感じで。
ローレンツくんは私の手からジャケットを受け取ると、小脇に抱えます。
「良かったな、セリス。お前も俺も、ちゃんと使い魔を召喚できて。こうやって努力を積み重ねてさ、おまけ要素だけで俺たちを判断した奴らがびっくりするような、すごい魔法士になろうぜ」
「はい!」
私も、治癒魔法がなくてもすごいと言ってもらえるような魔法士になろう。ローレンツくんの言葉は、道を照らすお日様のように思えました。
きっとローレンツくんもお父さんに負けないくらい、すごい魔法士になれますね。