一年生春編 運命に翻弄される春
その後本当に、小鳥さんは絶大な効果を発揮しました。
教室に向かう途中、見知らぬ先輩が話しかけてきたのですが、
「フッ。きみはアラセリスさんだよね。ぼくは三年のブルーノと……そ、その鳥は!? ひ、ひいいいいっ!!」
小鳥さんを見た途端、Uターンして走り去ったのです。
ええと……こう言ってはなんですが。生徒会役員うんぬんを抜きにして、イワン様、恐れられてませんか。
無事教室についたところでローレンツくんに会いました。
「はよ、セリス。もう良くなったんだな……って、うげ! なんてもん連れてんだよ」
「これには深い事情がありまして」
『治癒魔法の使い手なら嫁にしてやる』と先輩がたが寄ってきて困っていたところ、セシリオ様たちに助けてもらったという経緯を説明しました。
「イワン様の使い魔が蛇じゃなかったことに驚いていたところなの」
「あ、あのな……………セリス。悪いことは言わないから、ソイツの前で迂闊なことを言わないほうがいい。それに蛇はセシリオの使い魔。会長が猫だよ」
ローレンツくん、なんで真っ青な顔をしているんでしょう。
あ、私さっき蛇は狡賢そうと言ってしまいましたね。セシリオ様に謝らないといけませんね。
「使い魔は主人の性質に近いものが現れる説って、間違っているのでは」
「おとなしそうに見えて神経図太いな、お前」
話しているとクララさんも教室に入ってきました。
「おはよう、アラセリスさん、もう大丈夫なの?」
「クララさん。ありがとう、心配かけてごめんなさい。もう平気です」
グッと拳を固めて元気アピールします。
「アラセリスさん、病み上がりなんだから無理しないでね。母さんが、今日は使い魔の召喚練習をするって言ってたのだけど……その肩にいる子は?」
「この可愛い子はイワン様の使い魔です」
ローレンツくんに話したのと同じことを説明したら、察してくれました。
「朝から大変だったのね。わたしも、「先生の娘と仲良くなれば成績アップお願いできるかもー」、なんて言ってる先輩に声をかけられてたから、わかるわ。困るよね……」
「そうなの。とっても困るの。クララさんも大変だったのね」
恋愛感情で言い寄られてるのでなく、治癒魔法……付加価値の方が欲しくて寄ってくるのが悲しいです。
「わたしに婚約者でもいればもう来なくなると思うんだけど、そのためだけに婚約するのは違うと思うし」
完全同意です。クララさんの気持ち、良くわかります。
ローレンツくんも魔法士団長の息子だから身に覚えがあるようで、激しく首を縦に振っていました。
授業の時間になり、みんなで中庭に移動しました。
「それでは、今日は使い魔召喚の練習です。使い魔とは、先日説明したとおり、主人の命に従って動いてくれる、もう一つの手足であり目と耳のような存在。欠かせないパートナーとなってくれるので大切にするのですよ」
先生の言葉に頷いて、召喚魔法の練習をします。
「『我の力を分けしモノ、招致に応じよ』と唱え、魔力を使います。では、一人ずつ順に試していってもらいます。失敗を恐れず挑戦してくださいね」
クララさんが最初に真ん中に立ち、詠唱します。
「我の力を分けしモノ、招致に応じよ!」
魔法陣を中心に光が湧き上がり、中から鷹が姿を現しました。クラスのみんなは拍手喝采。
他の子も次々に猫やワシを召喚していきます。
そしていよいよ私の番。
集中して、指先に魔力を集めて詠唱します。
「わ、『我の力を分けしモノ、招致に応じよ』」
みんなと同じように光が走った……と思ったら。
「きゃーーーー!!」
私の頭上から風呂桶をひっくり返したような大水が降りそそぐ。
立て続けに、ふわふわで灰色の赤ちゃんペンギンが落ちてきました。
教室に向かう途中、見知らぬ先輩が話しかけてきたのですが、
「フッ。きみはアラセリスさんだよね。ぼくは三年のブルーノと……そ、その鳥は!? ひ、ひいいいいっ!!」
小鳥さんを見た途端、Uターンして走り去ったのです。
ええと……こう言ってはなんですが。生徒会役員うんぬんを抜きにして、イワン様、恐れられてませんか。
無事教室についたところでローレンツくんに会いました。
「はよ、セリス。もう良くなったんだな……って、うげ! なんてもん連れてんだよ」
「これには深い事情がありまして」
『治癒魔法の使い手なら嫁にしてやる』と先輩がたが寄ってきて困っていたところ、セシリオ様たちに助けてもらったという経緯を説明しました。
「イワン様の使い魔が蛇じゃなかったことに驚いていたところなの」
「あ、あのな……………セリス。悪いことは言わないから、ソイツの前で迂闊なことを言わないほうがいい。それに蛇はセシリオの使い魔。会長が猫だよ」
ローレンツくん、なんで真っ青な顔をしているんでしょう。
あ、私さっき蛇は狡賢そうと言ってしまいましたね。セシリオ様に謝らないといけませんね。
「使い魔は主人の性質に近いものが現れる説って、間違っているのでは」
「おとなしそうに見えて神経図太いな、お前」
話しているとクララさんも教室に入ってきました。
「おはよう、アラセリスさん、もう大丈夫なの?」
「クララさん。ありがとう、心配かけてごめんなさい。もう平気です」
グッと拳を固めて元気アピールします。
「アラセリスさん、病み上がりなんだから無理しないでね。母さんが、今日は使い魔の召喚練習をするって言ってたのだけど……その肩にいる子は?」
「この可愛い子はイワン様の使い魔です」
ローレンツくんに話したのと同じことを説明したら、察してくれました。
「朝から大変だったのね。わたしも、「先生の娘と仲良くなれば成績アップお願いできるかもー」、なんて言ってる先輩に声をかけられてたから、わかるわ。困るよね……」
「そうなの。とっても困るの。クララさんも大変だったのね」
恋愛感情で言い寄られてるのでなく、治癒魔法……付加価値の方が欲しくて寄ってくるのが悲しいです。
「わたしに婚約者でもいればもう来なくなると思うんだけど、そのためだけに婚約するのは違うと思うし」
完全同意です。クララさんの気持ち、良くわかります。
ローレンツくんも魔法士団長の息子だから身に覚えがあるようで、激しく首を縦に振っていました。
授業の時間になり、みんなで中庭に移動しました。
「それでは、今日は使い魔召喚の練習です。使い魔とは、先日説明したとおり、主人の命に従って動いてくれる、もう一つの手足であり目と耳のような存在。欠かせないパートナーとなってくれるので大切にするのですよ」
先生の言葉に頷いて、召喚魔法の練習をします。
「『我の力を分けしモノ、招致に応じよ』と唱え、魔力を使います。では、一人ずつ順に試していってもらいます。失敗を恐れず挑戦してくださいね」
クララさんが最初に真ん中に立ち、詠唱します。
「我の力を分けしモノ、招致に応じよ!」
魔法陣を中心に光が湧き上がり、中から鷹が姿を現しました。クラスのみんなは拍手喝采。
他の子も次々に猫やワシを召喚していきます。
そしていよいよ私の番。
集中して、指先に魔力を集めて詠唱します。
「わ、『我の力を分けしモノ、招致に応じよ』」
みんなと同じように光が走った……と思ったら。
「きゃーーーー!!」
私の頭上から風呂桶をひっくり返したような大水が降りそそぐ。
立て続けに、ふわふわで灰色の赤ちゃんペンギンが落ちてきました。