一年生冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩(終章)
セシリオ様とミーナ様、ローレンツくんも学生寮に臨時で泊まってくれることになりました。
就寝時間ぎりぎりまでみんなで寮内の談話室に集まります。
ここなら男女共用なのです。
暖炉には薪が燃えていて、部屋の中はとても暖かいのに、体が震えています。
私の震える手を包み込んで、イワンが言います。
「これだけの人数が揃ってるんだ。大丈夫だ、アラセリス。いざとなったらオレも全力で戦う」
全力で、それはつまり夢魔の姿になって戦うということに他なりません。
イワンが最大限力を発揮できるのは、本来の姿になったとき。
もしかして先生の狙いはそこにもあるのでしょうか。
交換留学があったとはいえ、魔族を忌避する人がゼロになったわけではありません。
魔族としてのイワンを前にして、生徒たちがどう思うのか未知数です。
「イワン。でもそうなると、イワンは……」
「オレが他人に何か言われることなんてどうでもいい。アラセリスの命を守ることより大事なことなんてない」
ここまで言ってもらえるなんて、私は幸せです。
「私も、自分にできることをして守ります。自分の命も、イワンの命も」
私が学院内に留まる程度で、襲撃計画を練っていた人たちが諦めるはずありませんでした。
『ピイイイッ!』
換気窓からしーちゃんが飛び込んできました。
「襲撃だ。みんな、警戒を」
イワンに言われみんなが頷きます。
誰かに手引きされたのでしょうか。
カーテンの隙間から覗き見ると、外に顔を隠した黒ずくめの集団がいました。
警備員と先生がたが、侵入者と対峙します。
「アラセリスを出せ。悪魔のつがいの娘を!」
「未来ある大切な学生をあなた達のような不審な人間に差し出すわけないでしょう! 立ち去りなさい!」
「うるせえ! 出さねぇならこの寮にいる全員ぶち殺してあぶり出してやる!」
侵入者たちは剣を振りかざし先生に襲いかかります。
ステイシー先生が肩を押さえて倒れるのが見えて、いてもたってもいられなくなります。
「アラセリス、だめだ」
イワンが私の腕を掴みます。
「イワン。あの方たちは無関係の先生にもためらわず手を出しているんです。このままだと本当に手当たりしだい、寮生にも手を出すかもしれません」
「新任でも副生徒会長だね。生徒のために、か。なら前任としてわたしも生徒を守るためがんばろうか。わたしでも、魔法士団が駆けつけるまでのつなぎくらいにはなる」
「俺もやるぜ! あんな奴ら追い返してやる!」
セシリオ様とローレンツくんが、先生に加勢するため談話室から飛び出していきました。
「ギジェルミーナ、クララ。アラセリスのこと頼んだぞ」
「イワン」
イワンも戦うため出ていってしまいました。
今ここでイワンを追わないと、二度と会えなくなる……そんな予感がしました。
怖いけど、行かないと。この先もずっと一緒にいるために。
震える足を叩いて、私も走ります。
「アラセリスさん!?」
「セリスさん、だめよ、危ないわ!」
警備の方や先生が応戦していますが、相手が多くて苦戦を強いられています。
セシリオ様とローレンツくんは使い魔を喚んで撹乱しています。
そしてイワンは、空からの魔法攻撃を仕掛けています。
「ここに魔族がいるのは本当だったのか!」
「なんて不気味な。降りてこい化物め、卑怯だぞ!」
私は侵入者に見つからないよう木陰に身を隠し、早口で唱えます。
「我の力を分けしモノ、隔てる空間を超え我のもとに。天の神、水の神に願う、この地に降りそそぐ雨となれ、恵みとなれ、招致に応えよ!!」
ペンちゃんは北海にいます。
つまり、流氷混じりの海水を喚べるのです。
攻撃力はありませんが、真冬の屋外で冷水を浴びて、平気でいられるはずありません。
「みんな下がって!」
侵入者たちの上に氷の塊と雨が降り注ぐ。
「ひっ、つ、冷た! 痛い! 寒っ」
「ペッペっ! なんだこれ、海水!?」
すかさずイワンが手をかざして無数の雷を放つ。
「ぐギャああああーーーー!!」
海水は雷をよく通すんです。
イワンの最大火力の魔法を海水で湿った状態で受けた侵入者は全員倒れました。
「とりあえず縛っておこうか。みんな手伝ってくれ。それと……君たち、わたしの使い魔は毒蛇だから。下手な真似をすると咬ませるよ? 血清はないから気をつけたほうがいい」
セシリオ様が魔法で紐を召喚して侵入者を拘束します。
侵入者一同、首を激しく上下に振って、大人しくなりました。
就寝時間ぎりぎりまでみんなで寮内の談話室に集まります。
ここなら男女共用なのです。
暖炉には薪が燃えていて、部屋の中はとても暖かいのに、体が震えています。
私の震える手を包み込んで、イワンが言います。
「これだけの人数が揃ってるんだ。大丈夫だ、アラセリス。いざとなったらオレも全力で戦う」
全力で、それはつまり夢魔の姿になって戦うということに他なりません。
イワンが最大限力を発揮できるのは、本来の姿になったとき。
もしかして先生の狙いはそこにもあるのでしょうか。
交換留学があったとはいえ、魔族を忌避する人がゼロになったわけではありません。
魔族としてのイワンを前にして、生徒たちがどう思うのか未知数です。
「イワン。でもそうなると、イワンは……」
「オレが他人に何か言われることなんてどうでもいい。アラセリスの命を守ることより大事なことなんてない」
ここまで言ってもらえるなんて、私は幸せです。
「私も、自分にできることをして守ります。自分の命も、イワンの命も」
私が学院内に留まる程度で、襲撃計画を練っていた人たちが諦めるはずありませんでした。
『ピイイイッ!』
換気窓からしーちゃんが飛び込んできました。
「襲撃だ。みんな、警戒を」
イワンに言われみんなが頷きます。
誰かに手引きされたのでしょうか。
カーテンの隙間から覗き見ると、外に顔を隠した黒ずくめの集団がいました。
警備員と先生がたが、侵入者と対峙します。
「アラセリスを出せ。悪魔のつがいの娘を!」
「未来ある大切な学生をあなた達のような不審な人間に差し出すわけないでしょう! 立ち去りなさい!」
「うるせえ! 出さねぇならこの寮にいる全員ぶち殺してあぶり出してやる!」
侵入者たちは剣を振りかざし先生に襲いかかります。
ステイシー先生が肩を押さえて倒れるのが見えて、いてもたってもいられなくなります。
「アラセリス、だめだ」
イワンが私の腕を掴みます。
「イワン。あの方たちは無関係の先生にもためらわず手を出しているんです。このままだと本当に手当たりしだい、寮生にも手を出すかもしれません」
「新任でも副生徒会長だね。生徒のために、か。なら前任としてわたしも生徒を守るためがんばろうか。わたしでも、魔法士団が駆けつけるまでのつなぎくらいにはなる」
「俺もやるぜ! あんな奴ら追い返してやる!」
セシリオ様とローレンツくんが、先生に加勢するため談話室から飛び出していきました。
「ギジェルミーナ、クララ。アラセリスのこと頼んだぞ」
「イワン」
イワンも戦うため出ていってしまいました。
今ここでイワンを追わないと、二度と会えなくなる……そんな予感がしました。
怖いけど、行かないと。この先もずっと一緒にいるために。
震える足を叩いて、私も走ります。
「アラセリスさん!?」
「セリスさん、だめよ、危ないわ!」
警備の方や先生が応戦していますが、相手が多くて苦戦を強いられています。
セシリオ様とローレンツくんは使い魔を喚んで撹乱しています。
そしてイワンは、空からの魔法攻撃を仕掛けています。
「ここに魔族がいるのは本当だったのか!」
「なんて不気味な。降りてこい化物め、卑怯だぞ!」
私は侵入者に見つからないよう木陰に身を隠し、早口で唱えます。
「我の力を分けしモノ、隔てる空間を超え我のもとに。天の神、水の神に願う、この地に降りそそぐ雨となれ、恵みとなれ、招致に応えよ!!」
ペンちゃんは北海にいます。
つまり、流氷混じりの海水を喚べるのです。
攻撃力はありませんが、真冬の屋外で冷水を浴びて、平気でいられるはずありません。
「みんな下がって!」
侵入者たちの上に氷の塊と雨が降り注ぐ。
「ひっ、つ、冷た! 痛い! 寒っ」
「ペッペっ! なんだこれ、海水!?」
すかさずイワンが手をかざして無数の雷を放つ。
「ぐギャああああーーーー!!」
海水は雷をよく通すんです。
イワンの最大火力の魔法を海水で湿った状態で受けた侵入者は全員倒れました。
「とりあえず縛っておこうか。みんな手伝ってくれ。それと……君たち、わたしの使い魔は毒蛇だから。下手な真似をすると咬ませるよ? 血清はないから気をつけたほうがいい」
セシリオ様が魔法で紐を召喚して侵入者を拘束します。
侵入者一同、首を激しく上下に振って、大人しくなりました。