一年生冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩(終章)

 冬休みが終わり学院がはじまりました。
 二月に三回目のテストと、三月に卒業生の送別会。
 ここからミーナ様とセシリオ様は生徒会業務から引退。

 私とイワン、ローレンツくんとクララさんで仕事をすることになります。
 正式に役員引き継ぎの手続きが行われたあとは、食堂舎の片隅を借りてささやかな慰労会を開きました。

「ミーナ様、セシリオ様。これまでお疲れさまでした。たくさんのことを教えていただいてありがとうございます!」
「ありがとう。ここまでやってこれたのもあなた達のおかげよ」
「わたしも、みんなには心から感謝しているよ」

 本来ならこういうとき果実酒でお祝いなのでしょうが、ここは学院なので、カンパイは紅茶です。

「セリスさん、副会長の仕事も大変だけど、あなたならきっとやり遂げられるわ」
「はい! がんばります!」
「イワンも、次代生徒会長としてがんばるんだよ」
「言われずとも」

 ミーナ様とセシリオ様の引退ということは、私とイワンの就任でもあります。
 イワンは生徒会長に、私は副会長に。そしてローレンツくんが書記でクララさんが会計。
 元庶民の私が副会長になること、生徒の皆さんから非難されるかと不安もありました。

「学年首席のアラセリスで不満なら、他の誰ならいいんだって話だ」

 なんて笑って、イワンは私の不安を吹き飛ばしました。

 
「これはあたしらからのお祝いだよ。受け取っておくれ」

 調理のおばちゃんたちが、慰労会のことを知って特別メニューを用意してくれました。六人がけのテーブルに並べきれないくらいの料理、すごいです。

「うおー! うまそー! いっただきまー」
「ローレンツ、会長とセシリオをねぎらうためのものだろう。真っ先に手を付けるな阿呆」

 イワンの容赦ない一撃が、ローレンツくんの側頭部にキマりました。

「うるへーイワン! 優等生ぶりやがって。何様だ」
「生徒会長様だが、なにか?」

 笑顔の圧に負けて、ローレンツくんはトングを持つ手をそろそろとおろしました。

「これだけあるんだから、いくらローレンツでも別にすぐ食べつくしたりはしないでしょう」
「まあまあ、会長。さきにわたしたちがなにか食べればいいんだろう」
「あら、わたくしはもう会長ではないのだけど」
「すまないね。会長と呼ぶことに慣れてしまったからつい」

 セシリオ様とミーナ様はそれぞれ好きなものを取って食べはじめます。
 それを見てからローレンツくんが取り皿に料理を次々取っていく。ルシール王城の塔でしょうか。料理が乗りすぎて皿が重そうです。どこにあの量の食べ物が入るんでしょう。

「ローレンツさん、ゆっくり食べないと胃に悪いわ」
「大丈夫大丈夫」

 クララさんにも心配されつつもりもり食べています。

「お前も今ここで食べすぎると夕食が入らなくなるぞ」
「あ、そうですね。マリオさんが今夜はミートパイにするって言ってました」

 マリオさんのミートパイは絶品なんです。ここで食べすぎで入らないなんてことにならないよう気をつけないとです。

 でもせっかく食堂の方が作ってくださったので、ちょっとでいいからこちらも食べておきたいです。
 スコーンに冬いちごのジャムを挟んで、紅茶のオトモに。
 うん、美味しいです。スコーンの生地にも茶葉が練りこまれていますね。学院の食堂は細かいところにも手が込んでいて感動です。

 生徒会室でミーナ様とセシリオ様に会うことはもうできないけれど、みんなで笑いあって、慰労会はすぎていきました。


 引き継ぎ後の新生生徒会長メンバー初の業務は、卒業生の送別パーティー。
 気合いを入れてがんばりましょう!



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