一年生冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩(終章)

「ふんふんふ〜ん」
『ぴぃぴぃぴぃ〜!』

 旅行二日目。宿の庭に雪が積もっていたので、早起きして雪だるまを作っています。

 ペンちゃんを呼んだら大喜びしてます。
 北海出身だから、雪の中にいるのも大好きみたいです。

「ほーら、できましたよペンちゃん! ペンちゃんの形の雪だるま! 王都じゃここまで積もらないですからね。今のうちにたくさん遊びましょう」
『ぴ〜!』

 ペンちゃんはぴょんぴょん跳ねて、雪だるまのまわりをまわっています。 

「……朝っぱらから何やってんだおまえ」

 イワンが目をこすりながら起きてきました。

「見ての通り雪だるまを作ったんです。しーちゃんのも作りますね」
「好きにすればいいが、そろそろ朝食の時間だぞ」
「ごはん! ちょうどお腹が空いてきたところだったんです」

 朝は冬野菜たっぷりのスープ、トースト。ヤマブタのベーコンをカリカリに焼いたもの。朝採れ果実を絞ったジュース。
 ほっぺたが落ちるくらい美味しいです。
 おかわりしそうになりましたが、淑女がそんなことしちゃいけませんね。

 朝食をいただいたあと、町に出ました。
 イワンは私の手を引いて、ひときわ大きな建物を指します。

「あそこにあるのが木工細工の工房だ。うちと取引している職人がいる」
「木工細工」
「木製の調度品や、木彫りの人形、小箱のようなものだ。山がすぐそこだから、このあたりの主産業になっている」
「見てみたいです!」

 歩いていると、あちこちから小鳥の鳴き声が聞こえてきます。
 工房のそばの木々に、しーちゃんそっくりな白い小鳥が数羽。

「イワン! しーちゃんがいっぱい! しーちゃんは分身できたんですか」
「しーちゃんって言うな。こいつらはこのあたりにしかいない鳥なんだよ」

 イワンに喚ばれてしーちゃん(本家)が出てきました。

『チュピー』
「せっかくだから仲間と遊んでくるといいい」
『ピィ!』

 遊んでこいと言われても、しーちゃんはイワンの肩の上から動きません。
 これはいけませんね。可愛すぎてけしからんです。

 工房でミノを手に細工物を作っていたのは堅物そうなおじいさんでした。

「これは若」
「旅行がてら妻を連れてきた。アラセリス。彼は木工職人のガテンだ」

 妻、と紹介されてなんか照れちゃいますね。

「アラセリスです。お仕事見せてください」
「……好きに見ていくといい」

 ぶっきらぼうだけど優しい方ですね、ガテンさん。
 触らないよう気をつけながら、工房内の棚に並ぶ作品を鑑賞します。

「あ、イワン。しーちゃんですよ!」

 手のひらに収まるサイズで、羽が一枚一枚丁寧に彫り込まれています。
 木彫りしーちゃん可愛すぎます。

「ガテンさん、この子、もう買えますか? 買ってもいいですか?」
「おお、奥様は目が高い。そいつの良さがわかるたぁ!」

 ガテンさんが歯を見せて笑いました。
 木彫りしーちゃん、お買上げです。

「ほら、しーちゃん、お友だちですよ」
『ピピッ! チチチ!!』
「いたたた!」

 しーちゃんに見せたらおもいっきり手を突かれちゃいました。
 木彫りの子にご主人様を取られると思ったんでしょうか。
 ご主人様に似て独占欲が強いようです。




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