一年生冬編 花嫁修業と、優しい国を作るための一歩(終章)
ついに星夜祭用のドレスが届きました。
マダムがメイクと髪のセットまでしてくれたんですよ。
私室の姿見に映る女の子が自分だと認識できないくらい可愛いです。これは事件です。
ルビーさんが手放しで褒めてくれます。
「まぁ! アラセリス様、とてもお似合いです」
「えへへ。ありがとうございます」
紺色を基調としたドレスは、大人っぽくて優雅で上品です。
イワンの髪の色によく似た深い紺。
ドレスを着るならイワンの色がいいって言ったの覚えていてくれたんですね。
身支度が整ったところでイワンが様子を見に来てくれました。
姿見の前でくるくる三回まわってポーズ!
「見てくださいイワン! どうですか、どうですか」
「オレの見立てに間違いはなかったな」
ここで似合うと言わないのがイワンです。
喧嘩は安売りするのに、褒め言葉は安売りしないんです。だれよりもイワンに褒めてほしいのに。
「……似合いませんか」
「人がいる前で言いたくない」
マダムとルビーさんの方を気にしてます。二人は口を挟んじゃいけないと思って静かにしているようです。
イワンがそういうつもりなら私にも考えがあります。
「そうですか。じゃあ、お父様とディアナ先生とランヴァルドさんに見せてきますね。イワンに見せるのは時間の無駄でした」
「あ、おい待て」
イワンの声を聞こえないふりして、リビングに向かいます。今の時間ならディアナ先生とランヴァルドさんはリビングで読書しているでしょうから。
階段をおりてリビングの扉に手をかける前に捕まりました。
「待てと言っているだろう」
「なんですかイワン。私はこれからディアナ先生とランヴァルドさんに見てもらうから忙しいんです」
「それは急ぐ用事じゃない」
「何を言いますか。大忙しですよ。このあとお父様にも見ていただかないとなので予定がビッシリです」
イワンが苛立っているのが手に取るようにわかります。でも私も怒ってます。
「イワン。私は褒められて伸びる子なんです。褒め言葉のひとつももらえないとスネちゃいます。一週間くらいイワンと口をきかないですよ。キスもおあずけです!」
「わかったから、むくれるな」
ほっぺたを指でさされて、空気が抜けました。
微かに笑って、イワンは観念した様子で口を開きます。
「似合っている。星夜祭に連れて行きたくない」
「星夜祭に出るためのドレスなのに」
「他の男に見せたら減る」
「減りません」
「誰かに言い寄られたら癪だから、部屋に閉じ込めておきたいな」
おっと、さらりと監禁発言がきましたよ。
結婚してもヤンデレ束縛まっしぐらです。
「私だって、ライバルと戦ってますよ。他の子に言い寄られたら怒りますから!」
ミーナ様いわく、今は【エンディングとエピローグの間】という時間らしいです。
ミーナ様が知らない、ゲームのシナリオ外の時間。
ベルナデッタ様のようなライバルが新たに現れる可能性はゼロじゃありません。
だから私はいつだって臨戦態勢です。
私の背後、リビングの扉が向こうから開きました。
「イワン、アラセリスさん。新婚とはいえ、睦 み合う場所は選んだほうがいい。中まで丸聞こえだし、使用人が困っているだろう」
ランヴァルドさんが手のひらで示した先に、メイドさんがいました。
メイドさんの押すワゴンに乗っているお茶は湯気が立たなくなっています。
えーと、もしかして私たちがここで言い合いしていたから、リビングに入りたくても入れなかった……ってことでしょうか。
見られてたとわかって、恥ずかしさのあまり頭がばーん。
「逃げるが勝ちです!」
「逃がすか」
すぐ捕まって私の部屋まで荷物担ぎされました。お腹がイワンの肩で圧迫されて苦しいです。ここでお姫さまだっこじゃないのがイワンですよ。
パーティー当日まで、イワン以外の男性にドレス姿を見せるの禁止令を出されました。
素直に褒めないくせにそういう独占欲はしっかりあるんだから、困った旦那様です。
マダムがメイクと髪のセットまでしてくれたんですよ。
私室の姿見に映る女の子が自分だと認識できないくらい可愛いです。これは事件です。
ルビーさんが手放しで褒めてくれます。
「まぁ! アラセリス様、とてもお似合いです」
「えへへ。ありがとうございます」
紺色を基調としたドレスは、大人っぽくて優雅で上品です。
イワンの髪の色によく似た深い紺。
ドレスを着るならイワンの色がいいって言ったの覚えていてくれたんですね。
身支度が整ったところでイワンが様子を見に来てくれました。
姿見の前でくるくる三回まわってポーズ!
「見てくださいイワン! どうですか、どうですか」
「オレの見立てに間違いはなかったな」
ここで似合うと言わないのがイワンです。
喧嘩は安売りするのに、褒め言葉は安売りしないんです。だれよりもイワンに褒めてほしいのに。
「……似合いませんか」
「人がいる前で言いたくない」
マダムとルビーさんの方を気にしてます。二人は口を挟んじゃいけないと思って静かにしているようです。
イワンがそういうつもりなら私にも考えがあります。
「そうですか。じゃあ、お父様とディアナ先生とランヴァルドさんに見せてきますね。イワンに見せるのは時間の無駄でした」
「あ、おい待て」
イワンの声を聞こえないふりして、リビングに向かいます。今の時間ならディアナ先生とランヴァルドさんはリビングで読書しているでしょうから。
階段をおりてリビングの扉に手をかける前に捕まりました。
「待てと言っているだろう」
「なんですかイワン。私はこれからディアナ先生とランヴァルドさんに見てもらうから忙しいんです」
「それは急ぐ用事じゃない」
「何を言いますか。大忙しですよ。このあとお父様にも見ていただかないとなので予定がビッシリです」
イワンが苛立っているのが手に取るようにわかります。でも私も怒ってます。
「イワン。私は褒められて伸びる子なんです。褒め言葉のひとつももらえないとスネちゃいます。一週間くらいイワンと口をきかないですよ。キスもおあずけです!」
「わかったから、むくれるな」
ほっぺたを指でさされて、空気が抜けました。
微かに笑って、イワンは観念した様子で口を開きます。
「似合っている。星夜祭に連れて行きたくない」
「星夜祭に出るためのドレスなのに」
「他の男に見せたら減る」
「減りません」
「誰かに言い寄られたら癪だから、部屋に閉じ込めておきたいな」
おっと、さらりと監禁発言がきましたよ。
結婚してもヤンデレ束縛まっしぐらです。
「私だって、ライバルと戦ってますよ。他の子に言い寄られたら怒りますから!」
ミーナ様いわく、今は【エンディングとエピローグの間】という時間らしいです。
ミーナ様が知らない、ゲームのシナリオ外の時間。
ベルナデッタ様のようなライバルが新たに現れる可能性はゼロじゃありません。
だから私はいつだって臨戦態勢です。
私の背後、リビングの扉が向こうから開きました。
「イワン、アラセリスさん。新婚とはいえ、
ランヴァルドさんが手のひらで示した先に、メイドさんがいました。
メイドさんの押すワゴンに乗っているお茶は湯気が立たなくなっています。
えーと、もしかして私たちがここで言い合いしていたから、リビングに入りたくても入れなかった……ってことでしょうか。
見られてたとわかって、恥ずかしさのあまり頭がばーん。
「逃げるが勝ちです!」
「逃がすか」
すぐ捕まって私の部屋まで荷物担ぎされました。お腹がイワンの肩で圧迫されて苦しいです。ここでお姫さまだっこじゃないのがイワンですよ。
パーティー当日まで、イワン以外の男性にドレス姿を見せるの禁止令を出されました。
素直に褒めないくせにそういう独占欲はしっかりあるんだから、困った旦那様です。